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【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


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68/72

68話

 部屋の外から侍女の悲鳴が聞こえてきたのは、フィオナがベッドに入って一時間ほど経った頃だった。

 慌てて飛び起きようとすると、部屋のドアが開いて誰かが入ってくる。

 窓から差し込む月の光が、侵入者の姿を照らす。

 体格からして男のようだが、茶色のフードで顔を隠している。


「ど、どなたですか……!?」


 その問いに答えず、侵入者はベッドへ駆け寄ってフィオナに覆い被さった。


「キャアア……むぐっ」


 手のひらで口を塞がれて、声が出せない。

 それでも全身をじたばたさせていると、上から声が降ってきた。


「大人しくしなよ、ライラ。僕だってば」

「……っ!」


 フィオナが抵抗を弱めると、手のひらがゆっくりと離れていった。


「あ、あなたはもしかして……」

「ああ、会いたかったよ! 驚いている君もとっても綺麗だね」


 フードを外したトーマスは、とろけるような笑みを浮かべていた。


「何故、あなたがここにいるのですか!?」

「しーっ、静かに。実は大変なんだよ。野盗たちがこの屋敷を襲いに来たみたいなんだ」

「野盗が……?」

「見張りの兵もみんな殺されちゃったらしくて、生き残りが僕に助けを求めてきたんだ。だから、兵士のみんなと慌てて駆けつけてきたってわけさっ」


 自慢げに語るトーマスだったが、フィオナの顔は険しさを増していく。


「……あなたは私たちを助けに来たのですよね? でしたら、何故あなたは、私を組み敷いているのですか?」

「タダで助けるってわけにもいかないよねぇ? お金はいらないから、君の体を味見させてよ」


 目を爛々に輝かせるトーマスに、フィオナは開いた口が塞がらない。


「やめてください! 私はもうあなたとは何の関係もありません!」

「そんなことないよ、君は僕のところに戻ってくるんだよ」

「今の私は、メルヴィン殿下の婚約者です!」

「その殿下が死んだら、ライラはまた独り身になるよね?」


 トーマスの問いかけに、フィオナは目を見張る。


「どういう意味ですか?」

「それがさぁ、さっきメルヴィン殿下の死体を見つけちゃったんだよ。ごめんね、間に合わなかったんだ」


 わざとらしく申し訳なさそうな声で謝るトーマス。

 フィオナはひゅっと喉から息を漏らしたあと、すぐに目の前の男を睨んだ。


「……嘘を仰らないでください」

「嘘じゃないよ! 首の辺りをスパって切られちゃってさ。あんな足だから逃げられなかったんだね」

「あんな足? あなたのせいではありませんか!」


 フィオナが声を荒らげると、トーマスはむっと顔を歪めた。


「な、何だよ、君も僕を責めるの? 確かに怪我をさせたことは謝るけどさ……殿下も根性が足りなかったんじゃない?」

「根性……?」

「ああいうのって、リハビリさえ頑張れば何とかなるもんでしょ? でも、あの王太子はそれを怠ったからまともに歩けなくなったんだよ。それを僕のせいにされたら、たまんないよ!」

「……私が愚かでした」

「え? 何か言った?」

「一度でもあなたを愛した、私が愚かでした」


 フィオナは怒りと呆れを込めて告げると、クローゼットへ視線を飛ばして叫んだ。


「お願いします!」


 途端、クローゼットが内側から開かれて、何かが飛び出してきた。

 そして両手に握り締めていたフライパンで、トーマスの頭部を思い切り殴りつける。


「フィオナ様に何てことをするのよ、このゴミ野郎!!」


 ベッドから転がり落ちたトーマスを見下ろし、憤怒の表情でそう罵ったのはジェイミーだった。


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