発酵具合食べ比べ
「なんか納得がいかない」「やっぱり納得がいかない」回に引き続き、いちご酵母の話である。
何を作るにしても発酵時間が長いから仕込んだら放っておけばよいのだが、時間の逆算が思うようにいかなくてずれ込んでいる。
余裕をもてるビスケットパンにしよう。
酵母版ホットビスケットである。膨らますものがベーキングパウダーか自家製酵母かの違い。とはいえ、このビスケットパンは水分が元種の酵母液と卵という点で、実際はスコーンに近いのかもしれない。
しかしバターの量はスコーンより多い。やっぱりビスケットだ。
佐原文枝さんのレシピ本を久々に取り出す。
自家製酵母に手を出し始めた頃に幾人かのかたのレシピ本を入手したが、わたしは佐原さんのレシピと相性がよいようだ。
酵母(インスタントドライイーストも含む)で作るスコーンもビスケットも、共通しているのは「仕込んだ生地を冷蔵庫でじっくりねかせる(冷蔵発酵)」ということ。最低でも一日以上、理想は三日。だいたい一週間くらいもつ感じと認識している。
オーブンで焼いていた頃は、三日おいたら全量を一気に焼いていた。
しかし、ここでふと思い付いてしまった。
一日、二日、三日と分けて焼いたら、どう違うのか。
やってみましょう。
無水両面焼きグリルの点火後、最弱火の予熱なしでプレートごとセットし、ある程度焼いたところで覆いをする焼き方をする。
先に焼きかためた方が側面の割れができやすいから。なんとなく欲しいのだな、これが。
一日。
覆いをするためにグリルを引くと、あまり膨らんだ感じがしない。覆いをして残り時間焼いたら少し膨らんだ。ビスケットの見た目としてはギリギリ及第点といったところである。
覆いをしたことで上面の焦げは防げるが、プレートへの加熱が弱まることはないから底面が少々コゲる。まあ許容範囲である。香ばしい。
これまで焼いたことのない時間経過のため、やっぱり発酵不足であることは否めない。一応、中まで火は入っているのだが、なんとなく生焼け感がする。
もともと、自家製酵母のものはインスタントドライイーストのものよりじっくり焼いてやらないと火の通りが甘いところがある。
味も香りもいちご。このレシピのビスケットパンってこんなに甘かったっけ?
後味が見事にいちごである。ワッフルのときとほぼ同じ。
二日。
一日と同じ焼き方をする。前日よりも少し膨らみがよいようだ。そして前日よりも側面の割れが大きい。一日でずいぶん発酵が進んだ。
前日よりもグリルの開閉が少なかったせいか、底面のコゲが進んでいた。まあ食べるのだけれども。
いちごの香りと味は激減した。甘味も前日より少ない。発酵するためにさとうを酵母が食べたのはわかるのだが、香りはどこいった?
後味と鼻に抜ける香りは発酵臭。めっちゃ発酵臭……。
少々ツラい。
三日。
焼き方を変えることにする。先に覆いをしておき、ある程度焼けてから覆いを外して表面を焼きかためるかたちに。
覆いを外してみたら、だいぶ膨らんでいる。しかしこのままおいておいたら底面がコゲてしまうので、ひっくり返すことにする。返してからまた覆いをして残り時間を焼く。
焼けてからあらためて表に返してみれば、プレートに接していた部分がコゲていた。これは想定済みだったのだが、プレートに接していなかった部分がふわふわなのは許容できなかった。
あらためて上面を覆いなしで焼く。
側面の割れはほとんどないのだが、膨らみはいちばんある。結局、きれいに焼きたかったらオーブンなのだな、と結論づけた。
焼いている最中から気になった、甘い香りはするのにいちご感がまったくないこと。口に入れてもいちごがいない。甘味は香りの分で認識するものの、いちばん弱い。なにかしらのシロップ(はちみつやメープルシロップなど)が欲しいと思ってもおかしくはない。なくても食べられる味ではある。
そして、発酵臭も少ない。酵母の風味はちゃんとある。むしろちゃんと感じられる。
二日の発酵臭が強すぎたのか、しつこく焼いたから臭いが飛んだのか。
多少好みの差はあるだろうが、三日おいてから焼くのがよさそうである。
酵母液はまだあるからあれこれできるのだけれど、とにかく時間がかかるから、連続記事としてはこれを最終にする。
連続といっても間が開いているのは勘弁してやってください。




