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【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


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44/72

44話

 ルディック伯爵家。レベッカもそれを聞いて、目を大きく見開く。

 レオーヌ領の隣に、領地を持っている家だ。ロザンナは彼らを目の敵にしているのか、口汚く罵っていたことがあった。


(ど、どうして伯爵クラスが、メルヴィン殿下と話してるのよ……!?)


 自分たちなんて見向きもされなかったのに。

 困惑しながら義父に視線を向けると、渋い表情で目を伏せている。

 しかし、すぐに大きな歩幅でメルヴィンたちへ近づいていった。


「お、お久しぶりでございます、王太子殿下」

「……ああ。離宮で会った時以来か?」


 レオーヌ侯爵に挨拶をされて、メルヴィンは冷ややかな声でそう問いかけた。


「ええ。その節は、大変ご迷惑をおかけいたしました」

「ライラ嬢のことは、私も聞いている。何も力になれず、すまなかったな」

「そのようなことはございません! それに、レベッカの明るさが私たちの寂しさを吹き飛ばしてくれました……」


 穏やかに語りながら、レオーヌ侯爵がレベッカを一瞥する。


「こ、こんにちは、メルヴィン殿下。お元気そうで何よりですわ」


 レベッカもメルヴィンたちへ歩み寄ると、恭しくカーテシーをする。


「……君は相変わらずなようだな」

「ふふっ。私もお話に交ぜてもらってもよろしいでしょうか?」


 口元に笑みを浮かべつつメルヴィンの隣を陣取ろうとするが、厳つい顔の兵士に「申し訳ございませんが」と阻まれてしまう。

 むっと顔を顰めるレベッカだが、あることに気づいて目を丸くする。


(あら、杖を新しくしたのね……素敵!)


 本日のために新調したのだろう。銀製の補助杖には、傷一つついていない。

 グリップの脇にはアメジストが埋め込まれていて、神秘的な輝きを帯びている。

 レベッカが杖をまじまじと眺めていると、メルヴィンはルディック伯爵に「場所を変えよう」と移動を促した。


「あ、あの? 私もお話を……」


 呼び止めようとするが、メルヴィンたちは振り返ることなくその場から離れていった。

 その素っ気ない態度に、レベッカがもどかしさを感じて唇を噛み締めていると、


「ぷっ……くくくっ。メルヴィン殿下も、随分と地味な子を選んだよね」


 軽く噴き出しながら、トーマスが口を開く。

 どうやら、ルディック伯爵令嬢がメルヴィンの恋人だと思っているらしい。

 しかし他の貴族も同じことを考えていたらしく、周囲からも困惑の声が聞こえてくる。


(あんな芋娘がメルヴィン殿下と……!? 冗談じゃないわ!)


 ルディック伯爵令嬢は、ストロベリーブロンドを緩く束ねた可愛らしい顔立ちだ。だが、レベッカに比べたら数段も劣る。

 彼女がメルヴィンに見初められたなんて、絶対に認めたくなかった。

 しかしあの親しげな様子は、そういうことなのだろう。


「いいかい、レベッカ。メルヴィン殿下にはちゃーんと相手がいるんだ。だから君も、変なことを考えないで僕だけを見ているんだよ」

「あ、当たり前じゃない……」


 トーマスの言葉に、引き攣った声で相槌を打った時だった。


「レベッカ、あなたにちょっとお話があるの。来てもらえるかしら」

「ええ。お母様……」


 柔らかな笑みを浮かべたロザンナに促され、レベッカはパーティー会場から抜け出した。


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