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学生んときの思い出 パスポート

「さっちゃん、さっちゃん、パスポートもってる?」


ある日のバイト中、社員さんから肩を叩かれた。

高校の部活絡みで海外へ行ったから、期限はとっくに切れているが持ってはいる。

その旨伝えれば「持ってるなら更新すぐできるよね! 韓国行かない? 安くするよ!」と両手を握られた。

あなたは催事の人ですか?←当時からすでに催事の人によく捕まっていた


意味がわからない。


よくよく話を聞いてみれば、海外パックツアーの最小催行人数が足りない。条件が満たなければ、他に申し込み者があろうと企画が流れてしまう。

で、ちょうど良さそうのが目に留まって声をかけたようだ。


が。


「本籍が○○県(遠い)なもので、戸籍とるのに日にちがかかるんすわ」

「えぇーーーーっっ!」

「そこをなんとか!」

「なりませんねぇ……」


当時は必要情報を記載した依頼書をつくって郵便小為替と返信用封筒を入れて送れば、おつりがあればそれも郵便小為替で書類とともに返送してもらえた。

今は小為替の発行も換金も手数料が格段に上がってるから、どうなっているかわからない。案外変わっていないかもしれない。役所は換金しなくても少額のものはおつりで出ていくから。


揉めているように見えたらしく、支店に戻ってきた営業さんに見咎められる。

「ちょっと! 三泊四日もさっちゃんいなくなったら困るんですけど!」


――自分達は交代で連休とってるのに?


釈然としないまま勝手に向こうで話が進んでいく。どっちにしてもそのツアーの締切日にはパスポートの更新が間に合わないから、この話はなかったことになった。


こんなやりとりが数ヶ月おきに繰り返されることとなる。やけに韓国が多かった。韓流が流行ってたんだっけ? あまり興味なかったから気にしてなかったけど。

うっかり更新していたら送り込まれていたかもしれない。


「どうして更新しといてくれないのーーー!」

「身分証なら学生証と免許証(原付)で間に合ってるから……」


手続きするのがめんどくさかっただけなのは、ナイショね。


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