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【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


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47/72

47話

「キャアアアアッ!」


 会場に響き渡る甲高い悲鳴。

 レベッカの心臓が大きく跳ね上がった。


「な、何かあったのかしら?」


 ロザンナが白々しい口調でレオーヌ侯爵に話しかける。

 

「わ、分からん。だが、今のは若い娘の声だったような……」

「あ、も、申し訳ありません……!」


 悲鳴の後に聞こえたのは、か細い謝罪の声。

 グラスを落としたのは男爵令嬢だった。式典に出席するのは本日が初めてらしく、緊張のあまり手放してしまったようだ。

 レベッカは声がした方向へ目を向ける。すると、ドレスの裾をワインで汚した少女が、両親とともに周囲に頭を下げていた。


「ああ、あまり気にせずともよい。新しいグラスとワインを用意させよう」

「あ、あっ、感謝いたします、国王陛下……!」


 国王からの気遣いの言葉に、男爵令嬢は顔を真っ赤に染めながら深々とお辞儀をした。


「何、私も若い頃はカトラリーを上手く扱えず、よく床に落として教育係に叱られたものだ」


 冗談めいた口調で昔語りをする国王に、張り詰めていた会場の空気が程よく緩む。

 だがレベッカとロザンナは、それどころではなかった。


(ど、どういうこと? 伯爵令嬢(あの女)は、まだ飲んでいないの?)


 既にワインを飲んで倒れていたら、今以上の騒ぎとなっているはずだ。


「お母様、あれって本当に効き目があったの?」

「当然よ! 私があの女を仕留めるためにわざわざ……」


 ロザンナははっと目を見開き、ドレスのポケットに手を潜り込ませると、例の香水瓶を取り出した。ライラの登場で動揺して、捨てるのを忘れていたのだ。

 そして誰にも気づかれないように、香水を手から滑り落そうとして──、


「この小瓶の中身ですが、少し調べさせてもらってもよろしいでしょうか?」


 背後から近衛兵に肩を叩かれ、ロザンナの顔から表情が消える。

 それを見て咄嗟に逃げ出そうとするレベッカだが、いつの間にか傍にいた兵士に取り押さえられてしまった。


「な、何をするのよ! 私を誰だと思ってるの!?」

「そうだわ! 私と娘に何かあったら、うちの夫とソルベリア公爵が黙って……」


 我に返ったロザンナはそう言いかけたが、二人の姿がどこにも見当たらない。


「お二人は、別室へお連れいたしました。今回の件は、どうやらあなた方だけで計画されたことのようですからね」

「け、計画? そんなの私もお母様も知らないわ」


 しらばっくれようとするレベッカに、近衛兵は冷ややかな眼差しを向ける。


「そのような言い分は通用しません。陛下の命により、あなた方の行動は全て監視させていただいておりました」

「監視ですって!? どうして私たちが犯罪者みたいな扱いを受けるのよ!」

「……あのソルベリア公爵家と密接な関係がある。理由など、それだけで十分です」

「いやっ、ちょ……誰か、誰か助けて!」


 兵士たちに引きずられるように歩かされ、悲痛な叫び声を上げるレベッカ。


「ちょっと、見世物じゃないわよ! そんな目で見るのはやめなさい!」


 一方ロザンナは目を吊り上げながら、周囲に喚き散らしていた。

 そんな二人を見て、ざわつく参加者たち。


「あの方たち……レオーヌ侯爵家よね?」

「このような場で、一体何を仕出かしたのやら」

「ライラ嬢のことと、何か関係しているのかもしれないぞ」


 憶測が憶測を呼ぶなか、レベッカとロザンナが会場から連れ出される。

 その様子を見届けた後、国王はグラスを掲げながら声高らかに言う。


「何か騒ぎがあったようだが、大したことではなさそうだ。さあ、引き続き宴を楽しもうではないか」





 

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