夢を見る少女7~~お姉ちゃん視点~~
私は、寮の外へ出るとあまり人が立ち入らない裏庭へと向かった。
「アリス、いるのでしょう!出てきなさい!!」
私は自分でも信じられないくらい久々に大きな声を出していた。
思っていたよりも私はとても怒っているのだと思う。
いつもなら平常心で見過ごせていたのだが、リーナの事となるとそうはいかなかった。
「そこまで大声を出さなくても聞こえているわ。」
その声と共にアリスは私の前に現れた。
それと共に私の怒りは自分でも抑えきれないぐらい膨れていた。
アリスのもとに向かい、気づいたらアリスの胸元を掴んでいた。
「なんで‥‥、何でこんなことになっているの!…リーナは、…リーナは大丈夫じゃなかったの!」
声を発するとともに私の怒りは溢れかえった。
「何でリーナ何も覚えていないの!あなたがどうにかしてくれるんじゃなかったの!それがリーナとアリスの2人が決めた契約じゃなかったの!なのに…、なのに……。」
「……ごめんなさい。今回は私の落ち度だわ。まさかあそこまで落ちているとは思っていなかったの。」
アリス自身も深く反省している事が彼女の表情から伺う事が出来た。
だからこそ、いつもならそこで何も言わなかった。……でも、今回はそうではなかった。
いもにも殴りかかろうとしていた。
アリスに当たらずにはいられなかった。自己中心的であるという事は重々分かっていた。アリスも今回は想定外の事が起きて彼女も深く反省していることもわかっている。
それでも、この気持ちを抑える方法が分からず当たり散らかしてしまっていた。
「……サナさん待って!」
「……エリス。」
エリスまでこちらに来てしまった。こんな姿、彼女にも知られたくなかった。
多分アリスも同じだと思う。彼女も『なぜここに』という顔をしていた。
同じ姉として、妹には情けない姿を見せたくないという気持ちは重々分かる。そして、契約をしている相手だからこそ、失望されたくないのだ。
「お姉ちゃんはちゃんと努力してくれたの。今回は、私が不甲斐無かったから‥‥…。」
「エリス、いいのよ。今回はサナが正しいわ。結果としてリーナは記憶喪失として戻ってきた。そして、その面倒を見れるのはサナだけなの。そして、リーナの使命を伝えなければいけないのもサナ。彼女が一番つらいのだから。」
「‥‥でも、それでも!」
「サナ、あなたが私を殴りたいなら好きなだけ殴りなさい。それであなたの心が張れるなら私は文句わ言わないわ。」
「お姉ちゃん!」
私は、右手に力を込めて思いっきし振りかざした。
でも、殴ることはできなかった。右手が当たる直前で止めてしまった。
「………分かっているわ。この気持ちは、あなたに向けてしまっているけど、本当は私自身に向けていることだって。‥…今回私だけが何もできずに、ただリーナのそばにいる事しか出来なくて、それに苛立っていることだってわかってる。なのに、どうして、あなたは……。」
「いいえ。あなたの怒りは私に向けているものよ。だからこそ、存分にやればいいわ。」
アリスにはそう言われても、それでもできない。
「……無理よ。出来るわけないじゃない。リーナの恩人にあだで返せないわ。……それに、ここにはあなたの妹もいるわ。妹の前でそんなことしてほしくないでしょ?」
「ええ、それもそうね。」
そう言って、アリスの胸ぐらを握っていた手を離す。
今はもう、怒り狂うことはなかった。いつも通りの平常心に戻っていた。
「さっきまで苦しかったでしょ、ごめんなさい。」
「いいわ。あなたにそうする権利があったもの。……それより、早くあの子の元へ行って、あっ!?あ、あぁぁっっーーーー!!」
いきなりアリスが苦しみ始めてしまった。
「アリス!?どうしたの!?」
「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」
私とエリスは急いでアリスに近寄る。
いきなりの事でどうすればいいのか分からなかった。
「アリス!」
「はぁ、はぁ。」
「お姉ちゃんしっかりして!」
声をかけていくと、大分落ち着いてきた。
「…っ!わ、私より、」
そして、彼女は私の腕をつかみ伝えてきた。
「リーナの、元へ!彼女が、」
「リーナに、何かあったの!」
「彼女が、苦しん、でる。その影響で、私のもとに痛みが。」
「でも、あの子は元気だって!?」
「たぶん、発作よ。5日も、与えていなかった、のでしょう?」
「そ、それじゃあ!」
「私の事は、気にせずに、すぐに行って、あげなさい!私より、彼女の方が、苦しいはずよ。」
その言葉の後、彼女の苦しみはさらに増加していった。
彼女のうめき声がリーナの泣き叫ぶ声かのように私に訴えてきた。
「エリス、アリスをお願いするわね。」
「ええ。こっちは気にせず、今すぐにリーナさんの所に行ってあげて。」
アリスの体をエリスに預けると、寮の中へと走り出した。
こんな時、会長がいれば注意されていたかもしれないが、あいにくと今は誰一人として廊下を通る人はおらず、すぐさまリーナの元へと向かえた。
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