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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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すれ違う少女8

「今日はここまでにしましょう。」


マリアお姉ちゃんの声が部屋の中に響く。

つい集中してしまい、その声に驚いてしまった。

マリアお姉ちゃんに言われ時計を見てみると、部活動の終了時間の10分前だった。


「そうですね。そろそろころあいですね。」

「ん~~~!疲れた~!」


お姉ちゃんはパタリと教科書を閉じ荷物を片付け始めた。

ヒマリお姉ちゃんは体を伸ばしてリラックスしていた。


私もお姉ちゃんたちを見習って、少しリラックスしてから荷物を片付け始めた。

ふとレオナちゃんが気になってそっちの方を見ると、


「ぷしゅー。」


頭から煙を出していた。


「レ、レオナちゃん!?」

「ぷしゅー。」


声をかけてみたが全然反応していない。


「あはは、レオナちゃんオーバーヒートしちゃったかな?」

「笑ったら可哀そうでしょ。レオナちゃんなりに頑張った証拠なんだから。」

「だって、会長と同じような反応してるんだもん。面白いじゃん。」


マリアお姉ちゃんがレオナちゃんと同じような反応?

でも、会長は勉強が得意そうだったから、そんなことが起きるなんて思えない。


「もう、そのことは内緒って話でしょ?」

「すみません。つい口が開きました。でも、まるで姉妹みたいな反応ですね。前世では姉妹だったりして。」


そんなことを言って面白がっていた。

でも、ヒマリお姉ちゃんが言うなら本当に似ていたんだと思う。

なら、本当に前世‥‥‥。


「ヒマリそんな冗談はいいからレオナちゃんを正気に戻すわよ。」

「いやいや、こういうのはお姉ちゃんの役目でしょ。会長、お願いします!」


またこのネタを引きずっていたようだった。

もしかしたらツボにはまってしまったかも?


結局、レオナちゃんはマリアお姉ちゃんによって元に戻った。

会長が顔を近づけてゆすってあげると、いきなり飛び上がりマリアお姉ちゃんと頭をごっつんこさせていた。


その姿を見て、ヒマリお姉ちゃんはさらに笑っていた。

最初は大人なお姉さんみたいな雰囲気があったけど、どこか子供っぽいところがあるみたい。


一通り荷物をまとめみんなでエーテル館の外に出た。

今日は私の当番だから、鍵を閉める私の役割。


「えーっと、鍵は‥‥…。」


鞄の中を探ってみる。

でも、そこにあるはずの鍵がなかなか出てこない。


「リーナ?」


お姉ちゃんが私を心配して声をかけてくれる。

大丈夫だよと返したけど、何度探しても出てこない。

もしかしたら、さっきのお部屋に置き忘れてしまったのかもしれない。


「すみません。鍵を置き忘れてしまったようなので、探しに行ってきます。」

「待って、リーナ!」


後ろからお姉ちゃんに呼び止められた気がしたけれど、急いでいたので無視をしてしまった。

少し罪悪感はあるけれど、みんなを待たせてるから急がないと!


