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104 加賀侵攻準備

天正七年 一月


上杉家の報告を大殿にした所で、返信のように大殿から加賀侵攻の許可が下りた。

近日中に、与力として金森かなもり 長近ながちか様、蜂屋はちや 頼降よりたか様、拝郷はいごう 家嘉いえよし様がやって来るそうだ。




で、北の庄評定の間では、加賀侵攻の作戦会議の真っ最中です。


「冬の間に加賀を侵攻するのが良いでしょう。一向宗と上杉は同盟を結んでおりますので、万が一という事もあります」

「冬の今なら、越後は雪で埋まっている。援軍を出すことは難しいだろうな」


奥村様の言葉に村井むらい 長頼ながよりが同意の声を上げる。

加賀を攻める際の、最大の障害である上杉家に対しては、出来る限りの備えをする。その点において、あの手取川を経験している前田家家中に異論はない。

もちろん、それだけではない。当面の目標である加賀に対しても、高畠たかばたけ 定吉さだよし様が、奥村様に確認する。


「加賀一向衆の戦力は?」

「加賀の動きはバラバラです。集まっても五千に満たないでしょう」

「織田家からの援軍が一万。当家と合わせれば二万にはなります」

「数は十分だな。トシ。そちらの状況はどうなっている?」


加賀侵攻が始まる事を考えて、国境線である手取川流域の調略は進めている。進行状況はおおむね順調だ。


「川向うの豪族からは、こちらに応じる返事を受け取っています」

「ほう。信心篤い加賀の豪族から内応者を出したのか?」


村井様の言葉にうなずく。


「ええ、越前と同じく前田家に仕えれば四公六民を約束しております。さらに、加賀の寺を一乗谷に移送する“徳の高い”作業に従事できる事を追加した所、老若男女こぞって同意してくれました」


その言葉に、評定の間から苦笑が漏れる。

もちろん、その為に一乗谷一向衆からも書状をもらっている。信心篤いからこそ、権威を前に容易に話が通る。

荒子時代にもあったが、末端の農民にとって、ありがたい仏様である事が重要であって、加賀の寺か一乗達の寺かである事はそれほど重要な事ではない。

遠く離れた“権威の高い”二つの寺から別々の事を言われた時に、彼らはどうするか?

四公六民という“より良い方”を選ぶ。

それを抑止する地元の一向宗の坊主は、権力争いでそれどころではない。下手をするとこっち側に煽ってくれるほどだ。

農民達に関しても、きちんと賦役には賃金は払うし、年貢だって安くなる。越前という前例があるのだ。四公六民の約束と、それに伴う越前の復興を前に、加賀の民に懸念はない。

先の手取川で手伝ってもらった豊岡衆のツテを使ってみたが、上杉家の現状とこちらの提示する条件のせいか、態度がすごい友好的だった。


オレの言葉に満足げにうなずくと作戦会議は次の段階へ進む。


「となると、一向宗の取れる手は、籠城しか残っていません」

「こちらの兵糧は?」


殿が聞いて来るが、そちらの準備も万端で問題はない。

肩をすくめて笑って答える。


「今のままでも、兵を年単位で養えます」


というか、例の生産力上昇の件もあるので浪費したいくらいだ。

何せ、来年にも今年と同じだけの年貢が入る計算だ。今年のように民衆から織田家が買い上げる分はないとしても、税収の為に倉を空けなければならないわけだ。


戦国の世で、食料を浪費するために戦争するなんて、オレ達くらいだろうな。


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