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使えるものは

 クナイ、危ない、避けなきゃ。


 取りあえずこれだけの事を頭が瞬時に理解してくれたおかげでクナイの当たる寸前で横にずれて避ける事が出来ました。クナイが地面を叩く高い金属音で命の危機を更に感じサッと顔から血の気が引けました。


「大丈夫かー」


「自分だけ高いところに逃げておいて良く言えますね!」


 白雪姫先生はパイプにぶら下がりながら私を見降ろしていました。声からも本当に心配しているかは怪しい感じがします。


「俺の生徒なら大丈夫かなって」


「白雪姫先生が担任で強くなったのは忍耐力くらいですよ。これなら社会に出て嫌な上司に当たっても立派に社畜としてやってける自信があります」


「それ、どういうこと?」


「そのままんまの意味です」


「ま、いいか。次来るぞ」


「えっ」


 白雪姫先生が指差す方にはクナイを構えたかぐやさん。次の瞬間、また私に向かってクナイを放ってきます。無数のクナイが私の視界を埋め尽くします。


「なんで私!?」


 叫びながら、何とかクナイを避けて行きます。自分が少し運動神経が良くて良かったと思います。しかし、避けやすいように一か所にまとめて投げられているように感じます。これはわざとでしょうか。

 かぐやさんは投げ続けながら叫びます。


「白雪とやら! 自分の生徒だろう、庇ったらどうだ!」


「ふーん。天橋立をあえて狙って俺に庇わせ、攻撃を当てる作戦ってわけね。確かに、俺としても自分の生徒であり、次期パートナーとして天橋立が傷つくのは困るな。おい、天橋立ちょっとそこにいろよ」


「白雪姫先生…………!」


 あの白雪姫先生が私を庇おうとしてくれている? 

 ちょっと感動してしまいました。白雪姫先生を信じて待ちましょう。

 私が動かないのを見たかぐやさんが再び一か所にまとめて大量のクナイを投げてきます。顔は勝利を確信した笑みでした。

 不思議と怖くはありませんでした。白雪姫先生の効果でしょうか。最低でも、クズでも、教師で大人なだけはありますね。


「じゃ、そこで囮頼むわ」


「ふざけんなクズッ!」


 大量のクナイをすんでの所で避け白雪姫先生に向かって叫びます。

 そうでした、あの人いきなり薬飲ませようとしたり、セクハラ発言したり、小さな悪戯を仕掛けてくる見た目はチャラ教師、中身はクソガキでした。

 白雪姫先生はパイプや窓を上手く使いどんどんビルを登っていきます。


「嘘でしょ……」


 かぐやさんが目を見開いて白雪姫先生を凝視します。それは先ほど白雪姫先生に論破された時と同じくらいの驚きをもっていました。ほんとごもっともです。


 ええい! こうなったら!


「かぐやさん、でしたよね」


「あ、ああ。なんかすまない」


「いえ。とにかくそのまま私にクナイを投げ続けていただいて結構です」


「えっ」


「流石だ、天橋立。自ら囮役を買うとは俺のパートナーにふさわしい」


 白雪姫先生親指を立ててこちらを見ます。

 私はそれをスルーしてかぐやさんにしか聞こえない声で言います。


「あのクズにちょっと痛い目見せるんで」


「味方じゃないのか?」


「いえ、あれが私にとっての魔王です」


 それだけ言って私は走り出します。かぐやさんは戸惑いながらも私にクナイを投げてくれます。


 私は白雪姫先生の見よう見まねで白雪姫先生とはビルを登っていきます。あまり力が無いので白雪姫先生や在原会長のように大胆に動くわけではなく、丁寧に窓やパイプを掴んで上る感じです。結構な高さですね。炎の壁を頑張れば越えられる高さです。

白雪姫先生のいる高さと同じくらいに来て、白雪姫先生が私の真横に来るように調整します。


 そして、白雪姫先生の目が私に向いていなく、かぐやさんがクナイを投げようとする瞬間。私は、思い切り壁を蹴って白雪姫先生の方に飛んだ。

流石に反対のビルまでは届きません。しかし、白雪姫先生とは互いに手を伸ばせば届く距離です。


「白雪姫先生っ!」


「天橋立!?」


 白雪姫先生がとっさに私の手を掴んで私を支えます。思った通り、本当に危ないなら助けてくれるんですね。


 一瞬白雪姫先生は安心したような顔をするものの、私に向かって放たれたはずのクナイが自分にも飛んできている事に気がつき焦りが見えました。

 クナイは白雪姫先生の服と皮膚を斬り裂き少し血を出しました。


「何やってんだよ! いったいんだけど!」


「それはこっちの台詞です。生徒を囮にする最低な奴に罰を与えたまでです」


「こんな危険おかしてまでするなよ!」


「ほら、またクナイが来ますよ」


 今度は白雪姫先生狙いなのか私の時とは比べ物にならない数のクナイが放たれます。あ、これ私も避けなきゃいけないやつですね。避けられる気がしませんが。

 

