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つまらない女だと婚約破棄されましたが、浮気男はこっちから願い下げです〜行き遅れた秀才令嬢は、天才侯爵に溺愛されるようです  作者: 雨野 雫


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23.クリスが語る衝撃の事実


「お父様とお母様が、ジュダスをあなたから横取りすれば認めてやるって、そう言ったから……だから私は好きでもない男に言い寄ったっていうのに……! それなのに、あなたは、望むものを全て手に入れていく……! 許せない、許せない、許せない!!」


 キャシーは大声を上げながら取り乱し、その大きな瞳からはとうとう涙が溢れ出した。彼女のこんな姿は初めて見たが、それよりも今は、彼女の発言で頭がいっぱいだ。


(キャシーがジュダスに言い寄ったのは、ご両親の命令……? 一体どういうことなの……?)


 ミラは激しく困惑したが、隣のクリスは全く動じていない。表情はいつも通りの仏頂面。


「そんな台詞を吐けるのは、お前がミラの努力を知らないからだ」


 冷たく突き放すような彼の言葉に、キャシーはわなわなと震えだす。怒りが爆発し、感情が制御できなくなっているのだろう。彼女は引きつった笑いを浮かべながら、震えた声を出す。


「努力……? 才能のある人間に、才能のない人間の気持ちなんてわかるわけないでしょう!? 努力なんて死ぬほどしたに決まってるじゃない!! でも無理だった! 無理だったのよ……!」


 キャシーはそう言い切ると、「う……ううっ……」と嗚咽を漏らしながらその場に座り込んだ。両手で顔を覆い、ただただ泣いている。


 ミラは思わず彼女に駆け寄ろうとしたが、クリスがそれを制するように腰に回した腕に力を入れたので、彼から抜け出せず不発に終わった。いい加減離して欲しい。


「努力してもどうにもならないことは、世の中に腐る程ある。だが、それを他人のせいにするな」


 一方的に不満をぶつけられたミラだったが、クリスがはっきりと言ってくれてスッキリした。


 しかし、泣いている女性にド正論とは、彼にキャシーを慰めるつもりはないようだ。やはりこの人は、一度敵とみなした相手にはとことん厳しい。


「己の現状を変えたいなら、まずは自分の両親と縁を切ることだな」


「え……?」


 クリスの言葉に、キャシーはようやく顔を上げた。しかし、何を言われているのか理解できないというように首を傾げている。正直、ミラもクリスが何を言わんとしているのかわからなかった。


 そして彼は、衝撃の事実を口にする。


「お前の家……ウォルシュ伯爵家は、そう遠くないうちに取り潰しになる」


「ええっ!?」


「それは……どういうことですの……?」


 ミラもキャシーも目を大きく見開き、驚きの視線をクリスに向けると、彼はそこから全ての裏事情を話してくれた。



* * *



 キャシーの生家であるウォルシュ伯爵家は、昔から陸路での運輸業を盛んに行っていた。近年は他国との貿易業も始め、かなりの利益が出ているそうだ。


 事実、ウォルシュ伯爵や伯爵夫人の羽振りがここ最近で相当良くなったというのは、社交界に身を置く者なら皆が知るところだった。


 しかし、ウォルシュ伯爵家の評判は、一部の高位貴族にとってはあまり良いものではなかった。ウォルシュ伯爵が金をちらつかせ、自分より地位の高い貴族たちへ取り入ろうと必死だったからだ。


 また、運輸業を営む(かたわ)ら、裏で麻薬や武器の密売を行っているのではないかという噂も立っていた。ここ最近の羽振りの良さは、それらの違法な利益によるものではないかとも言われていたが、決定的な証拠が見つからず、王家も手を出せなかったそうだ。


 そんな折、ミラが婚約者をキャシーに奪われるという事案が発生した。


 クリスはシリウスからウォルシュ伯爵家の悪評を聞いていたのもあり、その件を不審に思ったそうだ。


 まず、高位貴族に取り入ろうとしていたウォルシュ伯爵が、自分の娘を同格の伯爵家に嫁がせようとした点。


 キャシーが勝手にジュダスと婚約したなら、普通はウォルシュ伯爵が黙ってはいないだろう。しかしそうはならなかったところから察するに、伯爵はキャシーとジュダスの仲を容認していたことになる。


 そして、ジュダスの父親であるクウォーク伯爵が、キャシーとの婚約を承認した点。


 ミラとジュダスの婚約は元々、互いの家の利益のための政略的なものだった。しかし、ジュダスの父親は、その関係にヒビを入れてでもキャシーとの婚約を優先させた。息子の暴走を知らなかったとしても、それはおかしな話だ。


 何か裏があると察したクリスは、このことをシリウスに話し、ウォルシュ伯爵家とクウォーク伯爵家の調査を依頼した。


 そしてシリウスが調査を終えた頃、クリスが統治するロイド侯爵領でトラブルが発生した。ちょうど、クリスが過労で倒れる少し前のことだ。


 トラブルというのは、領地内で違法麻薬の売買が行われていたというものだった。クリスが麻薬の出所を辿ったところ、ウォルシュ伯爵家にたどり着いたという。どうやら彼は捜査能力もピカイチらしい。


 その頑張りのせいでクリスは倒れたのだが、彼が倒れた日にシリウスが訪ねてきたのは、ウォルシュ伯爵家とクウォーク伯爵家に関する調査結果を伝えるためだったそうだ。


 その後、回復したクリスの元に再びシリウスが訪れ、彼らは互いの調査結果を報告しあった。


 シリウスからの話はこうだ。


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