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超Q探偵  作者: XI
76/204

19-3

 そしてそれは突然起きた。


 屋台で昼食を済ませた帰り道でのことだ。あたりにパァンという乾いた音が響き渡った。

 咄嗟にであろう、メイヤ君が「ひゃっ」と声を漏らして、私の左腕にしがみついてきた。


「マオさん、今の……」

「間違いなく銃声だ」

「ひょっとして、例の薬物中毒のかたでしょうか」

「君がドラッグの件について敏感になっているのはわかるけれど、それは勘繰りすぎだろう。この街において銃声なんて珍しくないからね」

「すぐそこの『フートン』のほうから聞こえましたよね?」

「そうだね」

「どうしましょうか」

「どうするって、何がだい?」

「ちょっと調べに行ってみませんか?」

「そんなことをする必要性がないよ」

「でも、大通りに出てきて乱射するようなことになれば、被害者が出るかもしれないじゃないですか」

「ふむ。まあ、それは一理ある」

「でしたら」

「わかった。確認してこよう。だけど、君はここにいなさい」

「安全第一で行動してくださいね?」

「わかっているよ」


 私は走って右折し『フートン』に入った。建物の壁に身を潜め、男が逃げ込んだ路地を慎重に窺う。向こうは行き止まり、デッドエンド。網目状のフェンスが張られている。男はぎゃあぎゃあ喚きながら、あたりかまわず銃を乱発する。弾が切れたところで私は路地へと飛び出し、威嚇するつもりで男のそばをすり抜けるよう一発撃った。男はビクッと身を跳ねさせ、こちらを向いた。


「『蛾』が、『黄金の蛾』が見えるんだよぉぉっ!」男は大きな叫び声を上げた。「だ、誰か、誰でもいい、助けてくれよぉぉぉっ!」


 場所といい、男の言い分といい、先の一件と同じシチュエーションだ。

 とてもではないが、話し合いでいさめられる場面とは思えない。

 

 やがて、男の喚き声が止まった。銃を落とし、しゃがみ込み、頭を抱えて震え出す。私は男の背後に回り込み、右手で左腕を捻り上げた。そのままうつぶせに倒し、左手で後頭部を押さえつけた。

 

 駆け寄ってくる人影。メイヤ君だった。


「その場でじっとしていなさいと言ったつもりだけれどね」

「やっぱり気になってしょうがないので、追いかけてきちゃいました」

「良くない行動だ」

「ゆるしてやってください」

「今回だけは大目に見よう。とりあえず、警察を呼んでくれるかな。この男を引き取ってもらわなくちゃならない」

「アイアイサーです」


 まもなくして訪れた二人の警官に両脇を抱えられるようにして、男は連行された。そのさいちゅうにまた暴れ出した。「『蛾』だ、『蛾』をなんとかしてくれぇっ!」と叫んでいた。


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