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資源が有ることで 幕下

マリアナ諸島を巡る戦いです。

 1943年前半はトラック沖海戦の損害が双方とも大きく、日米海軍は戦力の回復に努めていた。

 代わりに主戦場となったのが、マリアナ諸島だ。トラック島に航空基地を作ったアメリカ軍が定期的にサイパン・テニアン・グアムにある日本軍施設を空襲しにやってくる。

 勿論航空基地を作られないように妨害はした。しかし第二次トラック沖海戦、第三次トラック沖海戦の連戦でお互いに稼働空母が減り、日本側は砲戦でカタをと思ったがアメリカが旧式戦艦複数と小型空母複数をトラックに入れたことで戦場がアメリカ優位に安定。

 トラックの航空基地は稼働を始めた。



ヴィーヴィーヴィー

【緊急。緊急。敵編隊接近中。方位140。距離120海里。速度180ノット。高度3000。機数40から60】

【迎撃待機の機体は手順に従い発進せよ】

【迎撃2番待機、3番待機の搭乗員は発令所前に集合せよ】


「回せー」


 グルグルグルグルグールグル


「コンターク」


 時折暖機して暖まっている発動機はすぐに掛かる。


「補助翼良し。昇降舵良し。方向舵良し」

「筒温上昇安定、油温やや低いも規定以内」

「通信機、送受信良好」

「搭乗員縛帯固縛良し」

「発進準備完了」


 地上要員が管制と話している。旗が振られた。


『タカ3番、管制。発進を許可する。武運を』

「管制、タカ3番発進する。謝す」 


 今日も零戦三二型は快調だ。でかい金星発動機でやや前方視界が悪くなったが、馬力が有るのはいいことだ。上がりも良い。

 主翼に突き出た二号銃の銃身も頼もしい。一号銃に較べて弾道も伸びるし弾の威力が段違いだ。装弾数も60発から100発になり、すぐに弾切れはない。二号銃の横に陸軍さんの13ミリだ。炸裂弾だというこの機銃は一号銃ほどではないが威力はある。これならボーイングでもコンソリでもメザシでもやれる。


『迎撃全機。管制。接触した偵察機によるとコンソリ30機、ボーイング20機、ロッキード30機。高度3000から上昇中。注意されたい』


 80機か。相変わらず電探の機数は当てにならないな。敵機も高度は7000までにしてくれないかな。8000以上に上がられると苦しい。



「さて、ぼちぼち上がるか」

「田中飛曹長殿、こんなにゆっくりして良いのでありますか」

「香川一飛は、初めてだったな。いいか。奴らがここまで来るのに30分は間がある。そして鍾馗の航続距離は短いし、お前、何も目印の無い海の上飛びたいか」

「推測航法は学習しておりません」

「そうだな。だから陸軍航空隊の迎撃範囲は島が見える範囲だけだ。敵の侵入高度が高度8000でも5分後に離陸すれば間に合う。分かったか」

「ありがとうございます。理解できました」


 彼らの乗機は鍾馗二型だった。発動機の出力を上げ武装も強化した。しかし、武装の強化と燃料タンクの増量で主翼面積を大きくし機体も安定させるために延長し重くなった影響からか速度は若干の向上となっていた。上昇力は少し落ちたが、まだ最上級の機体であることには違いが無い。

 航続距離は1300キロまで伸びた。武装は機首にホ103二丁と主翼のホ103四丁の六丁という重武装になっている。しかも空気信管の実用化で炸薬内包量も増え威力は上がった。


 彼らの目の前を双発機が滑走していく。屠龍だ。上がりが悪いので早めの出撃だ。始めの頃はメザシ(ロッキード)と良い勝負だったが、改良を受けたのか運動性が良くなり今は追い回される方になってしまった。しかし、その中に変わった機体が混じっているのには気がつかなかった。屠龍の後席を潰し綺麗に成形した双発単座機だ。発動機も大きい。他にも小変更を受けた試作機が1機、実戦テストに来ていた。


『酒井大尉。その機体は2機しか無い、無理はするな』

「30ミリ機関砲4丁の威力と排気タービンの能力を確認する」



「マックィーン中尉、上空敵機、速い。接近中」

「何言ってるんだ。サウザント一等兵、俺たちは高度3万5000フィートだぞ。ここまで上がれる日本機はいない」


 爆撃隊の中で1機だけ偵察仕様になっているB-24。戦果確認のために編隊後方にいるそれは、離れた位置で高度も高い。


「機長、後上方敵機速い。撃ってくる」


 上方銃座から射撃音が響いた。

 だが乗員達が着弾の衝撃を感じた次の瞬間、主翼が折れ空中分解した。


「こちら酒井。高度1万1000で戦闘機動可能。機関砲の威力はB-24が1連射で墜ちた」

『こちら中州。もう良いから帰ってこい。使えるのが分かれば十分だ』

「こちら酒井、了解」


 酒井大尉は帰投中と言って、少し寄り道を。B-17がいた。直上からほぼ垂直降下で1連射。

 B-17は主翼をボロボロにされ火を噴きながら錐揉みで墜ちていった。

 その日の迎撃戦では、護衛機のP-38が鍾馗や零戦に押さえ込まれ爆撃機への攻撃がほぼフリーとなった屠龍が活躍した。零戦や鍾馗も多くの爆撃機を墜としている。


 

 戦果

 撃墜         撃破

  B-17 11機   6機

  B-24 15機   7機

  P-38 12機   6機


 アメリカ陸軍航空隊は1回の出撃としてはトラック進出以来の大損害を被った。




「反攻はしないのですか」

「トラックは防備が固い。陸攻だけで行ってもやられるだけだ」

「ダメですか」

「艦隊が再建されるまで待て」



次回更新 11月20日 05:00


屠龍の後席を潰した単座試作機は史実キ96相当の機体。それに排気タービンと30ミリ機関砲四丁を搭載。高度1万で600キロ以上出ていそうです。

二号銃の弾の威力が段違いなのは、初速向上もありますが弾丸重量が大きいのが効いているのかなと。零戦は三二型で機体強度を上げ、機銃の反動でよれないような機体になりました。そのため集弾性も良くなっています。

相乗効果で威力が上がっています。

屠龍の武装はホ103が機首に二丁。胴体下面に30ミリ機関砲一丁を無理矢理押し込んであります。トンデモ設定だから良し。

陸軍さん、未だに地文航法ですよ。いいのかね。今の守備範囲なら島伝いに飛べるので問題ないと言えば無いようですが。サイパンには船で来ました。

第二次トラック沖海戦、第三次トラック沖海は、お互いに稼働空母が少なく戦艦も限られていたため中心戦力が空母2隻とか小規模です。


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