資源が有ることで チョークポイント
遂に宣戦布告。
いろいろこじつけが酷いです。
意識高い系の人たちの努力で、見事に日本の対外関係が悪化している。彼らにはそんな事は聞こえていない。ただ自分が気持ちいいことを人の迷惑顧みずにやっているだけなのだ。
「上手いこと誘導されているな」
「今ひとつ手が足りん」
「準備はしている」
「どんな?」
「サスピシャス・シンキングだ」
「どこで沈めるんだ」
「奴らの海上交通のネック」
「どこだよ」
「私は分かったぞ。君も日本の地理くらいは知るべきだ」
「分かったよ。地図でも見よう。で、どこだ」
「地図で見よう。良く分かる」
指を差した先は…
「そこ…なのか」
アメリカ船籍のパナマックス貨物船パシフィック・ジャックは、朝鮮半島開発資材の五大湖産重量級鋼材をニューヨーク港で積み込み、パナマを通過して九州の西を回って釜山に到着する予定だった。それが、手配に漏れがあったとかで神戸港で追加の貨物を受け取り瀬戸内海を航行していた。
パナマックス貨物船に目一杯積み込んでこんな海を航行したくない。来島海峡は水先案内人を乗せて乗り切った。幸いアメリカ英語に堪能だったので会話は苦労しなかった。
こんなに苦労するなら荷主と船会社の言うことを聞かずに船長権限で太平洋に出れば良かった。遅れたついでだ。3日くらい釜山入港が延びても良いだろう。
そうキャプテンは思いながら関門海峡に差し掛かった。この時間の潮流は引き潮で西へと流れている。燃費には良いな。
「キャプテン。前方行会い船」
「操舵手。面舵。ゆっくりとな」
「アイ、キャプテン」
「艦長。前方行会い船。大型貨物船」
「操舵手。ちょい面舵」
「ちょい面舵」
「舵戻せ。直進に戻す。取舵用意」
「アイ、キャプテン。??!キャプテン。舵故障。反応しません」
「何だと!」
「テレメーターが面舵のままです。船が右へ回頭します」
「汽笛と霧笛鳴らせ。機関後進一杯急げ。信号手「我舵故障」。そっちの、何でも良い発行信号を出し続けろ。緊急と分かるだろう」
「こんなところで。*********」
「前方貨物船。発行信号。読みます『我舵故障』!!」
「機関後進一杯。急げ。舵戻せ。貨物船と陸の間をすり抜ける」
回避努力を続ける2隻だったが
「船体流されます。舵戻せません」
「機関、後進止め。岸に乗り上げる。前進強速。しかし横向きに流されているな。潮流が早くてどうにもならん」
「前方船舶至近。止まりそうですが」
「衝突警報。期待するな。全員掴まれ。ぶつかるぞ」
「速力低下。行き足まだ止まりません」
「面舵。いかん!もとい、舵そのまま。機関後進一杯そのまま」
「衝突警報。全員掴まれ。ぶつかるぞ」
前方には進路を塞ぐように巨大貨物船が流されてきている。潮流に乗って早い。こちらはこれから行き足が止まってこれから後退へと。間に合わん。練習巡洋艦の機関と舵では無理だな。艦長はそう思った。
「衝突警報だ。全員掴まれ。通信、緊急電打て「我、関門海峡で事故。至急救援請う」」
ドゴ~~~ン。海峡中に響き渡るような大音響が発生した。勿論乗組員は振り回される。パシフィック・ジャックの舵故障から衝突までほんの二分か三分の出来事だった。
「「損害報告、急げ。浸水と負傷者の確認」」
「キャプテン。船倉に浸水。船倉に亀裂が入って大量に浸水しています。浸水阻止は無理と思われます」
「無理か。この積み荷だと沈むな。総員退船。ボート降ろせ」
そういて言っている間にも傾斜していく。
「衝突船。ボート降ろします」
「信号読みます。浸水あり。復旧不能。脱出する」
「沈むだと?あそこでか。あのでかい船が?畜生め」
「艦長」
「済まんな、先任。落ち着きが無かった。本艦の被害状況は」
「艦首損傷です。負傷者は今の所報告無し。浸水も今の所報告無し」
「機関後進微速。少し離れる」
そう言っている間にも貨物船は傾斜していく。脱出した乗組員は潮流に流されながらも岸に向かってボートを進める。沿岸でも気がついて人が寄ってきている。問題ないだろうが、どこの国の奴だろう。
「救助方用意。先任が指揮を執れ。脱出したボートの面倒を見ろ。通訳が必要かも知れない。向こうはでかい。引き波に巻き込まれるな」
「了解。英語だと良いのですが」
「英語だろうな」
先任が内火艇を降ろす間は機関を止め流されるままになっていた。
パシフィック・エースは1時間後沈んだ。
この事故を撮影していた人間がいた。それはスクープとして世界中を駆け回った。丁度良くそこにいたのは偶然か?
