塩レモンを仕込む
生協のカタログを見ていたら、国産レモンの大袋企画を見つけた。おそらくキズや擦れができたもの。規格外だから、やたら安い。
普段のわたしならそのままスルーするのだが、なぜかこのときは、何年かぶりに塩レモンを仕込もうと思い立ってしまった。前回仕込んだのはいつだっけ? と記録を探してみたが、なぜかどこにもない。
おかしいな、ここ十五年の間に一度は作ったはずなのに。記憶にはあるのに、記録がない。こんなんあり?
減農薬栽培、ノーワックスの国産レモン。じゅるり。
翌週届いてびっくり。青い。
そういえば、そうだった。
今の時期のレモンはまだ黄色くなかったんだった。青いレモンのほうがレモンの風味が強いんだったかな。冬真っ盛りな十二月頃から春にかけてのレモンが黄色いんだったっけ。
とりあえず、緑色の塩レモンは青柚子胡椒を連想して脳と口が混乱するだろうから、レモンには黄色くなっていただこう。
手っ取り早く、カビと乾燥に気をつけて、直射日光のあたらない明るいところで光に当てる。温度が高くならないところを選ばないといけないのがアレだが、冷蔵庫の野菜室で黄変するのを待っていたらたぶん春以降になる。外国産のレモンが何ヶ月もかけて日本に到着したときには黄色くなっているのと原理は同じ。原産地を出るときは青かったのだ、彼らも。
待つこと二週間と少々。思ったより長くかかったね。緑色のまだら模様は残るもののけっこうきれいに黄色くなった。
レモンは乾燥に弱いからどうなることかと思ったが、手にした感触では大丈夫。
塩レモンにしない分は洗わずにラップをぴったり巻いて野菜室へ。
使うレモンの重量を量っておく。今回は五〇〇グラムほど。
レモンに合わせて一リットルの保存瓶を熱湯消毒し、水気を切りつつしっかり乾燥させる。
五〇〇ミリリットルの瓶のほうが、扱いは楽かもしれない。
軽く水洗いして水気を適当に切ったら、粗塩でレモンを全体的にこすり洗いする。
痛い痛い痛い痛い。
粗塩でこすれるのと、既にある手荒れに塩がしみるのとでダブルパンチをくらう。でもこれサボりたくないんだよね、皮ごと漬けるから。少々べそをかきながらがんばる。
次に鍋に湯を沸かしながら、レモン表面の塩を洗い流しておく。ボウルに冷水を用意しておき、レモンを一〇から一五秒ほど鍋の熱湯にくぐらせて、水につけ冷ます。湯洗い兼消毒。
冷ましたレモンの水気をよく拭いて、両端を少し切り落とし、わたしはレモンを八等分のくし切りにする。輪切りやみじん切り、ハンドブレンダーにかけてペースト状にするレシピもある。本場のモロッコではまるごと漬けるみたいだ。
くし切りは、前回は縦方向に切ったけれど、今回は横方向で。デザートなどに出てくるカットオレンジの切り方といえば分かりやすいだろうか。なぜ変えたかといえば、そのほうが早く水分が出てくるから。
ぱんっぱんに実が張っていて、とてもジューシー、かつ、やたら皮の薄いレモンだった。レモンピール作るには薄すぎるんだなあ、これが。
今回は二〇パーセントの塩で漬け込むことにする。レシピによって、一〇パーセントからレモンと同量と幅広い。前回何パーセントで漬けたのか、全然思い出せないのだが。たぶんわたしのことだから今回と同じ二〇パーセントで漬けたのではないかと振り返る。きっとそう。
塩分濃度が高いほうが保存性がいいのはわかっているけれど、あまり多くてもねえ。
レモンと塩を交互に瓶に詰めていく。最上面に塩がくるようにといわれても、どうせすぐ振るからなあ……と適当に、とりあえずレモンに塩がまぶせればいいやという感じで。
あとは冷蔵庫ではない冷暗所で保管し、レモンから出た水分で塩の濃度にムラができるから適度に瓶を振って均一にしつつ、塩を溶かしつつ、レモンがカビないよう気を付けつつ、ひと月ほど熟成させる。レモンが細かくなればなるほど早く食べられるけれど、待つのも楽しみのひとつ。
レモン汁にとろみがつくのが目安とか。その後は冷蔵庫に入れておこう。浸透圧で水分出きれば嵩も減るから、五〇〇ミリリットルの保存瓶に入れ替えられるだろうし。
保存期間は一年ほどとかいわれても、大抵残ってるしなあ。普通に二、三年は食べてた覚えがある。
ドレッシングとか、唐揚げの下味とか、ソース類とか。使い途は割と多い。夏には経口補水液の材料にもできるし。
仕込み時期が予定とずれたこともあっていつ使えるようになるかさっぱりわからないが、出来上がりが楽しみである。