 すると白雪姫先生のが日傘で落としながら私を庇うように動きます。


「あれ、庇ってくれるんですか?」


「場所が場所だ。ビルの壁とか避けにくいとこだしな」


「なら最初からして下さいよ!」


「だぁから、悪かったって。これからはできるだけ庇うから」


「ほう」


 かぐやさんがニヤリと笑います。な、なんか寒気が。


「今なら、庇うと。あまり一般人は傷つけたくないが」


 今度は本気で私に向かってクナイが投げられます。数も白雪姫先生の時と同じくらい容赦が無い。


 白雪姫先生が日傘で弾きます。それでもまだまだ数がある。

 舌打ちをして日傘を開きます。


「日傘ってこの為に持ってたりするんですか?」


「まあな。使えるものは何でも使っていかねーと」


 しかし、数本弾いたと思うと今度は日傘に穴が開いてしましました。空いた穴からクナイが一本入り込んできて白雪姫先生の髪を数本切ります。


「あ、ごめんやっぱ無理。案外魔法の威力でかかった」


 そう言って私をおいて更にビルの上の方に逃げて行きます。


「ちょっ、さっきの庇う宣言は!?」


「庇ったじゃん! …………ちょっと」


「やっぱり最低じゃないですか。待って下さい」


「なんでこっち来んだよ! あっちいけ!」


 私は意地になって白雪姫先生を追って壁を登っていきます。絶対一人だけ助からせるものですか!

 クナイは相変わらず私達を狙って飛んできます。それを気合いで避け続け結構な高さまで来ました。いつの間にか炎の壁より高い位置にいたようです。炎の向こうに徒然君に近ずいて銃を向けた在原会長が見えました。在原会長銃なんてどこに隠し持っていたのでしょうか。

 ともかく炎の壁際に追いつめられた徒然君はピンチっぽいです。


 そうやってちょっと目を反らしている間にクナイが私の目の前に迫っていました。


「天橋立っ!」


「しまっ」


「こっちに!」


 少し離れた場所にいる白雪姫先生が手を伸ばしてきます。手が届くか一か八か。迷っている暇はありません。足場としては不安定なパイプを蹴って飛びます。


 幸運な事にクナイはパイプに刺さり、白雪姫先生が私の手を取ってくれました。私は宙ぶらりん状態ですが。


「助かりました! できれば早く上げてくれるとありがたいのですがっ」


 下を見ると若干目眩がします。


「おう、了解! ちょっと痛いかもだけど我慢しろよ」


「痛い? どういう……うわぁっ!」


 首をかしげて白雪姫先生を見上げますが次の瞬間には白雪姫先生は私の下にいました。どういう状況ですかって? それはですね、


 白雪姫先生が思い切り私を宙にぶん投げた状態とでもいいましょうか。


 つまり私の足は天を向き、頭は地に向いています。


 そこからまた私の体の向きは凄い勢いで元に戻ったかと思うと、


「在原く~ん!」


「はっ!? 天橋立さん!?」


「キャッチヒューマンしーましょっ!」


手は白雪姫先生から離されました。

それはもう、キャッチボールのボールの代わりに人間を使うんじゃないと突っ込みを入れる前に。


「きゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!」


私の体はそのまま落下していきます。下では焦った顔の在原会長が見えます。

私が在原会長に近づいた時、在原会長はとっさに銃を捨て私の下に来てくれました。そして、手を伸ばし私を受け止めてくれました。しかし、衝撃が強すぎて私が在原会長に覆いかぶさる形で倒れこんでしまいます。

その拍子に在原会長の頭は地面に打ちつけられました。数秒後地面にはジワリと血が広がります。


「あ、在原会長……」


「僕は大丈夫だっ。天橋立さんは」


「私は大丈夫ですけど! 血がっ!」


 在原会長は私の言葉には首を振り、天を睨みつけます。

 視線の先には完全に悪人面でにやける白雪姫先生。


「使えるもんは何でも使っていかねーとなぁ」


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