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第二十一話 やさしい旅 その②

 「じゃあ、またね」


 「うん、また」


 同級生は手を振りそう言うと、駅の方へと歩いて行った。




 「さっきの人、中学の同級生だよね」


 「そうだよ」


 駅へ向かう奈々の同級生の遠ざかる後姿を見ながら元秋は言った。


 「マジで、野沢菜って呼ばれてたね」


 クスクス笑いながら元秋が言う。


 「だから、最初に元秋君当てた時、ビックリしたんじゃん」


 奈々は恥ずかしそうな顔で頬を膨らませて言った。


 「へー、野沢菜、野沢菜」


 歩きながら面白がって、元秋は言った。


 「もお、元秋君、それよりなんか分ったの? ふざけてないでちゃんと考えて、いつ、何処で、私に会ったのか」


 奈々はちょっと怒った様に言った。


 「あ、そか。思ったんだけど、この旅は、いや、ピクニックは、奈々ちゃんの過去を辿る旅なのかな? 『地獄の黙示録』みたいな」


 「地獄の…知らない」


 「知らない? 有名な映画なんだけど。ある男の人生を別の男が辿る様な、あ、でも女の子向きじゃないか」


 元秋の話に前を歩いていた奈々が振り向いた。


 「元秋君、ちゃんと考えて。私の事なんだよ。私の事を元秋君に探して貰うピクニックなんだよ」


 そう言う奈々の目は少し涙目になっていた。


 「そうなの? あ、ごめん。分ったちゃんと考える」


 奈々の涙目を見て、元秋は真面目に考えようと思った。


 「じゃあさ、さっきの同級生の人。俺の事見て奈々みたいに神様って言ってたけど、奈々の中学校じゃ、俺、有名なの?」


 「んー、私が写真クラスの友達とかに見せてたから。一部有名」


 「写真? 俺の写ってる写真なんか持ってたの?」


 元秋はビックリして聞いた。


 「へへー、貰った。安藤さんも写ってるよ。皆そっちばっかり格好良いって言ってたけど」


 奈々はニヤニヤして答えた。


 「見せてよ。その写真」


 「駄目ー、まだ駄目。お墓に着いたら見せてあげる」


 「ちぇ」


 「それと何処かコンビニとお花屋さん回らなくちゃ」


 「コンビニとお花?」


 「お墓参り行くのに、線香もお花も持ってかないんじゃ、バチがあたるでしょ」


 「ああ、そうか」


 そう言って二人は近くのコンビニに入った。





 線香とライター、花屋にまわって花も購入して、二人はお寺のの墓地を目指して坂道を登って行った。


 この町は小高い小さな山が幾つもあり、坂道の多い町だった。


 お寺は必ず少し高い位置にあった。


 「もう少し上がると、お寺の石段だから」


 先を歩く奈々が言った。


 「石段って、そこから更に上がるの?」


 「そう。この辺のお寺は皆そうだよ。がんばって、陸上部なんでしょ? この町の中高の陸上部はみんなこういう所で練習してるよ」


 「えー、マジか。そう言えばこの町の高校、陸上で有名校だもんな。あっちこっちから人集めたりして。俺も中学の時何回か大会でこの町来た事あるや」


 元秋は疲れて肩で息をしながら言った。


 「俺、こういう坂道練習してないもんな。ん、あっ、分った!」


 そう言うと元秋は急に立ち止まった。


 奈々も立ち止まり振り返る。


 「何?」


 「これから墓参りする幼馴染って、陸上部だった?」


 「そうだけど」


 奈々は何食わぬ顔をして言った。


 「じゃあ、陸上だ! 陸上部の大会で俺が写ってる写真を貰ったんだ! もしかしてそこで奈々に会ってるのか? 俺」


 「ピンポーン! 大正解!」


 奈々は嬉しそうな顔でそう言った。






            つづく


 

 

 

 


いつも読んで頂いてる方々、本当に有難うございます。

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