表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】旦那も家族も捨てることにしました  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/72

33話

「つまり戦争が起きた場合は、その全責任は王族にあると……?」

「えっ。いや、あの……」


 メルヴィンに静かな声で問われて、ようやく状況を飲み込めたのか、トーマスの顔色が悪くなっていく。

 そして何故か隣にいるレベッカを指差した。


「い、今のは僕の言葉ではありません! レオーヌ侯爵がよく言っていたことなのです!」

「は?」


 突如義父の名前を出されて、レベッカの意識が現実に引き戻される。


「そうだよね、レベッカ。ね!?」

「え? う、うん。そうよ!」


 話の流れがよく分からないまま、トーマスに話の調子を合わせる。

 二人の様子を冷ややかに眺めていたメルヴィンは、小さく溜め息をつくと、


「……では、その期待に応えられるように努力していこう」

「は、はい……っ」


 安堵したように頬を緩めて、頭を下げるトーマス。

 レベッカも婚約者にならいながら、密かに浮かれていた。


(王太子殿下がこんなことを言ってくださるなんて……もしかしたら、私たち気に入られているのかしら!)


 そう期待するレベッカだったが、その後執事に領地経営に関していくつか質問をすると、メルヴィンはゆっくりと腰を上げた。


「では、私はこれで失礼する」

「あ、あら、もうお帰りになるのですか? もっとゆっくりなさればいいのに……」


 甘えるような声で引き留めようとするが、メルヴィンはそれを無視して、傍らに置いていた杖を取ろうとしている。


(ちょっとまだ帰らないでよ! もっと私をアピールしておきたいのに! ……あ、そうだわ)


 レベッカは前に身を乗り出すと、杖を取ろうとしたメルヴィンの手を握り締めた。


「レベッカ?」

「……何のつもりだ?」


 トーマスとメルヴィンがほぼ同時に、怪訝そうに声を上げた。


「脚をお怪我されているのですよね? そんなものを使わなくても、私が殿下のお体を支えますよ……?」


 上目遣いをしながら、小首を傾げてみせる。

 大体の男は、これで落ちる・・・。隣にいる婚約者もその一人だった。

 王宮に引きこもってばかりで、異性への免疫がないであろう青年なら、この程度で充分──


「余計な気遣いは結構だ。それと、見送りもしなくていい」


 レベッカの思惑とは裏腹に、メルヴィンはすぐさま手を振り払うと、杖をつきながら広間から出て行った。

 硬い表情をした近衛兵たちも、それに続く。

 廊下からの足音も聞こえなくなり、しんと静まり返る室内。

 最初に口を開いたのは、トーマスだった。


「何をやってるんだよ、レベッカ! 殿下を怒らせちゃったかもしれないじゃないか!」

「わ、私はただ殿下のためを思って……」

「どうせ殿下に色目を使おうとしてたんだろ! 僕がいるのに酷いや!」

「ト、トーマス様だって愛人を作ってるじゃない!」

「僕は公爵として、大きな重圧を抱えているんだよ? 愛人を持つことは、立派な権利だからいいの!」


 いけしゃあしゃあと、身勝手な理論を振りかざすトーマス。


「そっか……そうだよね。怒っちゃってごめんなさい。私、さっきの愛人さんに嫉妬しちゃってたみたい」

「分かってくれればいいんだよ、僕の可愛いレベッカ」

「うん……」


 トーマスに理解を示す振りをしつつ、レベッカは内心はらわたが煮えくり返っていた。


(こんなクソ男と結婚するなんて嫌よ! 私はメルヴィン殿下と結婚として、王太子妃になるんだから……!)


 そして、壮大な野望に目覚めるのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