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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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夏を楽しむ少女5

宿泊施設に戻ってそれぞれの部屋に入ると、私たちは入浴を済ませてすぐに寝入ってしまいました。

思っていたよりも披露していたようで、お姉さまの寝顔を観察しようと計画していたのに私の方が先に寝てしまいました。

悔しい限りでしたが、眠気に勝つことはできず意識を失ってしまいました。


そうして何時間眠っていたのか、不意に目が覚めました。

何かに呼び起こされるように起きたものの、その正体に気づくことができませんでした。

窓越しに外を見ると、朝日は登っておらずほんのりと赤みを帯びているぐらいでした。


その景色に何を思ったのか不自然に体が動き、朝の開けない外に出ていました。

鼓動はいつもよりも早いけど、体はいたって正常でした。

しかし、何か知らないモノの存在に引きつられるように動く体は、私が違和感を感じさせない程とても自然でした。


自分でもどこへ向かっているのか分からないのに、その足取りはちゃんとしてどこか目的の場所に向かっていました。

知らないけど知っているその場所を目指した足は、海の浜辺に行くとぽつりと止まりました。


「あれ?今日来てくれたお客さんじゃないですか?」


砂浜で体操座りをしている女性に声をかけられた。

彼女は私のことを知っているみたいだけど、王族としての私をしているわけではないみたいだった。


「覚えてませんか?お昼にうちのお店に来てくれたじゃないですか!」

「あの時の店員の方ですね。」


よく観察してみると、お昼をいただいたお店で店員をしていた女性の方だった。

服装や結んでいた髪を解いているのもあって気づきませんでした。


「女性一人でこんな危ない時間にどうしたんですか?」

「目が覚めてしまったのでお散歩です。あなたはどうなんですか?」

「私はお仕事の休憩です。」

「こんな時間までお仕事をしてるんですか?」

「うちは家族だけでやってるので。それに、この時間までは私一人ですよ。父も歳で弟たちはまだ幼いですから。」


王族である私の父ですら、こんな遅くまで仕事をすることはない。

家族のためにと言うことがあるでしょうが、こんな遅くまでするには生半可な気持ちではないと思います。


「そう言えば、名前を名乗ってなかったですね。私はリザと言います。」

「これはご丁寧に。私はリーナです。」

「リーナさんですね。観光て来ているみたいでしたがどうですかこの街は?」

「とても楽しいですよ。表の花火なんてとても綺麗でした。」


そうでしょ。と言うようにリザさんはうなずく。

そして、他に良かったことを言っていくと、まるで自分が褒められているように喜んでいました。


「楽しそうで良かったです。」

「リザさんも嬉しそうでした。」

「自分の育った街を褒めてもらうとやっぱり嬉しいですよ。それに、うちのお店も喜んでもらえてみたいで、いつもの頑張りが報われて良かったです。」


リザさんのお店では普段食べたことないものばかり見てとても驚きました。

新たな発見を得られて嬉しかったです。


「リザさんは何年程働いているのですか?」

「そうですね、かれこれ5年ですかね。父に憧れて店を継ぐために学校で色々学んで、卒業してからって感じです。ウチは元々父だけの店だったので経済的に危うくて、今は軌道に乗って安定はしてるんですけどまだまだこれからってところです。だから、こうやって夜遅くまで私だけでは働いてるんです。」

「とても優しいのですね。お父様も喜んでいるのではないですか?」

「それが、要らないことをするなって言われてるんですよ。」

「それはどうしてですか?」

「なんでも、お前の将来はお前のものだから本当にお前がやりたいことをしろって。私は私の意思で手伝ってるんですけどね。」

「とても優しいお父様ですね。」

「そう思います?」


リザさんはとても疑わしそうに見つめて来ました。

でも私にはわかります。

お店が赤字だからそう言わせてるだけかもしれないとリザさんのお父様は思われているのでしょう。


「私は父の気持ちは分かりません。本当にお店を継ぎたいだけなのに。」

「やはり、この場合は時間に任せるしかないのですね。軌道に乗っても続けていれば本当なんだと信じてくれますよ。」

「そうですかね?っと、そろそろ行かないと!」


リザさんは勢いよく立ち上がり、近くに置いていた重そうな荷物を楽々持ち上げる。


「仕事の続きですか?」

「遅くなると、心配掛けちゃうから。」


そう言って、元気よく走り出したと思うと、すぐに戻って帰した。


「私の愚痴に付き合ってくれてありがとね!」

「私で避ければいつでも構いませんよ。また、何か困りごとでもあれば言ってください。手伝えるものがあれば手伝いますねで。」

「その時は、相談させてもらうね!今日はありがとう!!」


そう言うと、今度こそ行ってしまいました。

とても明るくて元気で家族のために頑張れる方。

それでいてどこかシンパシーを感じるような方だと思いました。


「リーナ、こんなところに居たの?」

「お、お姉さま!?」


後ろを向くと、そこにはお姉さまの姿がありました。

私を探して走ってきたのか、汗をかいていました。


「目が覚めたらあなたの姿が無くて、誘拐でもされたのかと思ったわ!」

「心配を掛けました、すみません。ちょっとだけお散歩をするだけのつもりでしたので油断してました。」

「それで、さっきまで何してたの?」

「お昼の店員の方が先ほどまで休憩していまして、お話をしてました。」


呆れたように頭を抱えていました。

私もすぐに帰るつもりが海辺まで来てしまって無意識でしたがよくなかったです。

今回は反省です。


「お姉さますみませんでした。」

「もういいわ。でも、次は一言お願いね?こっちには会長にヒマリ、妹さんにレオナちゃんまでいるから、みんなに心配させてしまうから。」

「はい。以降の行動はより心がけます。」

「なら、今日はもう帰りましょう。」


お姉さまは優しく頭を撫でた後私の手を取って歩い始めました。

私はその手を握り返して、お姉さまの横をついて歩きました。

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