ケイちゃんを作ろう 2
タイミングというものはおそろしい。うっかり入手してしまったものがある。
その名を郡上味噌という。
郡上味噌は、岐阜県の郡上地方で作られている独特の味噌である。もともとは米の裏作で栽培される大豆や大麦を使い、家庭で仕込まれていた地味噌なのだという。ということは、豆味噌と麦味噌のいいとこ取りをしている味噌なのかな。なんというハイブリッド味噌。
しかも、赤味噌でも白味噌でもないのだとか。だからといって、合わせ味噌でもないしなあ。
分類上は麦味噌に相当するようだ。
そのようなものが手に入ってしまったならばこれはもう、ケイちゃんを作るしかない。唐突に、謎の使命感に燃えだした。
たまたまその日行ったスーパーで、なぜか一度に揃ってしまったのだ。
鶏のもも、むね、肩(小肉)、首(せせり)。
他のスーパーでは小肉とせせりはまず手に入らない。どうも取り扱いがないようなのだ。こちらのスーパーでも、小肉は普段だと味噌漬けのものしか見ない。なのになぜか、味付け等のない普通のお肉として並んでいた。
買うよね。
ホイホイとかごへ入れていき、ふと気がつくと「鶏肉一キロ……?」となった。
まとめて漬けておいて冷凍するしかない。
なのに。
誰だもも肉使っちゃったのはーーーー!!!!
そんなわけであらためて、鶏ももだけを買いに行く。
前日に鶏肉を大量に買っていったのに、また鶏肉。どんだけ鶏好きなのかと思われても不思議はない。
小肉とせせりをそれぞれ半分にしたものを大きさの基準として、ももとむねを削ぎ切りにしていく。
それぞれの部位を、おおむね半分ずつに分けて保存袋へ入れる。
ももとむねだけでは物足りなかったから、他の部位も入れたかったのだ。大量になるはずである。
調味料はボウルに合わせることにする。郡上味噌をベースに、さとう、酒、みりん、しょうゆと、すり下ろしにんにくと生姜、そして豆板醤。「ケイちゃんを作ろう」回ではさとうからしょうゆまでをすべて同量にして漬けたが、今回は味噌をベースにするためにだいたい減量した。豆板醤だけは「ちょっと多いかな?」というくらい入れているのだが、味見をしてもあまりよくわからなかった。加熱するとまた変わるし、とりあえずこのままで。
このとき思ったのは「味噌の味がまるい」。赤味噌のようなきつさもなければ、白味噌のような甘さもない。合わせ調味料にするのに「なんとなく」でさとうを減らしたのは正解だったようだ。
保存袋の鶏肉へ均等に加えたらよく揉み込んでから空気を抜いて密封し、片方は冷蔵庫へ、もう片方は冷凍庫へ収納する。やだ、作りおき下味冷凍できちゃった。
半日ほど漬けておいたものを、焼いていく。
野菜はキャベツを主体に玉ねぎ、人参、しいたけとシンプルにいく。このためだけに特売でもないのにキャベツを買った。少し価格が落ち着いてくれてきていてよかった。
「うん、知ってる味がする」
「食べたことのある味がする」
そうだろう、そうだろう。
やっぱり買っていたケイちゃんの味付け肉(味噌味)は郡上味噌がベースだったのだな。納得。
今回もケイちゃんはきれいさっぱり平らげられたのだが、前回ほど水気がでなかったのが謎だったりする。キャベツから水が出なかったからかもしれない。最近の寒玉キャベツが美味である。
日をあらためて、味噌汁にしてみた。
具は大根、にんじん、白菜、ねぎ。
なんとなく信州味噌にも似て、でもなんだか違う。不思議なおいしさの味噌汁になった。
味噌煮込みとは違う感じで、濃いめに作った味噌汁にうどんを入れてもおいしそうだなと思ったのだった。
入手できたものは原材料に酒精が使われていたが、使われていないものもある。
メーカーによっては米麹を使っているものもあるため、選ぶときは要注意。




