資源が有ることで 跳ね太鼓
最終話です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
もう少しお付き合い下さい。
「跳ね太鼓」は弓取り式も終わり最後に叩かれる太鼓です。
「ここまでかな」
「うむ。これ以上続けると戦後の反動が怖い」
「せっかく増やした財が減るのは困るな」
「総意と取って良いのか」
「反対する者は?」
・・・・・
「いないな」
「では、どうやる」
「最近、彼が自殺したそうだ」
「彼か」
「そう。パシフィック・エースの彼だ」
「結構渡したのだろう」
「いろいろな悪さの揉み消しが主だったな。金はそれほど渡していない」
「回収したのか」
「それでは泥棒になってしまう」
「今更何を言う。まあたいした金額では無いのだろう。足が付くのも困るしな」
「金は地下賭博で儲けたことにしてある。実際に儲けさせたさ」
「地下賭博ではたいした金額では無いな」
「ちょっとした家が建つ程度だな」
「彼の功績に比べれば安いな」
「まあな」
「ああ、話を戻すぞ。その彼の死を切っ掛けに社説を出す新聞社が出た」
「あの社説か」
「読んでいない」
「ローカルな新聞社だからな。その社説は[Why?我々はどうしてあんなに興奮したのか]と言うことだ」
「あれか。落ち着けと言っているのか」
「そうだ」
「それなら利用できそうだな」
「ウチの社説も出そう。なに、前に書いた社説の責任者は首か配置転換する」
「ではウチの出版社も言論誌で展開するか」
「君の所は最初から落ち着けという論調だったな」
「ああ。やりやすい」
サイパン島に上陸したアメリカ軍が白旗を揚げて3ヶ月後。
合衆国国内の雰囲気が戦争に否定的になってきた。大損害で終わったマリアナ沖海戦とサイパン島上陸作戦に、それまでの海戦や航空戦の損害も有り国民の目が厳しい。
「プレジデント。最新の世論調査結果です」
「戦争継続は否定的か。君たちはどうしたのかな」
「秘密ですが継続を望んでおりません」
「そうか。副大統領を呼んでくれ」
「畏まりました」
上陸作戦後、サイパンとテニアンに対する空襲は出来無い。サイパンとテニアンに捕虜収容所を作ってしまったからだ。他の場所に20万人を越える捕虜を収容するなど手間が掛かる上に危険すぎて出来なかった。
そこで俗に言う人間の盾とした。幸い拿捕した輸送船の貨物にキャンバス製の兵舎が有って、これを臨時の収容所にした。慣れているだろう兵舎だから暮らしやすいのではないか。
足りない分の仮収容施設が出来上がるまでは、兵員を輸送してきた輸送船を仮の収容所としている。
人数の多いサイパン島ではサイパン島南部を捕虜の場所とし、鉄条網で区切って大幅な自治権を与え自治させた。こんな人数をいきなり捕虜にしても管理は出来ない。
ダミーの捕虜収容所を北部にも造り島全体にばらけているようにも装った。
輸送船は結構な数が沈んだが、それでも残された物資の量はさすがアメリカとしか言いようが無かった。食料や医薬品は十分な量があった。この人数でも1ヶ月近く持つ食料を持っていたのは驚かされる。
足りなくなるのは明白なので、国際赤十字を通して食料をオーストラリアから買い付けたばかりか、アメリカからも買い付けるという前代未聞のことまで行った。
飯と待遇が良ければそこまで酷い感情は持たないことを、日露戦争時のロシア兵捕虜の松山俘虜収容所と前大戦時のドイツ兵捕虜の板東俘虜収容所や松山俘虜収容所で分かっているつもりだった。
実質的な戦場は潜水艦戦が展開される場に限られてきた。しかし、潜水艦の動きも低調だ。すぐに浮上して降伏する艦が有るなど、やる気が見られない。厭戦気分がはびこっているのだろう。
1944年12月。
3選を果たした大統領が引責辞職した。後継は次の大統領選まで規定により副大統領が務める。
1945年1月。
戦争をしているのはモスクワ手前まで攻め込んでいるヨーロッパ連合軍と守るソ連軍だけだった。
内戦は大陸で国共内戦が行われている。国共内戦に世界の関心は低い。
あっさりで終わりました。
上げる予定の外伝は、そのうちということで。
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