71話
離宮襲撃事件から数日後。王都では、急遽貴族議会が開かれた。
しかし今回参加しているのは高位貴族と、王族とその臣下のみ。
物々しい雰囲気が漂うなか、議場の中心には本日の主役が立たされていた。
「僕は足を怪我しているんだぞ! 座らせてくれたっていいじゃないか!」
両脇に直立している兵士たちにそう訴えているが、彼らがそれに応えることはない。
「口を慎め、ソルベリア公爵トーマス」
国王に低い声で咎められると、トーマスはビクッと体を震わせた。
「ひっ……」
「さて、ソルベリア公よ。本日は何故ここに連れて来られたのか、理解しているか?」
無言でコクコクと頷くトーマス。
いかに無知であっても、今回は流石に事の重大さを理解していた。
王女が在住する離宮の襲撃。それに加えて、メルヴィン王太子の暗殺未遂と、フィオナ嬢の暴行未遂。
それらを高位貴族の当主が引き起こした。ロシャーニア王国始まって以来、いや世界でも類を見ないケースである。
(くそ……あいつら、主人の僕を売って自分たちだけ助かったんだ! なんて卑怯な連中だ!)
自分の言う通りに動かなかった、恩知らずの兵士ども。
ギリッと奥歯を噛み締めていると、国王が冷淡な声で一言。
「早速だが毒杯と絞首台、どちらにするのか決めてもらうぞ」
「はい……?」
「貴様の処刑方法だ。好きなほうを選んで構わん」
「…………っ!」
ぞわっと、背筋に冷たいものが走る。
咄嗟にその場から逃げ出そうとするが、兵士に取り押さえられてしまう。
「やだぁっ! 何で僕が死ななくちゃいけないんだよ!」
「そのくらいのことを仕出かしたからだ」
「そのくらいって……僕はもう廃爵になるんでしょ!? それだけじゃ足りないって仰るんですか!?」
「足りぬよ。まったくな」
国王の眼光が鋭さを増す。
「かつての夜会の時と違い、今回は故意に我が子を狙った。しかもまだ幼いリーネまで巻き込もうとしたのだ」
「そ、それは……」
計画は絶対に成功する。そう信じきっていたトーマスは、失敗した時の弁解を何も考えていなかった。
ライラを取られて悔しかったから、王太子を殺したかった。そんな本音、口が裂けても言えない。
「慰謝料ならたくさん払います! だから、どうか許してください! 命だけは助けてくださいっ!!」
涙と鼻水を垂らして、命乞いをする姿を憐れむ者はいない。笑いも怒りもせず、ただ無表情で見詰めている。
「何でも……何でもしますから……」
「ほお?」
国王がピクリと眉を動かす。
その言葉を待っていたかのように。
「ならば、命だけは助けて進ぜよう」
「ほ、ほ、本当ですか!?」
「勿論だ。しかし……」
国王はそこで一拍置いた。
「そこから先は、運次第だ」




