表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/72

50話

「ふぅ……」


 自室に戻ると、フィオナは深く息を吐きながらソファーに腰を下ろす。

 自分の手へ視線を落とすと、小刻みに震えていた。


(ああ……私、怖かったのね)


 夫を奪った少女と、彼女を我が子とした母。

 あの人たちが品行方正な人間ではないことは、理解している。

 けれど、まさか人を殺めようとするとは思わなかった。


 フィオナ自身を狙うのならまだいい。

 だが、くだらない思い違いで義妹が殺されそうになってしまった。


「大丈夫ですか、フィオナ様……」

「……ええ。心配をおかけして申し訳ありません」


 ジェイミーに声をかけられて、フィオナは目を伏せながら頭を下げた。

 すると、彼女は困ったように眉を寄せる。


「フィオナ様は何も悪くありませんよ」

「ですが、私に巻き込まれてカレン様が……」

「謝らないでください! カレンお嬢様だって、きっとそう仰ると思いますよ!」


 ジェイミーは腰に両手を当てて、強い口調で言う。


 レベッカとロザンナが、自分に毒を盛ろうとしている。

 そのことを近衛兵から知らされたカレンは、


『それはよかった。あの二人を捕まえてしまえば、今後フィオナ姉様が狙われることはありませんもの』


 とほくそ笑んでいたらしい。その肝の据わりように、伯爵夫妻も言葉を失ったそうだ。


「カレン様はフィオナ様の事情を知った時、ソルベリア公爵家とレオーヌ侯爵家にひどく憤慨されておりましたからね」


 かつての主を思い返して笑うジェイミー。

 彼女は元々ルディック伯爵家の侍女で、フィオナの世話係として王宮に呼び寄せられたのだという。

 その縁もあって、ルディック伯爵家はフィオナと養子縁組を結ぶことになったのだ。……高位貴族の面々から、羨望せんぼうの眼差しを向けられながら。


 フィオナの素性は、ソルベリア公爵家とレオーヌ侯爵家以外の高位貴族には知らされていた。

 そして、どの家が彼女を引き取るか長期間に渡って議論が続けられた。

 その話を聞かされたフィオナは、貴族たちから疎まれていると心を痛めていたが、むしろ逆だった。


 傲慢で見栄っ張りなロザンナと違い、清楚で物腰柔らかなライラは社交界での評判が高い。

 それに加えて、彼女に憧れて慕う令嬢も多かった。カレンもその一人だ。


 そして何より陛下は、フィオナをメルヴィンと婚約させるために、高位貴族もしくは近々陞爵・・される家を養家に選ぶと宣言していたのである。

 こんな上手い話に、食いつかない家などなかった。


「だけどフィオナ様は優しすぎます」

「え?」

「レベッカ嬢とロザンナ夫人の減刑を申し入れた件ですよ。あのままいけば死罪にできたのに、どうしてあの二人を助けたのですか?」

「……レベッカ様は毒を盛ったと自白しましたし、結果として誰の命も奪っておりません。それに……いえ、何でもありません」


 フィオナは俯いて、首をふるふると横に振った。

 と、ドアが開く音がしたので顔を上げると、メルヴィンが佇んでいた。


「殿下……あの、レオーヌ侯爵夫人とレベッカ嬢は……」

「恐らく君が想像している通りだ。俺から語るつもりはない」

「そうですか……」


 相槌を打ちながら、両手を握り締める。そうしなければ、震えを抑えることができなかった。


「……フィオナ、二人で話がしたい。いいだろうか?」


 メルヴィンが壊れ物に触れるように、優しい声で尋ねる。

 今は彼の顔をあまり見たくない。……見るのが辛い。

 それでも断るわけにはいかなくて、視線を彷徨わせた後、フィオナはゆっくりと頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