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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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夏を楽しむ少女6

寝直した後、次に目が覚めた時はいつもと同じ時間でした。

夜に散歩をしてちょうどいい運動になったのか、お姉様に手を握られたおかげなのか分かりませんが、快適に寝られたようです。


今日は自由行動で各々行きたいところに行く予定になっています。

なので、お姉さまと一緒に美徳の反応がある場所に偵察へ行こうと言うことになっています。


「準備バッチリですね!」


鏡を見て自分の身嗜みを整え、お姉さまの方を見ます。

普段ならお姉様に確認をとって完了とするのですが、今日は違います。


「お姉さま、具合が悪いのでしたら無理をしない方がいいですよ?」

「平気よ。これくらいならすぐに治るわ。」


青ざめた表情で言われても説得力がありません。

部屋で休んでもらっていて構わないのですが、みんなが楽しめるように無理をしているようです。


「せめて、このお薬は飲んでください。多少は楽になるはずです。」

「ありがとう。」


夜のために持って来ておいた精力剤を渡しました。

お姉様を強制的に発情させようと持って来たのですが、疲労軽減やストレス削減の効果があるので使うしかありません。

それに、これだけ体調が悪そうであれば発情せずに気分の上昇程度にしかならないでしょう。


「リーナ、一つ聞きたいのだけれど、この薬は何味なのかしら?蓋を開けたら異臭しかしないわ。」

「私には分かりません!栄養があるものだけを煮詰めて作った専用のお薬です。」

「それは、そうだと思うけど……。」

「これまで私が作って来た研究作品を思い出してください!どれも素晴らしいものばかりでした!だから信じてグイッと!」

「ええ、あなたのことは信じているわ。信じているのだけど――」


結局一息に全て飲んでくれました。

感想を聞くともう二度と飲またくないと言われて傷つきましたが、効果は期待してもらっているのでおあいこです。

しかし、今後は匂いや味の研究もしないといけません。

食べ物や飲み物に混ぜた時バレる心配があります。


お姉さまの準備が終わると入り口に向かいます。

今日は自由行動ですが、朝と夜に点呼をとって確認をするようです。


「遅れました!すみません。」

「支度に手間を取りました。すみません。」

「集合時間には間に合っているから2人とも顔をあげて。それより、サナちゃん、ちょっと顔をよく見せて?いつもより辛そうじゃないかしら?」


マリア会長にはすぐにバレたみたいでした。

私が手をこまねいて端の方で事情を説明しました。


「どうしたのリーナちゃん?」

「その、お姉さまのことはあまり触れないであげてください。どうやら例のアレが来ているみたいでして、人前でその話になると恥ずかしいと思います。」

「例のアレ?」

「はい。女の子のみ一定周期で来る例のアレです。」

「!?サナちゃん生理なの!?だから、辛そうなのね。分かったわ、触れないようにしておくわね。」


マリア会長に説明を終えた後、みんなの方に戻ると、お姉さまは肩を落としていてレオナちゃんとヒマリ先輩は同情していました。


「会長、声が大きくて普通に聞こえてます。内緒話の時は聞かれない声で話してください。」

「ご、ごめんない!驚いて。でも、わざとしなゃないのよ?」

「知っています。だから余計にタチが悪いです。」

「会長、デリカシーないと嫌われますよ?」

「レオナちゃんまで!?」


マリア会長は不機嫌そうなレオナちゃんにすがりついていました。


「リーナ、誤魔化してくれてありがとう。」


お姉さまはそっと耳元でお礼を言われてこぼれそうな笑みを我慢しました。


「でも、生理ではないからね?」


ボソッと付け加えられ私は軽く相槌を打ちました。

恥ずかしそうに赤らめるお姉さまにちょっとだけそそられてしまいました。


「気を取り直して、出発しましょうか。」


ヒマリ先輩が区切りを付けてくれました。

私はお姉さまと下見で、マリア会長はレオナちゃんの機嫌直しにお出かけならならぬデート。

必然的にヒマリ先輩はミワちゃんと観光となりました。


これから自由行動で各々分かれて街を探索する流れになり、いざ出発しようと言う時に事は起きました。

入り口を出てすぐのこと走り込んで来た人と衝突してしまいました。

何かあせっているようでした。


「すみません。お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。それに、こちらこそすみませんでした。…あ、リーナさん!」

「リザさん!」


お互いに顔をあげると素性を認知しました。

怪我はなさそうでしたが、リザさんの持っていた箱から野菜が転がり落ちてしまいました。

みんなも手伝ってくれてすぐに集まりました。


「ありがとうございます。」

「いえ、こちらに非がありますので。それにしても、どうしてこちらまで?」

「野菜の宅配です!私、家の仕事と兼任で宅配のアルバイトもしてるんです。」


家族のために掛け持ちとはとても心にきます。


「それじゃうちは届かないとなんで、行きま――」

「ねーちゃん!!」


リザさんが歩き始めようとした時、男の子が走り込みながら駆け寄って来ました。


「ヒロ?どうしたの?家の手伝いは?」

「ねーちゃん、それどころじゃないよ!!父ちゃんが、父ちゃんが、倒れちゃったよ!!」



============



「どうでした?」

「ただのぎっくり腰のようでした。」


リザさんのお父さまが倒れたと弟さんから聞いて、リザさんの後を追ってお店まで行くと、倒れている男性と心配そうに見ている男の子がいました。

駆け寄って確認すると意識はありましたが立ち上がれないようでしたので手を貸してお家の中まで運びました。


「いや、ここまで来ていただいて申し訳ないです。」

「それぐらい謝られることではないですよ。それより、お店の方はどうするんですか?お父様があの様な状態では…」

「いえ、私1人でもやっていけるので開店はします。」

「ですが、一人で昨日のような量を捌くのは…」


どれだけ要領が良くても一人で大人数は無理でしょう。

このお店の状況を聞いた以上、リザさんが今日だけでも店を閉めたくない理由は分かります。

チャレンジするべき時はあるでしょうが、無謀は良くないです。


「なら、こう言うのはどうでしょう?私たちを1日だけ体験で働かしてください。」

「それは――」

「困ったら相談してくださいと言いましたよね?」


夏期休暇1日だけの特別ボランティア活動が始まりました!

内容はキッチンとフロア。

昼食の賄い付き朝の10時から夕方の6時まで。

報酬はお客様の笑顔!

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