表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/72

56話

「でしたら、せめてライラを……私の娘を返していただきたい!」

「ライラ? 彼女なら野盗に襲われた後、自死したと聞いているが」

「いえ、そうだとばかり思っていましたが、ルディック伯爵令嬢フィオナとして生きていたのです!」


 レオーヌ侯爵が力説すると、宰相は怪訝そうに眉を顰めた。


「……フィオナ嬢は森で発見されて、暫く意識不明の状態が続いていた。その際、ライラ嬢ではないかとソルベリア公爵と確認に出向き、別人だと断言したのではないか?」

「それはその……っ、変わり果てた姿となったライラを、娘と認めたくない気持ちが強くて……」

「ほう? あの場に居合わせていたメルヴィン王太子殿下は、面倒事を避けようとしているように見えたと仰っていたぞ」

「殿下は誤解しております……!」

「これから男爵となる者と、王太子殿下。どちらの言葉を信じるかなど考えるまでもない」


 取り付く島もない。

 だがこの絶望的な状況を打開するには、ライラを取り戻すしかなかった。

 そうすれば、メルヴィンとの婚姻のことがあるので、降爵を免れることができる。


「ロザンナとレベッカは死罪にしても構いません! ですから、どうかライラだけでも──」

「無駄だ。貴殿とソルベリア公爵が署名した証明書がある限り、フィオナ嬢をライラ嬢と認めるわけにはいかん」

「ぐぅ……」


 自分の行いが今最悪の形で返ってきている。

 失意の中、レオーヌ侯爵は屋敷に帰宅するとソファーに凭れて呆然としていた。


 そして数日後。城から降爵処分に関する詳しい書状が届いた。

 ルディック伯爵家に割譲する領地についても、記載されている。


「これは……」


 割譲後の地図を目にして、レオーヌ侯爵は愕然とする。

 領地の大半が、ルディック領として扱われている。残された領地は隣国に面したごく一部のみ。

 何とこのレオーヌ邸付近も、譲渡の対象となっている。


(だ、だったら、これから私はどこで暮らせば……!?)


 その答えは、しっかりと書状に書かれていた。

 国境付近に一軒家を建てるので、そこを住まいにしろというものだ。


「くそぉぉぉぉ……っ!」


 激しい動悸も全身の震えも治まらず、レオーヌ侯爵は書状に顔を埋めながら絶叫した。

 領地の大半を奪い取られ、国境沿いまで追いやられる。

 元侯爵に対するものとは思えない仕打ちに、憤りが隠せない。

 しかし、それ以上に恐怖があった。


 国はルディック領を防衛の要にしようとしている。

 だが、レオーヌ領は?

 万が一他国に攻め入られた時、果たして救援は来てくれるのだろうか。


(そ、そうだ。兵士を呼び戻しておこう)


 兵力を増やしておけば、いざという時に逃げるための時間稼ぎとして使える。

 レオーヌ侯爵はすぐさまソルベリア邸へ出向いた。書状を書く暇があったら、直接本人と話をつけたほうが早い。


 ところが……


「申し訳ございませんが、本日はお引き取りください」


 出迎えた侍女に、一方的に告げられる。


「ソルベリア公爵は外出中なのか?」

「いいえ。ただ……」

「何だ? こちらは緊急の用事で来ているのだぞ」

「……レオーヌ男爵・・を招き入れないようにと、公爵様から仰せつかっております」


 視線を逸らしながら侍女が答える。

 その返答に、レオーヌ侯爵の顔が怒りで赤く染まる。


「私はまだ侯爵だ! 今の言葉は侮辱と見なすぞ!」

「それは本当でございますか? 公爵様は既に男爵とお呼びしておりましたが……」

「何だと!? あの若造め……!」


 堪忍袋の緒が切れて、強引に屋敷の中へ押し入ろうとする。

 だが、「おやめください!」と使用人たちに取り押さえられ、敷地の外に追い出されてしまった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