学生んときの思い出 貢物
昔から食べ物には弱い。
「ワープロ清書」回で行っていた旅行代理店のバイト。
少し前に実家の所用で近くを通ったら店舗がなくなっていた。けっこう大きな支店だったんだけどな、ちょう大口の契約とかもあったし。記憶にある数字だけでも諭吉三桁人とかのがゴロゴロあった。
書類が目の前を通っていくだけだから、わたしには実感ないけど(そらそーだ
そんな契約をとるための資料として、いかに見やすく仕上げるか。それがわたしの当時の仕事であった。
だって原稿ごっちゃりしてるから……。字、読めないし。
一部の社員さんは添乗員もしていた。
するとなにが起きるか。
職場用とは別に、お土産が用意されている。
「これあげる! さっちゃんには仕事してもらわないといけないからー!」
それは餌付けなのか買収なのか。
札○タイムズスクエアに○の月、メイプルリーフクッキーやらマカダミアチョコ。この辺の定番品は飽きるほど食べた。
この中で現在食べられるのはマカダミアチョコくらいだから、あの頃飽きるほど食べられてよかったのかもしれない。
変わったところでは某国のお土産、天津甘栗チョコ。あれはかなり油っこくて、支店のみんなで食べようとしたけど無理だった。活用法はなかった。
コーヒーに放り込んでみたら、油の膜ができたのだ。飲めねえー。
それとは別に、大口顧客を受け入れてくれる施設のあちこちから支店に届くいろいろなものを、社員さんより多く持たされたり。
「あんたんとこ、一緒に住んでるの何人家族~?」と課長に訊かれて「わたしを含めて四人です~」と答えたばかりに魚の干物(でかい)が四枚きたりするわけで。
支店には常に全員が居るわけではないし(だいたい半分ずつがシフト制)、冷蔵庫も小さなものである。日保ちしないもんね。
ありがたく持ち帰り、とてもおいしくいただいた。
氷見の魚うめえーー!
箱で届くカステラとか、りんご、みかん、謎のパイナップル(理由は知ってるけど)、あとなんだっけ。一部は来客にお出ししていた、社員さんが。
パイナップルは支店の包丁(ペティナイフ)では解体できないからと、なぜか箱ごとくれた。いやまて三玉入ってるやん……。
実は三箱あった。あとのは何処へいったのか。謎である。
元バイトの人が知人だったので、家も知ってるし一玉押し付けに行ってきたぞ。
「あたし、(バイトしてる間に)こんなの貰ったことないんだけど」なんでやー。
ごはんもたくさんご馳走になった。
「あんたには仕事をしてもらわないといかんから」よく言われたなあ、みんなに。
絶対に逃がすものかというナニかを感じた。
というか、営業さんの無茶ぶりに牽制をかけるべく、役職つきの方々が連れ出してくれていたものと思われる。ごはんのあとは毎回、支店に戻ることは許されず、そのまま帰された。翌日の拘束具合が増すんだな、これが。
しかし思えばあれ、役職のかたのポケットマネー……。
ちゃんこ屋さんとか焼鳥屋さんとか、彼らのお勧めのところが多かった。
でも異様な光景よ。明らかに役職ぽい背広姿のイケオジたちに混ざる小娘ひとり。
土曜日は午前中だけ店舗が営業していて、残業組(わたしはこちら)が昼食に出かけるのだけど、このときも半分くらいご馳走になっていた。会社員と同等の支払いをバイトにさせるのは酷だからと説明された。一応やりくりしてはいたのだけど。
突然「今日は、鰻の日ー!」という号令とともに拉致されたりとかもしていたから、ありがたかったのはたしかである。一食二五〇〇円とか,けっこうきつい。
わたしよりも激務だった契約社員さん(の一部)が、当時の支店長に価格表のないお寿司屋さんへ連れていってもらったのは知っている。ひとりあたり諭吉が十人単位で旅立っていくようなところ。最低一五は要るときいたような?
慰労の仕方がすげえなと思いながら見送った。
「さっちゃんも連れていってもらえばよかったのに」と言われたが「無理っすー」としか返せない。
いわゆる高級ネタを、ノドがあまり受け付けてくれないから。トロ、いくら、うに、かにみそ、あわび、他多数。食べられないことはないのだけど、食材と職人さんに失礼だからね。
安上がりな女とお呼びっ。しくしく。
自社の仕事帰りに打ち合わせにやって来る取引先の営業さんがいたりして、この人が差し入れを持ってきてくださるからご相伴にあずかったり。よくわからない話を理解できないまま(わたしは理解する必要がないから)同席してもぐもぐする謎空間だった。たこ焼きおいしかったです。
ここでよく言われたのは「もっと食べなさい」なぜ。
この席では知らぬ間に「この子のおかげで仕事が捗って」となっていた。
何度でもいう。わたしは仕事が早い人なのではなく入力が速いだけの人である。だって内容には関知しないもの。
文章がおかしいところと計算間違いを勝手に直したことはあるけど。
ここのバイト生活、コンビニのときと同じ大問題があって。
ふ と る ! !
課長も言っていた「俺、この支店来てから○年で十ンキロ太ったよ(笑」。
それより短期で育ちましたがわたし。怖。




