ケイちゃんを作ろう
岐阜県は奥美濃地方の郷土料理に、ケイちゃん、あるいはケイちゃん焼きというものがある。
ケイちゃんとは、鶏ちゃん。つまり、鶏肉のことだったりする。
味噌だったりしょうゆだったりの漬けだれに肉を漬け込んでおき、たっぷりの野菜と炒めていただく料理。わたしは味噌味がすきだ。
岐阜県に住む親戚さんから味付け肉をいただいたり、生協で味付け肉を購入したりしていたのだけれど、原材料表記にも問題ないはず(めちゃくちゃ確認した)のものですらハラにくるようになっているので、味付け肉を敬遠するようになった。
でも食べたい。だったら作るしかない。
もも肉とむね肉でそれぞれ作ってみたことはあるが、ちょっと物足りない。あれか、市販品は混ざっているのか。よし混ぜてみよう。
と、購入してきたむね肉ともも肉。売場にあった中でも小さめのものを選んではきたが、そろうと多いな。最近は唐揚げでもこんなに作らない。まあいいや。
気持ち小さめに削ぎ切りにした肉を、味噌、酒、みりん、しょうゆ、砂糖、豆板醤、すりおろしたにんにくと生姜に漬け込む。しっかり中まで染み込んでいてほしいから、このまま翌日まで冷蔵庫に入れておく。
短くても三時間くらいはほしいところである。
本物(?)は郡上味噌ではあるが、家にはないので冷蔵庫にある味噌で。今回は合わせ味噌。赤味噌だとちょっと強い気がする。
辛いものが苦手な人は、豆板醤はなくてもよかったりする。食べるときに一味を振ったりしてもよいのだ。
たっぷりの野菜を用意する。
今回はきゃべつを中心として、たまねぎ、にんじん、ピーマン、もやしを使用する。そのときの気分によっては、きのこやじゃがいもを加えたりすることもある。きのこはともかくじゃがいもは邪道といわれる可能性がある。炒めたじゃがいもすきなんだよね。
フライパンにごま油をひいて、漬け込んだ肉を漬け汁とともに入れてじっくり炒める。なんかすでにぐつぐついってる気がするけど気にしないようにする。
火の通りにくい野菜から加えて炒めていく。きゃべつを切りすぎた。山ができている。まだ野菜は全部入っていない。
ここでフライパンにふたをするか、迷いだす。
いや、ここでふたをしたら完全に鍋になる。水気を飛ばしながら炒め(?)ていかないと。ゆっくり上下を返しながら、なんとかきゃべつに火を通していく。
さいごにもやしを投入。
完全に鍋と化した。
「ケイちゃんってさあ、ぐつぐついうんだっけ?」
「いわないね」
「今作ってるのって、ケイちゃんのはずなんだけどね」
「……ぐつぐついってるね……」
味はいいと思うんだよ。
〆にこの炒めだれで焼きうどんという話は最近知ったけど、これにうどん玉いれたら普通に味噌味のうどんだなあ。我が家のケイちゃんはごはんのおかずだけど。
「これだけ汁気があるなら、丼(つゆだく)にしても美味しそうだね」
まさかの方向転換きた。
でも……。
「不可抗力で鍋いっぱいになってるんだけど……」
フライパンといいつつ炒め鍋で作っていたから、二.五リットルくらいある。それが八割九割くらい埋まっているのだ。
通常の盛りで丼にしたら、ケイちゃん余りまくりである。
よし、フライパンごと食卓に出して、各自で取り分けよう。
……なんでなくなったかな?
鶏肉六〇〇グラム弱に野菜が合計一.三キログラムほどあったはずなのだが。




