走り出す少女11~~お姉ちゃん視点~~
寮の中に戻ってみると、レオナちゃんが飲み物を用意して待ってくれていた。
「困りましたね。」
「昨日から寮に戻っていないかもしれないわね。こうなってくると、探すのは難しいわね。警備隊に協力をお願いしたいのだけれど、難しいわよね‥…。」
「はい。……大事はしたくありません。……ただ、もし誘拐などの類に巻き込まれていた場合はどうこう言っていられないですね。」
「会長、サナ先輩、どうして警備隊に連絡しないのですか?」
レオナちゃんは心配でしょうがないらしい。
私たちがあまりに動かないので困っているのでしょう。
「リーナに関してだから、安易には警備隊に連絡できないのよ。レオナちゃんも知っているでしょうけど、リーナは一国の姫。そんな彼女が失踪したとなると大問題。」
ただし、レイン王国内ならば大問題で済むわ。
でも、今は他国にいる身。この状況を警備隊に連絡すれば、いやでもリーナの両親に話が行ってしまい国際問題にまではってしてしまうわ。
さらに、前科もあるためリーナが見つかったとしても、白百合女学院に通うことはまずできなくなってしまう。そして、一生王宮から外に出る事も出来なくなってしまうかもしれない。
それだけは避けなければならない。リーナには自由の身でいてほしい。
だからこそ、こういった選択はとても難しい。
「ひとまず、8寮以外の寮にいないか確認しに行きましょう。それでも見つからない場合は12時まで様子を見て、それでも無理なら警備隊に連絡。これが最善策だと思うわ。」
「そう、ですね。……そこが妥協する最終ラインでしょうか。でも、……。」
アリスの言葉が気になる。
リーナから戻って来るかもしれないという事は、誘拐の類ではなく自身の意志で寮から離れているのでしょう。
でも、いつ戻って来るのかは分からない以上、動かないわけにはいかない。
「まだ、納得しきれないところもあるでしょうが、行動しないと始まらないわ。」
「そうですね。2手に分かれて行動しましょう。」
「なら、私は、会長と一緒に行動します。会長は無理をするかもしれないので。」
「レオナちゃんは過保護ね。私の方が年上なのにこれでは威厳が無いわ!」
「そう思うなら、無理をしないでください。……レオナちゃん、会長が無理をしないように見張っておいてね。」
「はい!」
寮を出て、次はそれぞれの寮に向かう準備をしていく。
すると、一つの馬車が、寮門の前に泊まった。
そして、馬車から降りてきたのは‥…
「お兄、様!?それにリーナも!?」
お兄様だけでなく、リーナが下りてきた。
そして、お兄様は私を見るなり近づいてくる。
「サナ、会いたかったよ。元気にしていたかい?」
久々にあったとはいえ、リーナといたことに驚いてしまった。
「っと、その前に、お二方とは初めましてのようですね。私はイロエ・ラインハルトです。イロエとお呼びください。」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は、マリア・リーゼリットです。」
「わ、私は、レオナ・クライアットです。」
お互いに自己紹介をすましていく。
「それよりもお兄様、どうしてリーナと一緒にいるのですか?」
「この前、様子を見に行けなかったからだよ。彼女が苦しんでいるときに元婚約者でもある私が心配しないわけはないだろう?」
「ですが……。」
それなら私にも一言言ってほしかった。
これではまるで私だけ仲間外れみたい。
それに、事情を知らない私たちがどれほど心配していたか考えてほしいものだ。
「それ以上言わなくても分かっているよ。今回は迷惑をかけたと思っているだ。急だったで、サナに話す時間が無かったんだ。」
「それは、しょうがないですね。……それで、急とは?」
「記憶を取り戻す手伝いをと思ってね、ミオが手助けになりうる機会が出来たとおっしゃられてたので連れてきてほしいと頼まれたのです。しかし、結果としては機械が壊れてしまい試す事が出来ませんでしたが…。」
ミオはみんなが認める天才。中でも、科学技術においてはトップクラス。
ミオにかかれば記憶を取り戻す機械は作れるかもしれない。
それなら仕方ないと追ってします。機械が壊れて試せなかったとしても、私も同じようなことを考えたかもしれない。
「……ですが、記憶を取り戻すにも手順は大事なのです。無理やり思い出せさせるというのは逆効果になりうる可能性があるのです!気を付けてください!」
「ああ、以後は気を付けるよ。……それより、リーナを取られて嫉妬かい?」
「ち、違います!茶化さないでください!」
お兄様もおかしなことを言うようになってしまわれた。
私が嫉妬?そんなことあるわけがない。
リーナは誰のものでもない。リーナはリーナ自身の物。
リーナが決めたことに対して他人が文句を言う筋合いはない。
「分かったよ。それでは、僕は帰らしてもらうよ。マリアさん、レオナさん、2人をお願いしますね。」
「任せてください。」
「はっ、はい!」
そのまま、お兄様は乗って来た馬車で帰ってしまわれた。
一先ず、リーナを連れて寮の中に入ることにした。
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