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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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すれ違う少女9

お姉ちゃんに手を引かれ、エーテル館を出る事が出来た。

外に出るころには涙は収まり、心の情緒も安定して来ていた。

そんな私を、みんなは心配してずっと待ってくれていた。

私が全然戻ってこなかったからとても心配だったんだって。

みんなの気持ちを聞いて、少しだけ体が軽くなった。

私を締め付けていた鎖が少しだけ緩んだ。

でも、心配させてしまった事にも罪悪感があった。

お姉ちゃんにも迷惑をかけて少しだけ悲しかった。


外に出てほっとしている私を見てお姉ちゃんが3人さっきの事を話してくれた。

脱走した動物たちに襲われていたことをお姉ちゃんは知っている部分だけ伝えてくれた。

でも、話している間のお姉ちゃんはとても怖かった。

何かにあたっているように見えて悲しかった。


私が弱かったから、お姉ちゃんに頼るしかなかった事が原因でそんな顔をさせてしまった事がどうしても悔しくて胸が締め付けられた。


お姉ちゃんによって事情を知ると、みんなが一層心配してくれた。

そして、私が当番なのに先に帰るように言われてしまった。

しかも、3人は一度エーテル館を見回りに行くと言っていた。


それがどうしようもなく嫌だった。

でも、ここで何か言ったらそれこそ迷惑を掛けそうだったから何も言えなかった。

そのまま私は、お姉ちゃんに手を引かれて寮に戻った。


歩いている間のお姉ちゃんはまだ機嫌が悪かった。

何かに怒っているのは見てわかるけど、それが誰にどういった嫌悪感なのか分からなかった。

捕まれている手はとても強くて少し痛かった。

最初は私を離さないように握っていてくれてみたいだけど、寮に近づくにつれ徐々に力が入っていった。


それに、お姉ちゃんはずっと前を向いていたから正確には分からないけど、ずっと怖いオーラをまとっていた。

話しかければ切り割かれる。

そんな恐怖と隣り合わせだった。


部屋の前に行くと、お姉ちゃんとはここでお別れだと思っていた。

でも、お姉ちゃんは私を掴んだまま部屋に入っていった。

無理矢理入れられ、ベットに押し倒された。


「お姉‥…ちゃん?」


何をされるのか全然分からない。

そんな恐怖に襲われ顔を見れなかった。

押し倒された後、両手を抑えられ、身動きが取れなくされた。


「お姉ちゃん、どう、したの…?」


けど、お姉ちゃんは何も言ってくれない。

だから、怖かったけど、怖くて今にも泣きだしそうだったけど、目を開けた。

お姉ちゃんとちゃんと会話するには、向き合って話すにはそうしないといけないと思ってたから。


「どうして、泣きそう‥‥なの……?」


お姉ちゃんは悲しんでいた。

苦しんでいた。

今にも取り乱しそうで、必死にそれを押し殺していた。


「……あなたは、誰なの?」


やっとお姉ちゃんの口から出た言葉は、とても痛かった。

胸が張り裂けそうだった。


「あなたは、どこの誰なの?」

「私は、リーナ……だよ。」

「違う!あなたはリーナじゃない!あなただって、そう言ってたでしょ!!!」


とても怖かった。

お姉ちゃんに否定されることがとても怖かった。

自分が自分でないと否定されることが苦しかった。

何より、あの時お姉ちゃんに聞かれていたことが、あんまりにも悲しかった。


「もう一度聞くわ。あなたは誰なの。リーナの皮を被ったあなたは誰なの!!!」


私の両腕を掴んでいたお姉ちゃんの手は私の首に伸びていく。

息を吸うことが苦しくなって、だんだんと視界がぼやけていく。

喋ろうにも言葉を出せない私は落ちそうだった。


「や‥‥めて、お姉‥‥ちゃん‥‥。」

「っ!!」


ギリギリのところで私は息を振り返した。

お姉ちゃんの手から力が徐々に抜けていく。


「その顔で、リーナの顔でそんなこと言われたら……。卑怯だわ!!」


歯を噛みしめてとても悔しそうだった。

でも、それ以上に私も悔しかった。

私が、リーナちゃんではないから、リーナちゃんの仮面を被った私だから嫌われてしまう事が悲しかった。

私からしたら、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんにしか見えなかったから。


「ごめん…なさい。」


でも、謝罪の言葉しか出てこなかった。

もっと私は見てほしかった。

姿ではなく、心を見てほしいのに、どこかでそれを否定する私がいた。


「ごめんなさい。私‥‥私‥…ただ、お姉ちゃんと学校に行きたかっただけなの‥

…。私は……。」


どんどんと涙がこぼれていく。

止めたくても止められない。

お姉ちゃんの前で泣く姿は二度と見せたくなかったのに、それでも泣きやめる事が出来ない。


「……やめてよ。‥……そんな顔で、謝らないでよ。‥……私が悪い事をしているみたいじゃない。‥‥私はただ、リーナが戻ってきてほしいだけなの。だから、泣いてないで返してよ……。」

「ごめんなさい。」


お姉ちゃんに頼まれてもこれだけは無理だった。

私にはそんなことをする力すらないんだもん。

だから、泣きながら謝る事しか出来なかった。

こんな事なら、こんな気持ちを残してしまうぐらいなら、あの時返事をしなければよかった。




========================




その日を境に、お姉ちゃんとの関係は完全に崩れてしまった。

お姉ちゃんは私を避けるようになり、私もお姉ちゃんに近づくことが無くなった。

部活動もとい勉強会はお姉ちゃんは来なくなってしまった。

そして、お姉ちゃんが来なくなってしまった原因を作ってしまった私も行かなくなってしまった。


マリアお姉ちゃんにヒマリお姉ちゃん、レオナちゃんも誘っては根気よく誘ってくれるけど、お姉ちゃんがいない所に行く気になれなかった。


それだけでなく、学校でも壁を作るようになってしまった。

話しかけれられれば無難な受け答えをして、それ以上話す事をしなかった。

自分からも話す事をせず、1人でいる事が増えた。


あれから数日、とうとう試験日になってしまった。

お姉ちゃんとは話す事はなく、寮ですらすれ違う事も少なくなっていった。

すれ違っても、まるで他人のように無視される。

それが一番怖かった。

怖くて怖くて、まるでお姉ちゃんは私の知っているお姉ちゃんではなかった。

知らないお姉ちゃんを見ることがとても悲しかった。


そんな気持ちを知りませんと言うように試験は始まっていく。

ちゃんとテスト勉強をしていたからどれも簡単だった。

もっと難しいものだと思っていたけど、ヒマリお姉ちゃんが作ってくれたテスト対策用の資料に書いてあったものが多くてとても助かった。

そんな日が1週間も続き、最後の日を残すばかり。

私もそろそろだった。


「リーナちゃん、サナ先輩とは……大丈夫なの?」

「明日、しっかりとお話をするつもりです。このままでは私も嫌ですから。」

「何か、手伝えることはある?」

「でしたら、お姉さまが逃げないようにお願いしますか?後、2人だけで話したいので人払いをお願いできますか?」

「任せて!それなら、マリア会長とヒマリ先輩にも相談するね!」


一週間まともに会話をしていなかったのに、ここまでしてくれるなんて本当にいい人。

リーナちゃんはとっても幸せ者だ。

なら、私はそろそろ覚悟を決めないと。

眠りから起こしてあげないと。

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