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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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植樹をする少女4

トントントン


「はーい。今開けます。」


部屋にノックの音が響いた。部屋のドアを開けると、目の前にはリーナがいた。


「リーナどうしたの?そろそろ寝る時間よ?」

「実はお姉さまに相談がありまして……。」


今日は真剣なお話をするためにお姉さまを訪ねてきた。


「まずは入ってからにしましょうか。それと、アップルティーは飲めるわよね?」


お姉さまに案内されソファーへ。

そして、台所に回り2つのカップを取りそれぞれにアップルティーを注いでくれる。


「はいこれ。まずは一口飲んで一息つきましょうか。」

「ありがとうございます。」


そうして、カップに口を付ける。


「それで学校で何かあったの?」

「それもあるのですが……。」


少し口ごもってしまう。言いたいのは山々だけど、内容が内容で……。


「何か言いにくいことがあるのね。やっぱり私にも言いにくいの?」

「いえ、決してそう言うものではないんですが、その……お姉さまに迷惑がかかるかもしれないので……。」


お姉さまは自分に迷惑がかかる事とはいったい何なのだろうかと考えているみたいだった。

私が悪いだけだから余計に申し訳なくなる。


「私はどんなことでも迷惑とは思わないから言ってみなさい。」

「本当ですか?」

「ええ、本当よ。」


お姉さまは私の方を見てゆっくりと相槌を打ってくれた。

なので私もゆっくりと口を開いた。


「実はですが、その……ち、血を分けてほしいんです!」


思っていたよりも口にするのは恥ずかしい。


「もしかしていつものが来たの?でも、予備を作っていたのよね?」

「それが、この前の実践授業の時に飲んだものが最後だったようでもうなくなってしまいまして。昨日は我慢はしていたんですが、そろそろ我慢の限界が来てしまって、気を抜いてしまうと意識が持って行かれそうでして…。」

「そうだったの。それなら昨日のうちに言ってくれてよかったのよ?」

「で、でも、お姉さまに迷惑をかけてしまいます。」

「さっきも言ったでしょ?私は迷惑だと思わないわよ。リーナは私にとって妹みたいなものなんだから、その妹の頼みごとを面倒だと思うわけないじゃない。それに、これはリーナにとって大事な事なんだから次からはすぐに私のところに来るのよ?」

「はい、お姉さま。」

「それじゃあすぐに始めましょうか。」


そう言ってお姉さまは自分の首から右肩にかけて生身が晒けるように服をずらしていく。


「いつでもいいわよ。」

「ありがとうございますお姉さま。それではいただきます。」


そう言って私は、お姉さまの首筋にゆっくりと口を近づける。

あまり痛みが来ないように少しだけ舐め、湿らせてから歯を押し込んでいく。

実際どんな感じなのかわからな入れれど一度だけ聞いたことがある。

歯を立てる所までは少々かゆく感じるけど、すぐにずきりと痛みが襲ってくるらしい。

そして、その後直ぐにその痛みは消えていき、血を吸われていく感覚が少しずつ続くという感じらしい。

だから、なるべくお姉さまに痛みが無いようにが血を吸ってから、口を離して傷口を舐めていく。


「お姉さまありがとうございました。」


そう言って、リーナは私から顔を話していく。傷跡を見ると、まだ少し血が出ていたがそこまで深い傷ではなかった。


「それよりいつもより少なく感じたけど大丈夫だったの?」

「はい、それは大丈夫です。それより、また今度また血を貰いに来ます。」

「ええ、分かったわ。」


と、乱れた服を直していく。


「それでまだ私に何か相談したいことがあるんでしょ?」

「それは、大丈夫です。そこまで大したことではないですから。」


手を大きく振りこれ以上は相談できないという顔をする。


「もう、そんなに大したことじゃないんだったら別に話してくれてもいいでしょ?それとも、私に話せないことなの?」

「そんなことありません。お姉さまに話せないことがあるわけないではないですか。ただ本当に些細なことですから。」

「些細なことでもあなたが困っていることが心配なの。だから、ね?私に話してちょうだい。」


そこまで言われると、お姉さまに頼ってみることにした。


「分かりました。実は、この前の実践授業の時に『乙女衣装(シュヴァルツ)』を『解核(シェイプ)』したんです。」

「そうなの?それで、どんなものが出てきたの?」

「実は何も出てこなかったんです。」

「もしかして上手くいかなかったの?」

「いえ、先生に言うには成功しているそうなんですが、肝心の武器が出てこないんです。」

「?成功しているのに失敗しているってことよね?それで何度も試してみたの?」

「はい。ここ2日試してみたのですが、結果は同じようでした。」

「そう。……今その『乙女衣装(シュヴァルツ)』は持っているかしら?」

「はい。一応いつも身に着けています。」

「それならここで『解核(シェイプ)』してもらえるかしら?」

「ここでしてもいいのですか?学校外では非常事態の時以外は使ってはいけないと聞いたのですが。」

「ここは大丈夫よ。部屋の中で物を壊したり壁に傷をつけない程度ならね?」

「分かりました、やってみます。」


そう言って、胸元からペンダントを取り出し握りしめる。


「『解核(シェイプ)』!」


その言葉に反応するかのようにペンダントの形をした『乙女衣装(シュヴァルツ)』は光り輝く。

しかし、その後に変化は一つもなかった。


「これは……。確かに成功しているように見えるわね?でもどうして何も変化がないのかしら?」

「やはりお姉さまでも分かりませんか。」

「ごめんなさい。」

「いえ、お姉さまが謝ることではありませんよ。」

「それでもね、力になってあげられないことには変わりないわ。」

「そんなことないですよ。こうして話を聞いてもらえるだけ嬉しいですよ。それに先生方もわからないと言っていますし、じっくりと調べていきますよ。」

「分かった。でも、私の方でも調べておくわ。」


そうして冷え切ったアップルティーを最後まで飲み切ると部屋を出ていった。




========================



「お姉さま、彼女の『乙女衣装(シュヴァルツ)』は大丈夫なのですか?私には、毎回発動できていないように見えるのですが。」

「いいえ、あれはまだ彼女がうまく使いこなせていないだけよ。それにしても、あんな『乙女衣装(シュヴァルツ)』があったなんて初めて知ったわ。フフフ、いい物を手に入れたようね。」

「お姉さま、笑いが怖いですよ。」


そこにいた2人はさっきまでのやり取りをすべて見ていた。

そして、それぞれに違った考えを示していた。


「もう、そう言うこと言うなんて、あのニコニコしながら、『お姉ちゃん、お姉ちゃん』って言っていたエリスはどこに行ってしまったのかしら。」

「そんな私はとうの昔に消えました。それよりお姉さま、本当にこのままでいいのですか?力をうまく使えていないのだったら力の使い方を教えてあげればいいじゃないですか?」

「そこは大丈夫よ。直にいやでも力を使う時がそのうち来るわ。その時に彼女なら力を使い切って見せるわ。」

「そうですか。それにしても、彼女をすごく信頼しているんですね。」

「そんなことないわよ。……って、もしかして嫉妬?大丈夫よ!一番お姉ちゃんが信頼しているのはエリスだけよ!」

「ち、違います。それより、彼らは動くのですか?」

「ええ、動くと思うわよ。」

「それなら、教えてあげた方が…。」

「大丈夫よ。あの子がこっちに来てるみたいだから。」


不敵に笑いながら話す一人と、ほっぺを少し膨らませながら話す二人の姿は満月に照らされながら映る姿はここで途絶えた。

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