エレベーターを使って降りようとしたけど、なぜか動かなかった。

ランプもついていないし、もしかしたら一定の時間から動かないようになっているのかもしれない。


私は諦めて少し奥に設置されている階段をつくことにした。

エレベーターならすぐに着くけど、階段を使って降りるともなると足が疲れてくる。


やっとの事で勉強をしていた部屋についた。

机の上に置き忘れていないか確認したけどなかった。

もしかして落ちているのではと思い、足元の方を見てみたけれどどこにも無かった。


「あれ?どこに落としちゃったんだろ?」


記憶をたどりながら落としていそうな場所を探ってみる。

でも、中々き思い出せない。

このまま立っているだけではいけないので、ともかく動くことにした。

部屋と離れて廊下に。


すると、どこからか鈴のような音が聞こえた気がする。

だって、誰もいない廊下からそんな物音がするはずも無いんだからただの空耳だと思いたかった。


けど、音は立て続けにしていた。

さらに、徐々に近づいている。


不気味な現象に私は少し構えてしまった。

暗くなった廊下の向こうから何か近づいてくるのか分からない。

その恐怖と緊張が私を支配した。


徐々に近づいてくる音はそろそろ姿を現していい頃だと思う。

だけど一向に姿が見えない。


「もしかして、幽霊さん!?」


姿が見えず、ただ音だけがする。

本当に幽霊さんがいるのかもしれない。


そう思った瞬間、体が硬直するのが分かった。

怖くて体を動かせない。


「お姉ちゃん…。」


怖くて弱音が出てしまう。

暗闇の中で恐怖に勝てるほど私は強くない。

今すぐにでもおねちゃんに抱き着きた。


恐怖る私は何もできず、その正体が1メートル先まで来た時に覚悟した。

ここでお別れになってしまうなんて嫌だ。

思えば思うほど別れが怖くなる。


けれど、その位置に来てから鈴の音は止まった。

目を開ける事も出来ず、私もまた動けないまましまっていた。


でも、時間が過ぎていくにつれ、だんだんと好奇心が増していく。

人間、怖いものには好奇心が旺盛らしいけど、これほど自分を呪ったことはなかった。

目を開けたら絶対怖い思いをするってわかっていたはずなのに、それでも段々を瞼を開けてしまう。


完全に目を開けた私はびっくりした。

目の前には誰もいなかった。

もしかしたら本当に幽霊がいたのかもしれない。

ただ、通り過ぎて行ってしまっただけでも、そう思った。


でも、私は見つけてしまった。

足元の方に黄色く光る何かがあった。

2つの丸い何かが光っている。


それに気づくと向こうも動き出す。

一歩また一歩と近づくそれから鈴の音。


そして、50センチも距離に来てやっとその正体が分かった。


「何だ、猫ちゃんか…。」


目の前にいたのは猫ちゃん。

しかも、この前見かけた不思議な猫ちゃん。

そして嬉しいことに、その猫ちゃんが私が探していた鍵を銜えていた。


「もしかして私のために持ってきてくれたのかな?」


腰を落として、猫ちゃんと同じ目線に立つ。


「それ私のなの。持ってきてくれてありがとう。」


そう言って片手を差し出す。

猫ちゃんも分かってくれたのか私方に近づいてくる。

とっても賢い猫ちゃんだった。


とても可愛らしい顔をして、ゆっくり、ゆっくりと。

そして、銜えたそれを私に渡すためにかがんで、


「きゃっ!!」


いきなり飛び掛かられた。

とっさにもう片手で顔を欠かす。

そして、送れて腕に痛みが走る。

さっき、爪で引っかかれてしまったんだと思う。

しかも、傷は深い。


「ね、猫‥…ちゃん!?」


私は驚きを隠せず尋ねるような事をしてしまった。

でも、猫ちゃんはそんなこと気にしていない。

目は獲物を狙っている目だった。


そして、悲劇はそれだけでは終わらなかった。

背筋だけが寒くなる。

色々な場所から何かに睨まれている。

そして、全方位囲まれているかのようだった。


私は知りたくもないけど、確認してしまった。

いつの間にか、周りにはたくさんの光る球体。

いや、たくさんの動物たちの目がそこら中にあった。


私はここで育てられている動物たちに囲まれている。

そしてみんな、あの猫ちゃんと同じ目をしている。


