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超Q探偵  作者: XI
93/204

22-2

 アパートの一室、ミン刑事の自宅を訪れた。インターフォンを鳴らすと、覗き窓からこちらを確認している気配が窺えた。私は自らの立場を名乗った。しかし、ドアは開けてはもらえない。「メイヤ君」と呼びかけたところ彼女はすぐに理解したようで、「ミン刑事に関することで馳せ参じました。どうかお話を聞いていただけないでしょうか?」と告げた。すると、玄関口に、若く、また美しい女性が姿を現した。


「ミン刑事の奥方様ですよね?」メイヤ君が訊いた。「間違いありませんか?」

「はい」と答えた女性である。「それで、私になんの用が……?」

「大事な用件があるのです。ここでお話しさせていただいてもよろしいのですけれど」

「いえ。怪しい方々(かたがた)ではないのだと感じています。どうぞ中にお入りください」


 室内に通してもらえた。リビングのソファへと促され、私とメイヤ君は並んで座った。奥方は客をもてなそうと考えたのだろう。キッチンへと向かおうとする。だけど私は「お茶は結構です」と言い、席につくようお願いした。そして、ミン刑事の身に起きたであろうことを端的に話した。すると、奥方はぽろぽろと涙を流した。


「夫はフツウの刑事であるはずです」

「いえ、フツウではありません。立派な刑事であると私は考えています。彼は間違いなく、この街の正義を担う立場にある」

「そうであるなら、どうして撃たれたんですか?」

「そうであるがゆえに狙われたんですよ。立派であるがゆえに敵も多いということです。だが、ミン刑事はタフな男です。ケガを負わされながらも、なんとか犯人を仕留めたことでしょう」

「すぐに病院に行きます」

「どちらの病院に駆けつけようと?」

「最寄りの大きな病院に向かおうと思います」

「事実だけ短くお伝えます。きちんと言っておきます。病院に向かうにしても、その道中で貴女の命を欲しがるやからに出くわす可能性が非常に高い。かと言って、この場に留まっているのもよろしくない。端折った言い方になりますが、今、貴女はそういった苦境に立たされている」

「だとしても、私は主人に早く会いたいんです」

「そのお気持ちは理解できます」

「それにしても、どうして探偵さんのほうが警察のかたより動きが速いんですか?」

「そのへんの事情を話し出すと長くなります。時は一刻を争います。とにかく、まずは私のことを信用していただきたい」

「わかりました」

「十分だけ待ちましょう。正直、可能性は高くはないと考えますが、ミン刑事からなんらかの連絡があるかもしれない。そして、警察が出向いてくるかもしれない。ミン刑事からなんらかの知らせがあれば彼の言う通りに行動すればいいし、警察が来るようであれば彼らに身の安全を保証してもらえばいい。そのリミットが十分だということです」

「もし十分が経っても、夫からの連絡もなく、また警察のかたもいらっしゃらないのであれば……」

「その場合は、いよいよ私に任せていただくより他にない。とにかく、ここに留まっていることが一番危険なんですよ。それはご理解いただきたい」


 ソファについたまま、十分が経過した。ミン刑事からの知らせはない。警官も訪ねてこない。残念ながら、賽の目はかんばしくないようだ。事態は深刻であるらしい。


 リミットに至った以上、先手を打たなければならない。このアパートが敵に包囲されてしまうようなことがあれば、目も当てられないからだ。


「先に申し上げた通り、貴女は命を狙われている。そうである以上、病院までご同行させていただききます。貴女のことを、私はお守りしなければならない」

「貴方がそこまでしてくださるのはどうしてですか?」

「ミン刑事に借りがあるからですよ。他に理由なんてない。ところでメイヤ君」

「わかってます。事務所に戻ってろって言うんでしょう?」

「そういうことだ」

「お荷物になってしまうのは心外ですからね。マオさんの言うことを聞こうと思います」

「今日はえらく聞き分けがいいじゃないか」

「そんな日もあるってことです」

「ちゃんと戻っているんだよ?」

「承知でーす」

「では奥さん、出ましょうか」

「すみません。ご迷惑をおかけしてしまって、すみません」

「かまいませんよ。貴女の身に何か起きたというのであれば、それこそ私はミン刑事に合わす顔がありませんから」


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