日本の警察や軍が足取りを追った頃には国外へ出ていた。
日本国内では、関門海峡で衝突事故。大型貨物船沈没。海峡閉鎖か?
アメリカ国内では、アメリカ船籍貨物船の船復に日本海軍巡洋艦が激突。貨物船沈没。撃沈されたか?
アメリカ世論は見事に扇動された。
いくつかの新聞社や雑誌社の1面や表紙には貨物船の横腹に巡洋艦の艦首が衝突している写真が載っていた。
勿論、事故の真相を落ち着いて報道する新聞社はあった。しかし、センセーショナルな見出しほど良く売れるのも事実だ。
帰国した乗組員達は「日本海軍の攻撃をどう思ったか」等と聞かれ閉口する。「事実とは全く違う。事故だが原因を作ったのはむしろこちらだ」そう訴えるが騒ぎの中に埋もれ誰も本気にしない。
アメリカ国内での反日感情が高まる。過去最高とも言える。
「上手くいったな」
「上手くいきすぎた。まさか衝突事故まで起こしてくれて、おまけに相手が日本海軍だと。さらにトンネルまで潰れるとは。そのせいで日本に陰謀論を話す奴がいる」
「確かに陰謀だが。バレないだろう」
「あそこは潮流が早い。それにあんな重量物を積んだ大型船はサルベージも困難だ」
「爆破処理か。証拠は残らないな」
日本は大ダメージを受けていた。関門海峡で巨大船沈没だ。大型船舶の海峡通行が困難になったことも大きいが、場所が工事中の関門海峡トンネルの上だったため重量と衝撃で出水し水浸し。復旧不能のダメージを受けた。事実上放棄するしか無い。
舵故障の原因を調べるためにサルベージを要求するアメリカと、関門海峡の早期全面開通を目指し爆破処理しようとする日本。
意見はぶつかる。
衝突した一方の日本海軍巡洋艦は、練習巡洋艦橿原だった。日本海での演習航海を終え呉へ帰還する最中の出来事だった。
海軍は査問委員会を開いたが、相手が原因の事故であり回避不能な状態では艦長を始めとする責任者に責を問えないと不問となった。
運輸省の事故調査委員会も同様の結論となる。
アメリカ政府調査委員会も同様の結果だった。
騒ぎ立てるのは日米両国のメディアばかりだ。
そして遂に爆砕処理に出る。
日本の新聞社は「遂に関門海峡沈没船爆砕処理で全面開通」
アメリカの三文メディア「我が国企業の財産、不当に爆破される。日本海軍証拠隠滅か?」
双方の大衆がメディアに煽られ、対日対米感情がさらに悪化。
そして、ワシントンで行われた例の集団によるゲリラ集会で発砲事件が起き参加者が暴走。反対派も巻き込んでの騒動となる。
一部が暴徒となり、ホワイトハウスに侵入。一部の備品を破壊するなどして逮捕される。
一部は日本大使館や他の外国公館に放火や破壊活動をするなど激しい騒動が巻き起こった。
日米両政府とも大衆の感情悪化を抑えきれずにいた。
群衆によって両国の大使館が相次いで襲撃され、無関係の民間人に死亡者を始めるとする被害者多数発生に及んで、遂に断交。
1941年12月08日
双方の政府特使が中立国において中立国立ち会いの下、宣戦布告文書を交わした。
次回更新 11月13日 05:00
こじつけが酷い。
丁度トンネル工事区間の上で沈むとか。
それにあの頃パナマックス貨物船在ったんでしょうか?
サルベージは大型過ぎるのと積み荷が鋼材で重いので当時の技術では無理だということで。
景気が良ければ戦争なんてしませんよね。
資源も大量に有る訳ですし。
資源的な問題は天然ゴム。第2次世界大戦中はアメリカも入手難で苦労したようです。主要産地は日本が抑えてしまったから。合成ゴムの技術は不十分で天然ゴムが無いと十分な特性を持ったゴム製品の多くがが出来なかった頃。
今回はマレーに手を出していないので、ゴムはですね。
沈める場所を来島海峡と迷いましたが、あの頃関門海峡トンネルの工事も有ったなと思い関門海峡。




