にんにくしょうゆ
結婚してから知った調味料に、にんにくしょうゆがある。
義母から教えてもらったこの自家製調味料のなにがすごいって、調理中と出来上がった料理のにんにく風味はすごいのに、食べたあとのにおいが少ないのである。
なんなら、よく漬かったにんにくをそのまま食べても平気。
いっとき料理研究家の人たちが紹介したことで、にんにくしょうゆ自体は割と世に広まったと思う。しかしこのレシピはだいたいが、にんにくをしょうゆに漬けただけのものである。おそらく食べたあとのにおいは普通ににんにくを食べたあとのそれと同等となるだろう。
では、義母から教えてもらったものはなぜにおわないのだろうか?
「酢」が入るのだ。
にんにくを酢に漬けて作るにんにく酢を作ったことがあるかたならわかると思うが、にんにくの成分と酢の成分とが反応して変性し、それが落ち着くとにんにくのにおいが軽減される。それが、にんにくしょうゆでも起きるという寸法である。
しかし。
使っている材料は同じなのに、なぜかわたしが作ると義母お手製のそれとはなにかが違う出来になる。意味がわからない。
教えてもらったように仕込んでいるのに、義母が作ったもののほうが断然おいしいのだ。張り合うつもりはないのだが、なんだか悔しい。
作り方は簡単だ。
保存瓶に皮を剥いて根本を落としたにんにくを詰めて、三分の一~半分弱くらい酢を入れてから、瓶の肩までしょうゆを注いで蓋をする。
酢とにんにくの反応でガスが出るため、密封はしない。適宜ガスが抜ける保存瓶ならその限りではない。ねじ蓋の瓶で密封した場合、瓶内の圧力が高まって蓋が飛ぶか瓶が割れるかするから注意が必要である。
ちなみに金属蓋は酢で腐食するから使わないこと。錆が液中に落ちた日には目も当てられない。
しょうゆ自体は数日で使えるが、にんにくは中心までしょうゆ色に染まるまで待たないと、におわないにんにくにならない。時折観察してみると、にんにくが青緑色に変色していることがある。これは酢と反応している最中の色なので、腐ったり傷んだりしたものと勘違いしてはいけない。
しょうゆが減ってきたら注ぎ足していけばいいと言われたものの、にんにく風味が薄まる気がしてやってみたことはない。もしかしたら、そこまで減る前に継ぎ足すのが正解なのかもしれない。
コロナ禍あたりからにんにくの価格が上がったきり戻ってこなくて、しばらく作るのをやめていたのだが。なぜか激安の県内産にんにく、しかも新ものが手に入ってしまったので、数年ぶりに漬けてみている。普段行かないところはこういうことがあって面白い。
しょうゆはもう使える段階にあるものの、にんにくは早くて数ヶ月先。待つのは慣れていても落ち着かない。やっぱり毎年漬けておかないと、ほしいときに使えないのだなあ。




