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超Q探偵  作者: XI
95/204

22-4

 私は尚も奥方の前をゆく。


「あの……」

「はい」

「貴方にとって、私の夫はどういった人物なんですか?」

「少なくとも不誠実ではない」

「そうですか……」

「彼は家ではどのような夫ですか?」

「口数は少ないですけれど、とても優しくしていただいています」

「ミン刑事から『種なし』だと聞かされた上でご結婚を?」

「はい。彼と夫婦になれるのなら、それだけで良かったんです」

「美しい話ですね」


 右折すべきところで、私は壁に背を預けた。路地を覗き見る。


 二人の男がいる。こちらに向かってくる。私は左手で奥方の右の手を握った。何事もないかのように、男らとすれ違おうとする。すれ違ったところで、一人が「おい、ちょっと待てよ、お二人さん」と背後から声をかけてきた。「なんでしょうか?」と答えつつ、私は振り返った。


「女だけ置いて消えろ」

「なぜです?」

「イイ女だからヤらせろって言ってんだよ」

「そんなの、嫌に決まっているじゃありませんか」

「こちとらヤクザもんだぜ?」

「貴方達が何者であろうと嫌なものは嫌です」

「死にたいのか、テメーは」


 そう言って男が懐に手を突っ込んだ。拳銃を手にするのだろう。が、それより速く私は動いて、急所を蹴り上げた。男は股間に両手をやって、膝から崩れ落ちる。それから素早く抜いたリボルバーをもう一人に向けた。至近距離である。少々前進して、男の額に銃口を突きつけた。


 股間を蹴り上げられた男はひざまずき前のめりになりながらうんうん唸り、銃口を押し当てられている男は万歳をした。


「わ、悪かったよ。俺達が悪かった。だから、見逃してくれ」

「じっとしていていただけますか?」

「あ、ああ。わかった、わかったよ」


 私はリボルバーをおさめた。万歳をしている男の懐を探り、銃を一丁取り出した。マガジンを抜き、それをコートのポケットにしまう。股間を押さえている男からも鉄砲を取り上げ、やはりマガジンを外す。空っぽになった二つのオートマティックを地面に転がした。


「一つ伺います。銃を持ってこんなところをほっつき歩いているのはどうしてです?」

「み、ミンって刑事の女房をれってよ。上からの厳命だ」

「やはりそういうことですか」

「ゆ、ゆるしてくれ。なんでもするからよ」

「じゃあ、しばらく寝ていてください」


 私は思いきり男のほおを殴りつけることで意識を奪った。

 病院へと向かうべく再び足を踏み出す。


 後ろからついてくる奥方が、「私の夫はあんなに危ないヒト達を向こうに回しているんですか……?」と涙声で訊いてきた。


「それはもはや言わずもがなです」

「そもそもどうして命を狙われなくちゃいけないんですか?」

「彼が生真面目な刑事だからですよ」

「本当に、いい夫なんです。私を大事にしてくれて、いつも私のことを想ってくれて……」

「だからこそ、貴女のことを病院まで送り届ける必要がある。言ったでしょう? 私はそれなりにミン刑事の世話になっていると」


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