02-31 闘技大会本戦 第一回戦
遅くなってすみませんでした m(_ _)m
インターネットがここ二日繋がらないという訳もありまして……
……まぁ、この様な事もありましたが、読者様に楽しんで頂けたら幸いです。
『では、第一回戦の一戦目です! こちらの選手は、三年Aクラスのユーニスさん! 種族はエルフ、水系統の魔法が得意だとの事です』
司会がそう言うと、観客席全体から昨日と同じく大きな歓声が上がる。反対側の出入り口から歩いて来た、金髪の女がユーニスだろう。
『対してこちら、一年Sクラスのアレイシアさん! 種族は吸血鬼で、今年の闘技大会、最年少の出場だ! 右手に構えた奇妙な武器が気になる所です』
その放送を聞き、アレイシアは前へと歩き出す。たまに観客席から聞こえて来る『可愛い!』などといった声を無視しつつ、前方に立つユーニスと向かい合う。
魔法陣が描かれた薄い板を掲げる司会。恐らくそれは、拡声魔法を発動するための物だろう。
『では、闘技大会一戦目……始めぇッ!!』
司会が『始め』と言い終わると同時に、アレイシアはユーニスのすぐ目の前まで迫っていた。そして、右手に持った刀を左側に引く。それを見たユーニスは驚きながらも、攻撃を受け流す様に剣を縦に構える。
キィン!!
居合と同じ形に振られた刀は、勢い良く剣を直撃した。ユーニスの剣はそのままの勢いで弾き飛ばされ、遙か観客席のすぐ手前に刺さる。剣は折れてこそいないものの、刀が当たった部分にヒビが入っていた。
『おぉ? こ、これはどういう事だぁっ!? アレイシア選手、一瞬で距離を詰めてユーニス選手の武器を弾き飛ばしたぁぁっ!?』
観客席にどよめきが走る。観客は皆、目の前で起こった事が信じられないだろう。それは司会も同じなのか、普段よりもだいぶ熱のある実況解説を行う。
茫然と立ち尽くすユーニス。手を伸ばせばアレイシアに届く距離にいるというのに、反撃の一つもしようとしない。この距離で無詠唱魔法を放たれたら、いくらアレイシアでも対応が間に合わないだろう。
そして、誰もがユーニスの戦意喪失を確信したその時———
「っ……!! まだっ! 下級生に負けてたまる物ですかッ!!」
ユーニスは、腰の右側に付けられたポーチから魔導書を取り出し、アレイシアの元から逃げる様に離れ出した。それから一秒も経たずに闘技場の壁付近まで辿り着く。
アレイシアは、それを追いかける事もせずに、じっと相手の動きを待っていた。やはり、自分から攻撃を仕掛けるのはらしくないと思ったからである。
「願いよ届け! 我、微細なる雫が集まりて、球を成さん事を望む! 水球!!」
十を超える水球がユーニスにより放たれる。その数と大きさは、平均をかなり上回る。得意な魔法系統と言うだけの事はあるのか、水球一つ一つの動きは正確にアレイシアを捉えていた。
水球がアレイシアの周囲を回り、軌道を持つ惑星の様な動きになった時、ユーニスはさらに詠唱を重ねる。
「水よ! 鋭利な槍と成りて、敵へと降り注げ! 水槍!!」
「っ!」
アレイシアの周囲を回っていた水球は、突然その場で動きを止め、細く鋭い、氷柱の様な形に変形した。勿論それは、氷などでは無く水なのだが。水だって、速度によれば鉄をも貫く。侮ってはいけない。
いくつもの水槍が、四方八方どころか上方からも降り注ぐ。それはまさに、死角無しの必殺攻撃魔法。
そして遂に、アレイシアの立っている場所に水槍が到達した。
「……!!」
ズシャァァッ!!
