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超Q探偵  作者: XI
87/204

20-6

 事務所に戻ったところで、ちょうど電話が鳴った。私が受話器を取った。相手はミン刑事だった。


「三件目だよ」

「だろうと思いました」

「何?」

「さっき、犯人らしき男と出くわしたんですよ」

「わかった。会って話そう」

「どちらに伺えばよろしいですか?」

「現場に来い。アパートの住所を言う。メモれ」

「メモは必要ありませんよ」

「ああ、そうか。そうだったな」



 私とメイヤ君は三人目の被害者のアパートを訪れた。三階の一室だ。リビングの窓にはやはり血の手形がついている。ベランダへと続くガラス戸がやぶられた形跡はない。玄関から押し入っただろうということだ。施錠されていなかったとは考えにくい。そうであることから、被害者はあとをつけられたのではないか。そして帰宅し、ドアを開けたところで襲われた。


 私はリビングのテーブルの前に横たわっている女性の死体を観察しながら言う。


「こちらの被害者女性に同居人は?」

「いねーよ。一人暮らしだ」

「それにしても、綺麗な切り口だ。相当、ナイフの使い方に慣れているようですね」


 ミン刑事は「ああ。そして例によって穏やかな死に顔だ」と言うと、「メイヤ」と彼女に声をかけた。


「はいです」

「おまえも姿形を見たんだろう? どうして被疑者だとわかったんだ?」

「右手からぽたぽたと血をしたたらせていたのですよ」

「馬鹿な」

「でも、本当のことなのです」

「被疑者の特徴は?」

「髪も肌も真っ白な男性でした。瞳だけが異彩を放つような紅茶色で」

「そいつに対してどんな印象を抱いた?」

「印象を抱いたっていうか、警察に掴まるようなドジは踏まないだろうなって感じました」

「失礼なヤツだな、おまえは。だがまあ、そういうことなのかもしれないな」

「ミン刑事はわたしがタフになったとおっしゃいましたけど、やっぱりそう強くはあれないようです。事実、目の前のご遺体を見てヘコんでいるのです……」

「おまえはそうあってしかるべきだよ、メイヤ」

「はい……」

「なあ、マオ」

「なんでしょう?」

「おまえさんが取り逃がしたツケは、きっと高くつくぜ」

「かも、しれませんね」

「簡単に認めるんだな」

「危ない気がしたんですよ。だからこそ、一歩前に踏み込めなかった。ぱっと見た瞬間はキツネにしか見えなかった。だけどあれは、きっと狼の眷属だ。そして」

「そして?」

「いや。少々、言葉ををかわしたくなるような人物だったなと思いまして」

「殺人鬼に何を問いたいんだ?」

「さあ。なんでしょうかね」

「相変わらず、良くわからんヤツだよ、おまえは」

「自覚しています。亡くなった女性はあわれだとは思いますが」

「そもそもどうして若い女ばかりを狙うと思う?」

「『彼』からすれば、別に女性ではなくても良かったのでは?」

「というと?」

「弱者を狙った犯行ではない、ということです」

「それもまた、良くわからん理屈だな」

「らしき人物に出くわすようなことがあれば、迷わず撃たれたほうがいい」

「忠告か?」

「いえ。警告です」


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