資源が有ることで ヨーロッパの火
日本がマリアナ沖海戦に望む前。
ヨーロッパは平穏だった。ドイツから西は。
ドイツから東は地獄の釜の蓋が開いている。ポーランドの国土はボロボロで復旧にはかなりの金額と期間が掛かるだろう。もっとも今現在荒らしている最中なのだが。
ドイツから西と南の国はドイツに資金援助や物資提供の他、軍の一部まで投入をして、なんとしてもソ連を食い止めさせようとしていた。
開戦後、一時的にドイツ国境を破られはしたが各国からの宣戦布告と同時に行われた戦力投入でソ連を国境線から追い出した。
「クリューゲル元帥、他国の援助は有り難いがドイツばかりが苦労していると思わないかね」
「ヒトラー首相。そうは言われましても石油と天然ゴムを握られております。他にもいくつか、それは商工大臣の方が詳しいと思いますが」
「ヨードル商工大臣。イギリス以外からは手に入らないのかな」
「はあ。石油はルーマニアから鉄道で入りますが、列車輸送とタンカーで港まででは圧倒的に輸送効率が違います。ドイツ=ルーマニア間で石油輸送の分が丸々鉄道輸送から無くなる訳です。タンク車をルーマニアに戻す編成まで考えれば、どれだけ他の物資の輸送に余裕が出るか。ドイツ国内でも石油の鉄道輸送はかなり他の列車の運行を圧迫します。ですから港湾からですと鉄道輸送の距離が短くなるので都合がよろしいのです。従ってわざわざ効率の低い輸送方法を取ることは無いと考えます。天然ゴムは他に大量に輸入できる手立てが有りません」
「大量でなければ入るのだね」
「民生用にも足りない分でもよろしければ」
「ダメじゃないか」
「質問に答えただけです」
(こいつ。この間の選挙で連立政権になったから重要な商工大臣というポストを用意したんだ。もう少し働け)
八つ当たりで有る。他の誰でも不可能だろう。
ヒトラー率いるナチス党もムッソリーニ率いるファシスト党も国内第1党を維持しているが、過半数を上回ることは無く連立政権となっていた。
「カナリス君。何か都合の良い情報は無いかな」
「残念ながら有りません」
「そうか」
「ああ、そう言えば、コミンテルン共がアメリカに働きかけましたが無視されたようです」
「フッ。いい気味だ。そう言えば、あの国にない資源はどうやって入手しているのだ」
「中立国経由ですね。日本とか」
「日本はアメリカと戦っているだろう」
「ソ連とは戦っていません。通商条約はお互いに相手こそ違うものの交戦国と言うことでソ連側から破棄したようです。現在は両国間の貿易は、契約の残り分以外ほぼ無いそうです」
「日本は何か都合が悪いのか」
「むしろソ連の方が都合が悪いと思われます」
「何故だね」
「日本がソ連から入手できなくなったものにニッケルとマンガンとタングステンとボーキサイトがあります。逆にソ連はキニーネと生ゴムを日本から入手できなくなりました」
「それはソ連が損をしましたな」
「何故かね。商工大臣」
「日本はあの西之島からボーキサイトもタングステンも産出しております。ニッケルもです。マンガンは南鳥島で大量に入手したそうです。占領されていますが、それ以前の量でかなり持つと言うことを大嶋大使から聞きました」
「大嶋大使か。彼は日本の大使なのだろうに、口が軽いな。ソ連は生ゴムが入手できないのは痛手だろう。だがキニーネとな。なんだねキニーネとは」
「マラリアに効く唯一の薬です」
「マラリアだと。もうドイツでは見かけないと思ったが」
「ソ連は広いですし、雪解け後に一斉に虫が沸き立ちます。マラリア感染も多いようです」
「必要な物を閉め出して、相手があまり必要では無い物を渡さないようにしたのか。間抜けだな」
「さて、どうするか」
「何ですか。統領」
「我が海軍に黒海へ入れないかという打診があった」
「黒海ですが。ギリシャとトルコが何というか」
「そうだな。海軍に聞いたところ、行くのは問題無いが、両国の了解が無いと中立国の領海を侵すことになってよろしくない。特にモントルー条約の問題が大きい。と言っているが」
「ギリシャもトルコも中立を気取っていないで、ソ連に宣戦布告してくれれば楽なのですが」
「トルコは直接国境を接しているから、ソ連が元気なうちは危険を冒せないだろう。我が国は宣戦布告はしたものの、若干の支援以外行っていない。それを言われている。もっと増やせないかと」
「交渉をしろと言うことですか」
「誰が良いのだろうか。トルコに名が売れていて我が国内でも発言力がある誰か」
「居ませんね」
「君やらないか」
「無理です」
「イタリア海軍の黒海投入は無理なようです」
「まあ、分かってはいたが」
「トルコが中立で有る限り無理でしょう」
「あの黒い親父では動かせなかったか」
「ソ連が弱体化すれば有りかも知れません」
「その頃には黒海から牽制する必要もなくなっているから」
ソ連は膨大な戦力を投入するが、全ヨーロッパとも言える戦力相手では分が悪かった。1944年5月にはベラルーシにドイツ軍主力の侵入を許した。
ギリシャとトルコがソ連に宣戦布告する。
ようやくイタリア海軍が黒海に入った。
日本は当時世界第2位のキニーネ生産国でもありました。台湾でも原材料の栽培から製品化まで行っていたようです。国内や台湾で原材料の「キナの木」栽培を始めたのは日本人だそうです。wikiより。
次回更新 11月24日 05:00
マリアナ沖海戦始まります。
ヨーロッパはこのような具合で。イタリアはあれでいいと思います。
日ソ通商条約の破棄は、書記長がお仕置きと思ってやったことで日本側に痛手は有りませんでした。
さて問題です。最終話は7割上がっています。その前2話が300文字ずつ程度しか上がっていません。日曜日に最終話上げることが出来るのでしょうか。頑張ろ。




