脂だけではなかった
「それはおそらく溶けだした罠」回で牛脂に敗けている説を唱えてみた直後に、否定せざるを得ない事態が発生した。
なにやってんのかって、それは「牛肉を食べた」だ。
ちょうど牛こまが安かったもので……つい……。
同回のラストに書いた、「テールスープちっくに野菜たっぷりと牛こまを煮込んだスープ」を作って食べた。肉だけもとレシピの半量で。
初めのうちは肉の量もレシピに沿っていたのだが、なんとなく次第に用意する肉の量が減っていき、現在は半量。もっと減らしてもいけるとふんでいる。さすがに家族が気づきそうだから現在の量でキープしているが。
にんじん、ほうれん草、ねぎ、もやし、にらと野菜たっぷりだからとても満足感がある。コチュジャンとしょうゆベースのピリ辛甘辛系スープはスープとして食べるだけでなく、ごはんにかければクッパになるし、うどんを煮てもおいしい。
可能な限り脂身の少ないパックを選び、調理中は加熱するごとに浮いてくる脂をひたすらすくい、いつもよりあっさり系に仕上がっていた。家族が気づくくらいの変化だったのに。
その満足感は半日で終わった。
うん、牛乳のときの平均値だね……。
牛の前日に初めて食べた、うまげな(はなまるうどんの系列)のかけうどんの結果がわかる前に、一日後に食べた牛が出てきちゃったよ。
とはいえ違和感なかったから、ここのかけうどんはおっけーだな、たぶん。
雑に結論付けてから、子と考察に入る。
「まさか肉本体もアウトとはねえ、牛」
「年取った雌牛をつぶした肉はそこそこ乳臭かったけど、肉牛の牛は雄牛だから、そこまでニオわないと思うんだが」
「それはそうだけど……乳を飲んで育ったからとか言い出すと、なんかいろいろアウトな気もする」
「乳が『血液主体』と考えたら『そういうこと』だから」
「あ~~~~……」
なるほどな、そういうことか。
母乳成分は血液から作られる。それを飲んで育ったかどうかとかいう以前の話で、性別を問わず同じ成分をもっているわけだ。体液として循環しているのだから、そもそもアウトなものを細胞レベルで含んでいるではないか。
だめなのは脂だけではなかったということ。
そりゃ牛乳が飲めなくなった初期に疑った乳糖不耐症の症状は出ないはずだ、前提条件からして違う。
というか、よくこれまで牛肉食べて平気だったなわたし。無意識に摂取量を減らしていっていたけれど、と今頃気づくニブさではあるが。
ニブいくせに感度が上がってはいないか。
「いつの間にか牛を避けていっている、本能すごい」
それに付き合わされているのに、すごい判定できる君がすごいわ、子。
泣いてもいいですか。
残っていたスープはすべて家族に食べてもらった。
思っていたよりも、精神的ダメージがだいぶでかい。
「でも食べるようしー」が言いづらくなったなあ。
まだあるんだけど牛こま……。ごぼうと炊こうと思って……。
あれ、不定期にとても食べたくなる某店のハンバーグもダメなのでは。もしかしたらいけるかもしれない、いつハラカケする? と言っていたのに、どう頑張っても牛肉から逃れられない。
泣いてもいいですか。




