ギャラリーが多い気がする
「どんくさいのは昔から」回でも述べた通り、わたしの運動神経は死んでいる。自分でも嫌になるほどに。
「そこ」の通りは足元が悪いことを、昔から知っていた。年にたった数度のこととはいえ何度も通っていたから。歩道なんてだいたいそんなものである。
街路樹の根が歩道側へ張り切って伸びた結果、アスファルトのあちらこちらが盛り上がって路面がデコボコしている。車道ほどメンテナンスがなされないから仕方がない。
自転車が通行するにも速度は出しにくい。慣れているのかシューッと通っていく車両も多いけれど。よく跳ねているし。いつ見ても活きがいいな、この辺の自転車。
いつものように、適度に下を気にしながら歩いていた、はずだった。
「ぅぉっ、あぶねあぶねあぶねっっ!」
少々柄が悪いが、咄嗟のときに出ることばなどこんなものである。
気をつけて歩いていようが、何かあったり何もなかったりするところで躓いたり引っ掛かったりする。
注意力とは。
なんとか転ぶことは回避できたものの、謎のステップは踏むは、異音が口から出るはの大サービスを展開。
たまたま進行方向が同じなだけだった隣を歩いていた高齢男性にはドン引かれ、向かいから来ていたおそらく大学生とおぼしき青年……口歪んどるぞキミ。
互いに平静を装ってすれ違った後、若者は盛大に肩を震わせていた。声を堪えさせてしまってごめんよ……。存分に笑いたまえ。
むしろ笑ってくれ。
道路の向こう側(見通しがよい)にも人はいたけれど、見なかったことにしよう、うん。
転倒を回避したことに安堵しつつ、久々にサービス精神を発揮したなあなどと見当違いのことを思いながら、その先にある製菓材店(わたしがその買い物しかしないだけで、本業は異なる)へ吸い込まれていくのであった。
ようやくまんじゅうシートをげっとしたから、蒸し饅頭作り放題だぜ。鬼まんじゅうを作るには季節がずれてしまったな。
当然、桜あんもげっと。まだ凍ってるんだけど。
そして店の滞在時間は十二分。トンボ帰りである、駅からバスに乗りたかったから。




