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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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走り出す少女~~お姉ちゃん視点~~

トントントン


「失礼します。サナです。」

「サナちゃん来てくれたのね。今開けるわね。」


扉の向こうから近づいてくる音が聞こえ、すぐさま部屋の扉が開いた。


「どうぞ、中に入って。」


会長に案内され、この前と同じ席に案内される。


「サナ先輩、紅茶を用意したのでどうぞ。お口に合うかは分かりませんが、飲んでください。」

「ありがとう、レオナちゃん。ありがたく飲ませてもらうわ。」


どうしてレオナちゃんが居るのか分からないけど、用意してもらった紅茶に口を付ける。

フルーティーで私好みだった。


「美味しいわ。」

「あ、ありがとうございます。」


少し照れ臭そうにしながら、会長に隣に座る。

そして、一息ついた所で会長が話し始めた。


「今日は来てくれてありがとう。実は、リーナちゃんの事で聞きたいことがあったの。」

「そうですか、分かりました。答えられる範囲なら答えます。それと、私からもいいですか?」

「ええ。それじゃあ、サナちゃんの話から聞こうかしら。」

「その、どうしてレオナちゃんがいるのか気になって。別に、ここに居るのが悪いていうわけでもないですし、この前も扉の前でそわそわしていたので。それに、よく一緒にいる所を見かけるので。」


これは単なる疑問だった。

以前まではそんなことなかったのにどうしてだろうと思ったからこそ疑問。


「それはね、レオナちゃんが‥…」

「わ、私が説明します。会長は喋らないですださい。」

「は、はい。」


以外にも、この話に関してはレオナちゃんが手厳しいらしい。会長ですら、頭が上がらないぐらいで、一瞬にして喋らなくなった。


「サナ先輩聞いてください。会長ってば、この目の怪我が治ってもないのに色々しようとするんですよ。今だって、左腕の骨折が治っていないのに何の手当もしていないんですよ!」

「か、会長本当ですか!?さすがにそれは誰だって怒りますよ。」

「サ、サナちゃん、お、落ち着いて。」


納得がいった。

レオナちゃんが何であそこまでしているのか謎が解けた。

そしてさらにレオナちゃんは話していく。


「それだけじゃないんです。あの日の次の日から包帯やギプスを外したり、松葉杖を推奨されていたのに気合だけで歩こうとしていたんです。これをほっとける訳ありません。また、いつか同じように怪我をしそうで怖いんです。」

「それは会長に責任がありますよ。そもそもどうしてそんなことをしたんですか?」

「それは、私がそんな格好していたらみんなに心配をかけるでしょ?だから、みんなの前では、と思って。」

「あんなことをする方が心配になりますよ。だから、これ以上会長が無理をしないようになるべく一緒にいるんです。(じゃないと、あの時のようにまた助けられないのは嫌なんです。)」

「そうですか、会長次からは気を付けてくださいよ。」

「それと、ちゃんと感知するまではレオナちゃんに目を見張って貰っていた方がいいですね。」


そういうと、申し訳なさげに返事をする。

それにしても、リーナの影響か初めてあった時のレオナちゃんとは全くの別人のように見えた。


「コホンッ。そ、それより、本題に入りましょう。」

「そうでしたね。でも、さっきの話も重要だったと思いますけどね。……それで、リーナのどんなことについて知りたいんですか?」

「と言っても、プライベートの事を聞きたいわけじゃないのよ。最近の事で、困っている事とかないかを聞こうと思っただけなの。それで、私たちに何かできることがないかなって。」

「そうです。……と言っても、あれから2週間経ちますがそこまで変化はないですね。それに、困っていることもないですかね。」


あれから2週間。リーナはいろいろ努力して見たけど、その成長は著しかった。

どうも、人と関わることに対しての抵抗がまた出来てしまった。


「そうなの‥…。それにしても、前までは普通に話せていたのにね。それに、私たちの事もいまだに思い出せないようで悲しいわ。」

「私もリーナちゃんと話せなくて悲しいです。」


今のリーナは面識があった人全員忘れている。それどころか、話す事すらままならない。


「専属の医者の話によると何かきっかけがあれば記憶が戻ると言っていたんですが、無理にきっかけを作るのは少し抵抗があって……。」

「そうなの。」

「無理矢理記憶を戻そうとして、不完全な記憶を思い出すのが嫌なんですよね。もし、その記憶のせいで余計人と関わることに抵抗が出来てしまうのもあれなので……。」

「でも、リーナちゃんにとって、そんなことはないと思うのだけれど……。」


多分、これを離さないと会長にはわからないと思う。これは、私にとっても暗い話でリーナを壊した忌々しい記憶だから。これを知っているからこそ、私は不完全な記憶を植え付けたくない。だって、それで傷つくのはリーナだから。だから、それをわかってもらうために話さないといけないと思う。


「会長とレオナちゃんは、今のリーナと学園が始まってからのリーナについてどう思いますか?」

「そうね。まるで別人という感じだわ。外側は同じなのに内側が全く違っているわ。まるで生まれ変わったという風に感じるわ。」

「わ、私も、別人のように感じました。でも、サナ先輩が好きなところは変わってなくて、そこだけは同一人物だと感じました。」


2人の意見は分からなくもなかった。でも私は、


「私は、今のリーナが本来の姿で、今までが自分を偽っている感じに見えます。」

「今のリーナちゃんが本来の姿?」

「い、今までが偽っている、ですか?」

「はい。そもそも、私の良く知っているリーナは人と関わることが得意ではありませんでした。ただ、知らぬ間に克服していたのでそこまで気にしていませんでしたが、あまりにも真逆になっていたので無理をしているのではないかと思うぐらいだったんです。」

「そう、だったの。」

「でも、全然考えられません。今のリーナちゃんが本来の姿だなんて。」

「そうね。立場的にも人と会う機会が無かったのもげえいんでしょうね。でも、一時期はあれ以上酷かったんです。精神もおかしくなるくらいの時もあって。」

「精神がおかしく……。」

「全く想像できません。」


今のリーナは誰が見ても分かるぐらい変わり果てている。だからこそ、これ以上と言われても分からない。


「お二人は、10年前レイン王国でクーデター騒ぎがあったのを知っていますか?」

「ええ。当時はすごく有名だったわ。」

「わ、私も知っています。それにリーナちゃんからも何があったのか聞きました。」

「なら、レオナちゃんは事の真相も知っているようね。」

「あの事件がどうしたの?それがリーナちゃんに何か関係しているの?」

「あれ自体は何も関係していません。そもそも、あの事件はリーナが起こしてしまったものですから。」

「リ、リーナちゃんが起こしたってことは、リーナちゃんが燃やしたの!?でもいったいどうして!?」

「私は、魔法の練習をしようとして、失敗してあんな事件が起きたと聞きました。」

「ええ。私もそう聞いているわ。」

「でも、失敗したからってあんなことになるの!?」

「リーナは魔法の才能があったんです。だからこそ、失敗が失敗という範疇を超えてしまっていたんです。でも、その才能はリーナに良い影響を与えるばかりではなかったんです。……それが‥…。」


言いかけて言葉に詰まった。やっぱり、私自身もこの話をするのにためらいがあるのだろう。でも、ここでやめては行かないから、


「その事件がら3か月後にリーナは他国に出向く機会があったんです。もちろん私も同伴していました。でも、それが悲劇の始まりだったんです。途中の森で盗賊に合ったんです。さらに、護衛が負けてしまうぐらい強くて、私とリーナはその盗賊たちにあっという間にとらえられました。さらに…。」


当時の事はいつまでも忘れることはない。

目をつむればいつだってその光景が広がっている。

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