三回くらい聞き直した
数年前に父親が急性膵炎で総合病院へ担ぎ込まれた。その半月くらい前に脳出血で運ばれたばかりだったのに、災難続きである。気の毒に。
このとき入院したのは消化器内科であったはずが、なぜか「各種検査の結果、気になるところがあるから」と退院後に呼吸器内科へ送り込まれた。
いつのまにそんなところのCT撮ったんだい。とはいえ、当時CTとMRは「なんでこんなに」と思うくらい撮られた記憶がある。
これのおかげで消化器内科が終わってからも、呼吸器内科とお付き合いすることになる。消化器内科のにーさんが気になるところだろうが、実際診るのは呼吸器内科のにーさんだ。
そしてその結果を心待ちにする、かかりつけ医。検査の半年くらい前から、行く度に日程の確認をされる。毎回普通に答えていて、看護師さんに感心されている。
感心もなにも怒ることでないし、ここは患者さんが多いから把握しきるのも大変だろうと思うし、そもそも先生がじーさんだし。確認だいじ。
そんなわけで今年も年に一度のCTを撮りに行き、結果を聞きに行ってきたわけだが。
「これ以上の変化は年齢的にも考えづらいので、呼吸器内科は卒業しましょう」
へ?
「そつぎょう……? ですか?」
「はい」
「そつぎょう」
我ながら食いつくとこがなんか違うなと頭の片隅で思いつつ、反芻してしまう。
先生(わかい)の語彙力、仕事して。
ここで画像を見ながら細かい諸々の説明を聴き、必要なところはメモをして。
いつもならここで流れるように検査結果を出力した用紙を受けとるところが「卒業」の単語に気を取られてすっかり抜け落ちていた。
「――ということで、これをもって卒業ということで」
「そつぎょう……ですか」
「ええ、卒業です」
まだ言うんかい。←おまえもだよ
医師の向こうにいた文書担当のお姉さん、体が小刻みに震えていなかったか。そっちはちゃんと向いていないから視界のはしっこにちらっと見えただけだけど。
「あ。」
検査結果をもらっていないことに気づいたのは、診察室を出て内科の総合待合に着いてからだった。今戻っても次の人が入ってるな、きっと。
かかりつけ医に提出する約束になっていたのに。
そしてかかりつけ医。
「すみません、『卒業』に気を取られて検査結果を受け取ってくるの忘れました」
自己申告した。
「気持ちはわかります」看護師さんにぷるぷるしながら慰められた。
口頭で説明もしてきたけれど、たぶんきちんとデータが欲しいだろうからクリニックから問い合わせてくれるらしい。お手数おかけします……。
これたぶん、後期高齢者検診はかかりつけ医で受けてもらった方がよさそうだな。これまではめんどくさがって逃げてたみたいだけど(わからんでもない)、呼吸器内科のにーさんが「検診受けてね」と言っていたし。
それにしても語彙力……。自分もどうにかしないとなあ。




