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【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


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42/72

42話

 建国記念日。ロシャーニア国内は大いに賑わっていた。

 この国最大の祝日とあって、様々な催しが開かれている。

 それを目当てに訪れる、他国の観光客も多い。

 特にソルベリア領は王都に次ぐ、人気の領地だったはずなのだが。


「んん~?」


 トーマスは馬車の窓から見える光景に、訝しそうに声を上げた。

 例年のような賑わいを見せているソルベリア領の街。

 だが……こんなものだっただろうかと、首を傾げてしまう。


「ねぇ、レベッカ。去年はもっと人がたくさんいなかったっけ?」

「…………」

「レベッカ!」

「えっ……あー、ごめんなさい」


 強い口調で呼ぶと、レベッカはビクッと体を揺らして謝ってきた。

 誠意が感じられない謝罪に、トーマスは婚約者を冷たく睨みつける。


「今日は大事なパーティーなのに、居眠りしてたのかい?」

「だって、昨日全然寝てないんだもん……」


 レベッカは窓へ視線を逸らしながら言い返した。

 目の下には、化粧をしても誤魔化せないほどのクマができている。

 その原因である男は、呆れたように笑った。


「あれれ? 随分と体力がなくなったんだね。前は明け方までやってても、元気だったのに」

「んもう、トーマス様が元気すぎるの!」


 ぷぅと頬を膨らませて抗議するレベッカだったが、心中は大いに荒れていた。


(あんたのせいよ、クソ男……!)


 例の愛人が来なくなったことで、トーマスの性欲のけ口はレベッカだけとなっていた。

 昨夜も夕食を食べてすぐに寝室に連れ込まれ、延々と相手をさせられていたのだ。

 解放されたのは、空が白み始めた頃。

 トーマスはその後ぐっすり眠っていたようだが、レベッカはそうもいかなかった。

 仮眠を取ったら、数時間ほど執務室に籠っていた。昨日のうちに済ませる予定だった仕事が溜まっていたのだ。


「私、とっても頑張ったんだから、あとで新しいドレスを買ってね!」

「レベッカはわがままだなぁ。でも、そんな君も可愛いよ」

「やだぁ、トーマス様恥ずかしい……」


 怒りをぐっと堪えて、頬に両手を当てながら恥ずかしがる素振りをする。


(早くメルヴィン殿下に会いたいわ……私のことを覚えているかしら? うん、こんなに可愛い子を忘れるはずがないわ!)


 レベッカがそう確信するなか、トーマスはトーマスで真剣に考えこんでいた。


(今回の愛人は、ライラみたいに清楚な子がいいなぁ。まだ一度も経験がない子をぐちゃぐちゃにしてやるのって、すごい楽しそうだし……そして、僕から離れられないようにしてやるんだ……)


 他の異性との出会いを求めるトーマスとレベッカ。

 そんな二人を乗せた馬車は王都を通り抜け、無事王宮に到着したのだった。

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