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つい、見てしまう

夕方。やけに近いところから「ばーかばーかばーかばーかばーかばーか!」と聞こえた。ベランダを覗いたらすぐそこの電線にからすがとまっていた。こちら側は珍しいな(たいていの場合、反対側の電線にいる

「やあ、ひさしぶりー。元気ー?」

ガラリとガラス戸を開けて顔を出しながら声をかけたらめちゃくちゃ驚かれて、慌てふためいた様子で飛んでいかれてしまった。なぜ。


まあいいや。



電車に乗っているとき、見るとはなしに車内に目をやると、うっかり気づいてしまうことが多い。その日もそうだった。

未だに電車の中でカオ描いてる人いるんだ……。別の路線の女性専用車両では居ると聞いたことがあるのだけど、この路線でもいることに驚いた(三路線目

向かいに座っていた老婦人なんか、気になって仕方なかったようで文字通りガン見していたしね。その気持ちはわかる。隣でなければわたしも見た。

でもけっこう揺れるんだわこの路線。目元やられてるとこちらが落ち着かない。刺さるんでないかと気が気でないというか。でも慣れているのだろうねこの人、手を休めることなく続けていく。


さっきから肘が脇に刺さってるんですけど(いたい


なんか途中から、バランスが取りたかったのか人のこと肘支えにしてきたもんな。

わたしの方が先に降りることになったから、予備動作なしで立ち上がったら驚いていたようだった。いや驚くのこっちだから。


乗り換えた電車では、視界の端でゆれる縦ロール。


ん?

縦ロール?


思わず顔ごと向いた。縦ロールだ。おにーさんの、縦ロール。

電車の揺れにあわせて、ゆらゆらしている。

どういうこっちゃ?


数駅通りすぎるまで、ついつい眺めていたら、おにーさんの向きが変わった。

あれ、反対側はほぐれてるぞ。普通にウェーブヘアだ。

どういうこっちゃ?


もしかして:ほぐし忘れ


学校着くまでに気づくかなあ。

そんなことを思いながら、先へ向かうべくわたしは電車を降りた。


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