資格商法
副業系迷惑メールの多さに腹を立てまして。
二十年ほど前になるのかな、いわゆる「在宅ワーク」「SOHO」という言葉がやたらもてはやされるようになった、実際のところは既に下降が加速していた頃。
ちょうどその頃に在宅ワーカーだったわたしがいうのもなんだけど(自虐
どこで漏れるのか、やたら「在宅ワーク商法」「資格商法」の営業電話がかかってくる時期があった。
厳選していたけれど、ネットを介した営業活動をしていたせいもあるのかもしれない。当時から既にこのテの迷惑メールもちらほらあった、明らかに変だから読まなかったけど。それでもまだ不審電話の方が圧倒的に多かった時代である。
ごく普通に、単純に考えてみてほしい。なぜ「在宅の仕事を得るためにこちらがカネを払わねばならんのか」と。そこの団体への登録料とか斡旋料とか情報料、教材費。名目は異なれど、こちらがカネを出さねば仕事をやらんという。
稼ぐべく仕事を探している人にカネを出せとはこれいかに。
当時わたしが登録していたエージェントは、どこもきちんとしていた。調べてから登録したしね。当然ながら、自身のネットワーク周りと報酬の受け取り都合でネットバンクに口座を開く手間があった以外、負担はなかった。
そこを突っ込むと通話が切れる。だから最初に言ったじゃないか、「登録しているところはある」と。勝手に登録箇所を自分たちと同じだと判断してカモ認定したのはそっちだ。
「在宅ワーク」の情報商材という怪しげな電話も多かった。
当時ですでにネットを介した営業活動が可能であったのに、なんでそんなもんを買う必要が。
「そんなに良いものなら、ご自身でされた方がよろしいのでは?」と尋ねれば、謎の沈黙が。こちらにもその商材を売れというなら、その時点でマルチだし?
引っ掛かるような物言いをする方が悪いと思う。
わたしは悪徳商法に引っ掛からないタイプではない。これははっきり言える。
タイプは違えど悪いのに引っ掛かったことがあるからだ。このときは本職の人に助けてもらったので、詳細は表に出さない。
あの経験があるから、引っ掛かりにくくなったとは思われる。でも引っ掛からない自信はない。しないに越したことはない苦い経験である。
そんな中、また在宅ワーク商法の亜種、資格商法の営業電話が。
なんかその頃流行っていたみたいで。
「一般旅行業務取扱主任者の資格を、うちの教材で取りませんか?」
二〇〇五年四月の旅行業法改正により、総合旅行業務取扱管理者へ改称されているが、ここは当時のままで記載する。
「ご自宅で旅行会社ができますよー」
「一般旅行業務取扱主任者って、国内だけですよね」
海外旅行もそれ用の資格者が必要である。国内のものより難しいから、大手旅行代理店の支店長クラスでも持っていない人がいたくらいだ。
全支店長が持っているわけではないから、契約社員でも持っている人がいればとてもとても重宝される。海外旅行の方なら特に。
「えっ」
「旅程管理主任者はどーすんですか」
添乗員さんのことである。こちらも資格がないとできない仕事である。友達同士で出掛けてスケジュール管理するのとはわけが違うのだ。
「えっ」
「旅行業務取扱主任者では添乗できませんよね。ついてきてほしいと言われたらどうするんですか。店を開いて斡旋だけしてあとは客に丸投げですか。なんか無責任ですよねえ」
元旅行代理店バイトである、無駄に知識があった。ごめんね電話の人。
「『在宅ワーク』で旅行業って、無理があると思いません?」
「…………」
黙られてしまった。ここまで言われるとは思わなかったんだろうな。
でもこれくらい言わないと諦めてくれないだろうし。
「……もしかして、資格をお持ちで?」
「いいえ、持っていません。必要としていないので」
だったらなんでこんなに詳しいのかと思われていそうだ。
たまたまですよ、たまたま。
この後、あやしげな電話は激減する。
子ども向け英会話のDVD商材のときといい、どこでどういう情報がやりとりされているのやら。まったく。
とはいえ、まったくないわけではないので、撃退文句を少々。
まずは、きっぱりはっきり「必要ない」旨を述べる。曖昧な表現はNG。
たいてい引き下がってくるので、次に淡々と言うことは。
「特定商取引法の一七条はご存知ないですか」
「再勧誘は禁止されていますよね」
これでまだ続けようとする、あるいは日を改めてかけてくるようであれば、然るべきところへ問答無用で通報してやればよい。そのためには、面倒でも相手の名前を押さえておかねばならないが。偽名の可能性も高いけれど。
相手の名乗り(企業名、担当者名)、かけてきた電話番号、営業内容の概要を添えて。