水しぶきと共に水槍は元の液体に戻り、闘技場の地面を濡らす。アレイシアが回避した気配は無い。ユーニスは、地面に落ちて柱を作っている水に目を凝らした。
———未だにアレイシアは水の中に居ると思ったユーニスはそのせいか、後ろから近づいて来るアレイシアの存在に全く気付けなかった。
「背後注意よ。一つの事に気を取られて、他の事が散漫になるのは気を付けるべきね」
「……! いつの間に……!?」
アレイシアはユーニスの首に、逆手に持った刀を添える。勿論、峰の方を首に向けて。
……二学年上の生徒に身長が足りないのか、アレイシアは爪先立ちをしている。いい加減、身体年齢を変えられる魔法でも作ってみようかとアレイシアは考えた。
『決まりましたぁっ! 首に武器を密接させられた状態は、行動不能で負けとなります!!』
———ワアアァァァ!!
———パチパチパチパチ!!
その放送で、再び闘技場は歓声と拍手に包まれる。アレイシアは、観客席の方にナディアとオーラスの姿を見つけた。二人とも、嬉しそうな表情でアレイシアに手を振っている。
ふと、そこでアレイシアは、フィアンとシェリアナ、クレアの三人がその場にいない事に気が付いた。まさか、と思い、アレイシアが入場した側の出入口に目を向けると……
「ひゃっ!? 放してっ!!」
「こらっ! 待合室は関係者以外立入り禁止だぞ!?」
「アリア……じゃなくてアレイシアさんは、私達の友達です!!」
「今はさすがに通す訳には……!!」
ナディアの元に居なかった三人が、何故か警備を任されている先生に取り押さえられていた。このままではまずいと、アレイシアは出入り口の方へと駆けて行く。
「三人共! 何やってるの!?」
「アリアに会いたいからに決まってるじゃない!」
「あのねぇ……ほら、もう私は来たから」
今まで良く呆れられて来たアレイシアが、珍しく三人に呆れた瞬間であった。
警備の人から解放された三人は、若干駆け足気味で観客席の方へと戻って行く。そしてアレイシアはというと、用事があるとクレアに伝え、ユーニスがいる筈の反対側の出入り口へと向かって行った。向かい合う二つの出入り口と待合室は、観客席の下を通る長い廊下で繋がっているため、アレイシアはそこを通って行く事にする。
アレイシアが待合室に着くと、丁度ユーニスが待合室から出て行く所であった。アレイシアはユーニスを呼び止めると、すぐにその隣に並ぶ。
「えーと……アレイシアちゃん、だっけ?」
「そうよ。ちゃん言うなって……呼び捨てで良いわ。貴女の剣、ヒビが入ってるでしょ?」
「……うん。これ、学園に入学する前から使ってたから、そろそろ新しいのに変えなきゃって思ってたし」
そう言って、ユーニスはどこか遠い目をする。何かしらの思い出があるのかもしれない。その様子にアレイシアは、胸が痛むのを感じた。
「ごめんね……そうだ。この剣、私に貸してくれる?」
「え……?」
「なんとか直してみるわ。寮の番号教えてくれれば持って行くし」
「いや、そんな……迷惑だし……」
「私が壊さなければ、あと数年は使えたと思うけど?」
迷っている様子のユーニスに、アレイシアは追い討ちをかける様に言う。そこで決心がついたのか、腰に付けた剣を外してアレイシアに手渡した。
「……ありがと。寮の番号はBの三一七よ」
「うん。じゃ、またね」
アレイシアはそう言い、すぐに待合室から離れて行った。
その後、ユーニスの剣も腰に差したアレイシアは、フィアン達と共に観客席に座っていた。そのまま一人で寮室に帰っても良かったのだが、大会本戦はまだ一回戦。次の日まで含めて十六回戦まであるため、他の人達の戦いも見ておきたかったのだ。
『では次! 第一回戦の二戦目です!』
その放送でアレイシアは、次に出て来る選手の方へと視線を向けた。他の人の戦いを見るのは、自身の戦法を見直す良い機会かもしれないと考えながら——
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アリア「ふふっ、今回の更新で十万字越えよ!」
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