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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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夏を楽しむ少女9

「一応、ありがとう(・・・・・)と入っておきますね。」

「お礼なんていらないわ。当たり前の事(・・・・・)をしただけだわ。」

「なら、最初から力を使っていて欲しかったですけどね!」


アリスの力によって共鳴は収まり、今では呼吸も整って通常の状態に戻りました。

危うく美徳(レイン)に飲み込まれるところでした。

アリスが居なければ即リタイアという醜態をお姉さまの前でさらしてしまう所でした。


「リーナ、もう大丈夫なのね?」

「はい。今は何ともありません。」

「もしも、苦しくなったらいつでも言ってくれていいのよ?我慢だけはしてはいけないわよ。」

「そうさせていただきます。お姉さまの足を引っ張る事はしたくありませんので。」


私が来たのがお姉さまに迷惑をかけるためではありません。

お姉さまの役に立つためです。


「話してないで行くわよ。美徳(レイン)の在り処はまだ先よ。」


空気を遮るようにアリスは言いました。

この先に美徳(自分の力)がある以上、すぐにでも取り戻したいのでしょう。


アリスについて行く島の中心部に近づくと、それまでに生えていた草木は無くなっていて土すらも黒く腐っていた。

これも美徳(レイン)によって力を吸収されたせいなのかひどく不気味な地帯へと変わっている。


そこからさらに中心部へと進むと大きなクレーターのようなものを見つけました。

しかし、その穴の深さがどれだけあるのか底を見ようとしても暗くて何も分かりません。


「この下よ。」

「この下ですか?ですが、どうやって降りるのですか?」

「今夏だけは私たちの力を使わしてあげるわ。」

「サナさんは私の力で運びます。」


上から目線で言いながら2枚の白い羽を広げていました。

私はアリスの、お姉さまはエリスの手を取りました。

そして、羽を一度はばたかせれば、重力を無視したように体が浮きます。


「ここからは戻る事が出来ないわ。覚悟を決めなさい。」

「覚悟ならあの時からできているわ。」

「お姉さまと同じです。覚悟はすでに出来ています。」

「いい返事ね。エリス、そっちも大丈夫ね。」

「大丈夫です。お姉さま、行きましょう。」


アリスを筆頭に穴の中へ降りて行きます。

穴の中は空洞になって、自然に発生して開いたようになっていました。

入ってから200メートル近く降りてますが底が見えません。


「暑さが増して、酸素濃度も低くなっていますね。」

「かなり降りたのにまだあるわね。このままでは私たちが危ないからエリス、私とリーナに耐性の付与をお願い。」

「分かりました。【?????(?????)】。」


私たちでは聞き取れない女神さまだけが使える特殊魔法(エクストラスキル)を発動してくれました。

エリスが言葉を放つと、お姉さまと私の体に薄い粘膜の様なものがしみ込んできました。

溶け込んだ事以外は何も起きていないようにも見えましたが、先ほどまで暑さと酸素濃度による苦痛が無くなりました。


「エリスが付与したから、ちんたら降りる必要はなくなったわよね?少しスピードを上げるわよ。」


羽を勢いよく振り下ろすと速度が増していきます。

先ほどまでは私たちの体が絶えれるかどうか試すためにあえて遅く降りていたのでしょう。

耐性が付与されたので加減をする必要がなくなり、あっという間に深さ1キロメートル地点までやってきました。


「そろそろ着くわ。リーナ、サナ、心の準備をしておきなさい。」

「既に準備は整っています。」


私にもようやく底が見えました。

中心にそびえる大樹が根元から紫色の光を放っていました。

その光を洞窟にできた大きな結晶の数々が反射して神秘的な景色となっていました。


「かなりの生命力を奪っているようね。辺りに美徳(レイン)から溢れる力で出来た結晶まであるわ。」

「何を感心しているんですか。それはつまり、自力で封印を解きかけているという事ではないという事ではないですか。」


私が聞いた話ではアリスの力である美徳(レイン)は微々たる力で、何者かが意図的に封印を解かない限り静かに眠っているとの事でした。

しかし、この空洞に広がる美徳(レイン)の力で出来た結晶は見た目で判断できるほどとても綺麗でひどく歪んでいました。

それだけではなく、数が数十では収まらないほどあり、大きさは私たち人間人分からそれ以上のものまであります。

美徳(レイン)が封印されて数百、数億、数兆年としても使い手(主人)がいなくても力の殆どを意識を持って使えるのではないでしょうか。


「急いで回収しましょう。大樹の根まで直でお願いします。」

「今回はおまけをして上げるわ。」

「エリス、私たちも急ぎましょう。」

「そうですね。」


私たちが探している美徳(レイン)は間違いなく光を発している根本にあるでしょう。

アリスによって完全に抑え込まれた美徳(レイン)同士の共鳴がその在り処だけは訴えるように教えてくれます。


「これが根元……。お姉さま、燃やして進みますか?」

「それがいいかもしれないわね。アリス、このまま燃やしても大丈夫なの?」

「やめた方がいいわよ。この大樹が傷ついたことで美徳(レイン)が暴れるかもしれないわ。それに、燃やしたところで美徳(レイン)の元へはいけないわよ。私たちが入り口を作ってあげるから待っていなさい。」


アリスはポケットから何かを取り出し、一つをエリスに渡してお互いに向き合いました。

そして、何かを祈りをたたるように願いを込んで持っていた何かを投げました。

アリスとエリスが持っていたそれぞれがぶつかった直後、激しい閃光と共に異界の扉が広がっていました。


「この大樹はユグドラシルの一部で出来たものだと思うわ。」

「封印を正確に言うと、ユグドラシルの小さな枝に入れておくだけなんです。小さな枝と言っても元々はユグドラシルの一部であるため枝の中は異次元となっています。」

「誰かが枝を体内に入れたりしない限り美徳(レイン)が異次元から抜け出す事は出来ないわ。でも今回は違った。」

美徳(レイン)が数兆年いや、それ以上の年月を掛けて異次元から力の一部を外に放出して辺りから力を吸い取っていたようです。」

「そのせいで枝の中ですくすく育ったようね。それに、美徳(レイン)の影響を受けて枝も成長をしてここまで大きな大樹になったみたい。」

「大樹の中は時空が歪んでいるからこうしないといけないのよ。」

「私とお姉さまでやっと道を作れるほど中は複雑に入り組んでいます。私たちは女神なのでこの中には入れません。お二人に頼ってしまいますが、どうか私たちに手を貸してください。」


エリスは神経に、アリスはいつもの呑気な口調に見えてかなり焦っている様子で頼み込んできました。

しかし、私たちの返事は既に決まっています。


「一度手を貸してもらいました。私は恩をあだで返したりましません。」

「私もリーナと同じ意見よ。必ずとって帰ってくるわ。」


お姉さまと私は、2人が用意してくれた入り口に迷う事なく入っていきました。

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