「ど、どうして‥…。」


私は分からなかった。

ここの動物たちに何をしたってわけじゃない。

むしろ仲よくしようとしただけ。

ほんの少しだけ仲良くしたかっただけなのに。


「ガルルㇽㇽㇽ!!!!」


猫ちゃんが威嚇を始めて、多くの動物たちが続けてうなる。

まるで私に出て行けと。

ここに来るなと起こっている。


私はそんなことしていないのに。

私はただ少しの間だけここに居たかった。

それだけなのに。


「なんで、私じゃダメなの……。リーナちゃんじゃない私は、だめなの?私は、体験して見たかっただけなのに、…‥‥それすらも許してもらえないの?」


私はみんなに訴えた。

でも分かっていた。

ここに居る時点で誰も耳を傾けてくれる子はいないんだって。


「グガァァァ!!!!」


咆哮を止めることはない。

そして、それが最後だった。

猫ちゃんを筆頭に私に襲い掛かってくる。


私はただ、意味もない抵抗しかできない。

両腕で顔を隠すけど、他のとこを切り裂かれたり、蹴られたり。

ただただ、痛い思いをさせられた。


「お姉‥‥ちゃん‥…助けて‥‥。」


力なくお姉ちゃんに助けを求める事しか出来なかった。

今の私は力なんてない。

ただ、無力の少女だった。


「リーナ!!!」


でも、その声を聞き、駆けつけてくれた。

お姉ちゃんが助けに来てくれた。


動物たちをかき分け、私のところにやってくる。

そして、何か呪文のようなものを唱えた。


「もう大丈夫よ。」

「え……。」


何がどうなったのか分からない。

お姉ちゃんの言葉を聞いた瞬間、足元から数本の薔薇がバリケードを作るかのように入れ組みながら生えてきた。

そして、その薔薇たちは光り出し、私を優しい光で照らしてくれた。

すると、さっきまであった傷がだんだんと言えていく。


「リーナ、もう少し待っててね?」

「お姉‥…ちゃん……?」


私は怖かった。

優しく言ってもらっていたはずなのに、怖くて怯えそうになる。

あんな顔のお姉ちゃんを見るのは初めてだった。


無理矢理作った笑顔が隠しきれていない。

本当に怒っている顔だった。


「あなたたち、いつもの場所からここまで脱走して……。この後どうなるか、分かってるわよね?」


その声に動物たちは恐怖していた。

後ずさりして逃げ出そうとする動物たちも。

でも、みんな逃げられなかった。

恐怖による体の硬直で逃げたくても逃げられない。

まるで蛇に睨まれたカエルだった。


一歩、また一歩と近づくと、前にいる動物たちからだんだん崩れ落ちて行った。

口から白い泡を出し、白目をむいている。


最初は恐怖のあまりかと思っていたけど違った。

お姉ちゃんが何かしていた。

薄ピンクの煙をお姉ちゃんを中心に出している。

それを吸い込んだ動物たちが次々と倒れて行っているのだ。


もしかしたら、相当強い毒ガスかもしれない。

どうしてこんな事が出来るのか分からない。

私を囲っているこれもどうやったのか想像すらできない。


でも、お姉ちゃんを止めなくちゃと思った。

このままはだめだと何かに訴えられた。


「お姉ちゃん、それ以上はだめぇ!!」


私は出せるだけの声を出した。

怖かったけど、叫んだ。

お姉ちゃんが向こうに行ってしまわないように。

そのこと一心だった。


「リーナ‥‥。」


私の声はお姉ちゃんに届いた。

お姉ちゃんから出る煙はだんだんと薄くなっている。


「動物を殺していると勘違いしたのね。あなたはあんなことをされたのに優しいわね。大丈夫よ、これは死んじゃうようなものを吸わしていないわ。」


お姉ちゃんに言われて、少し安堵した。

まるで動物たちが死んでいるように見えたから怖かった。

でも、逃げ出さないように眠らせているだけだったみたい。


「それにしても、なかなか戻ってこなかったから心配したのよ?」

「ごめんなさい。私、私…‥…ごめん、なさい。怖、くて……怖、くて、私‥うぅ‥‥。」


涙が出てきてしまった。

怖くて逃げだしたかった感情が今やっとあふれ出て来てしまった。

私はお姉ちゃんにしがみついたまま、泣きじゃくってしまった。

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