本を求めて
三千里をいく必要もなく、十キロメートル弱を普通にバスに乗って。
旅ですらなかった。
徒歩圏にあった書店は、夏を目前に閉店した。数年前から品揃えがわたしの性癖と合わなくなってきていて、足が遠退いていたから知るのが遅れた。知ったところでどうにかできたわけではないが。
仕方がないので、四キロメートルほど先のショッピングモール内にある書店へ。まだ数回しか行ったことがないが、それなりに好みのものが揃っている。
なのに。
発売日の昼前に到着したそこに、目的の本はなかった。
新刊近辺と、そのレーベルの本が陳列されているところをじっくりまわること四往復。みつからない。同日発売の他の本は並んでいるのに、どういうことだ。
書店に貼り出されている「○月の新刊」な一覧を眺める。なんでか書名がみつからないんですけど。レーベル名のところを三往復。なぜない。
わたしの見たいものしか見ない特殊能力をもつ自慢のローガンで見つからないとは。いったいどうなっているのだ。
そうこうしているうちに予定していたバスに乗り遅れ、次のバスを待つこと二時間。
開き直ってスーパーで買い物をして帰った。
なんか食べて帰ればよかったな、ものすごくお腹が空いていた。
翌日。諦めきれずに五キロメートルほど反対側のショッピングモールへ向かう。
こちらの書店はできた当初から性癖にぶっ刺さる品揃えで、どういう人が運営しているのか、ずっと気になっている。
が、やはり時代の流れには逆らえないのか、しばらくこちら方面へは足が向いていなかった間に、本の売場面積が減っていた。閉店の前兆でなければよいのだが。
そしてすっかり変わったレイアウトに困惑しつつ、うろうろすると、目に留まる表紙。
あったよ。
しかーし。これ展示の一冊しか見当たらなくね?
周囲をよく探す。しかし、やっぱりない。
なくなる前に手にせねば。と展示品をげっと。もしかして、らすいち?
発売翌日よ?
困惑のまま会計をして、ようやく自分のものとなった本をカバンに納める。
他の本は積ん読がほとんどだけど、これは帰ったらすぐ読むんだもんねーーーー。
うきうきと帰宅した。
バスの運ちゃんが、ちょう短髪のサングラスだった。別路線(管轄営業所ちがい)の運ちゃんがスキンヘッドのサングラスだったことを思いだし、ほんのちょっとだけビビったのはナイショである。
営業所が違うから人も違うのに。
え、出張の人、今日帰ってくるって聞いてない。
「言ってなかったっけ?」「今しりました……」
知ってたら○日分の着替えなんか用意しないだろう。多いよって言ってくれればいいのに、持っていくから。これも謎だな。




