頼まれるとない、あるある
我が家において、アップルパイ漂流は夫の仕事である。
わたしが一般的なアップルパイを食べられなくなったからね。仕方がない。
とりあえず、大手製パンメーカーのアップルパイはお気に入りのようで、だいたいどちらかのメーカーのものが常備してある。
ときどき近所のスーパーのパン屋さん製アップルパイが求められる。
ケーキ屋さんのアップルパイを求めてこないのは、忖度か、忖度なのか。
まあホールのアップルパイは見れば嬉々として食べるけれど、食べきれないことと諸事情によるげふんげふんで躊躇するのだろう。財布事情もある。
材料費で驚いていたしな。知るってだいじ。
このところ、パン屋さんのアップルパイを所望されてパン屋さん売場とスーパーのパンコーナーに設置されているパン屋さんの売場とをチェックしているのだが、まったく姿が見当たらない。
他のパン屋さんの品を提案してみたのだが「そこまでしなくていい」ということは、意地でもこのパン屋さんのアップルパイがいい、ということか。
所望される前はいっぱいあったんだけど、アップルパイに限らずパイそのものが。
さつまいものパイとあんこのパイ。どちらも気になっていたのだが食べられないから手が出せない。
いや、泣けば食べられる。
「それ、食べられるっていわないから」
子に叱られた。
パン屋さんの品揃えを見ていると、どうも現在はクルンジというパンに力をいれているようだ。簡単に表現すると、平焼きしたクロワッサンである。韓国で流行っているスイーツなのだとか。
その関係なのか、クロワッサンも以前より数が多い。メロンパンにしたクロワッサンなんかもある。
こちらでデニッシュ系の生地が多いからパイまでまわらないのかな。個人的な予想では生地は仕入れ品だと思っているけれど。
さすがに店ではやっていられないだろう、バターの折り込み。温度高くて。
かれこれ一週間以上、毎日ではないがパン屋で「アップルパイないなあ」と思っている。そろそろショッピングモール内のパン屋さんまで遠征した方がよいのではなかろうか、という気もしている。
もしかして、夫ではなくわたしが漂流しているのではないだろうか。
食べられないのに。
しかし夫のアップルパイより先に、わたしが食べられるパリジャン(フランスパン)をはっけんするという快挙が果たされた。通える範囲にあったんじゃん、食べられるパン。
……フランスパンしかないけどな。
パリジャンは、フランスパンの中ではいちばん長太いパンである。次がバゲットとバタール(この二種類は生地の量が同じ。成形が違うだけ)かな。
子「食べてよし、殴ってよし、撒いてよし、消してよし」
途中のふたつはSNSでみたな。走り去ろうとするバスのドア開閉ボタンにフランスパンで正拳突きして開けた老マダムと、喧嘩中のカップルの女性が男性をフランスパンで滅多打ちにしてたのと、池の魚にちぎっては投げ、ちぎっては投げしていた幼女と、なんか情報量の多い話が流れていた。




