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超Q探偵  作者: XI
79/204

19-6

 四方は真っ白な壁。

 見上げれば真っ青な空。


 かつて私が愛した女性、シャオメイが、純白のワンピースを着て、すぐそこに立っている。こちらに背を向け、立っている。白い肌。華奢な肩。細い首、しなやかな肢体。彼女の姿は私にとってアートだった。


 これが夢であることはすぐに理解した。

 なぜなら彼女は間違いなく亡くなってしまったのだから。


「マオ君」

「なんでしょう?」

「探偵業は楽しい?」

「まあまあです。あまり意義のある職業とは言えませんが」

「そんなことないよ。マオ君はいつも誰かを救ってきたじゃない」

「正直、救う理由なんてないんですけれどね。救う必要も」

「貴方は底抜けに優しいの。そのことを忘れて欲しくない」

「私は私であるだけです」

「それでいいと思うよ?」

「天国での暮らしは快適ですか?」

「快適だけど、恋の予感はないかな」

「貴方はもう、自由なんですよ?」

「だけど、マオ君以外は愛したくない」

「そう言っていただけると、やはり死にたくなります」

「今、あえて死ぬ必要はないじゃない」

「まあ、そうなのかもしれませんが」

「生きるといいよ、もう少し。死ぬのは簡単。生きるのは大変。たとえそうだとしても」

「シャオメイ……」

「今、貴方のことを愛しているがいる。違う?」

「それが何か?」

「彼女のために生きてほしい。じゃなきゃ私は貴方のことを嫌いになるよ?」

「手厳しい」

「とにかく、もうちょっと生きてみようよ。きっと楽しいことがあるはずだから」

「そうでしょうか?」

「そうだよ。そうに決まってるじゃない」

「まったく、貴女にはかなわない」

「生きているうちに、きっといいことはあるの。私が貴方に出会えたように」

「ならば、愛していると言ってください」

「だから、それを言っちゃうと死にたくなるんでしょ?」

「まあ、そうですが」

「マオ君、もうちょっと生きてみなさい。これは命令です」

「……わかりました」

「声が小さい」

「わかりましたよ、シャオメイ」

「よろしい」シャオメイはこちらを振り向いて、微笑んだ。「じゃあ私、もう行くね?」


 彼女の背に、ばさっと大きな翼が生えた。羽ばたき、天へと昇ってゆく。一度振り返り、彼女は右手で「バイバイ」と手を振って見せた。私は彼女の姿が見なくなるまで、ずっとずっと、真っ青な空を見上げていた。


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