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超Q探偵  作者: XI
75/204

19-2

 ミン刑事が我が事務所を訪ねてきた。何用かと訊くと「メイヤの顔を見にきたんだよ」とのこと。こちらが勧めるまでもなく、彼は一人掛けのソファにどっかりと腰を下ろした。メイヤ君がいそいそとコーヒーを振る舞う。「悪いな」と謝辞を述べてから、彼はカップに口をつけたのだった。


 メイヤ君が二人掛けのソファについている私の隣に座った。


「さて、メイヤ、そっちの探偵サンでもかまわないが、何か話はないのか?」

「いきなり訪ねてきておいて話題を提供しろと?」

「悪いかよ」

「いささか無作法であるように感じられます」

「はーい」と、メイヤ君が右手を上げた。「ミン刑事は『黄金の蛾』と聞いて、何かピンときたりはしませんか?」

「メイヤ君、そんなことを尋ねてどうするんだい」

「まあまあ、マオさん。いいじゃないですか。他にめぼしいネタもありませんし」

「『黄金の蛾』か。知らなくもないぜ?」

「おぉ、さすがです、ミン刑事。ご存知でしたか」早速食いついたメイヤ君である。「やっぱりドラッグか何かなのですか?」

「ああ。『ヤる』前に打つと性的な快感が著しく増すそうだ。だが打ちすぎると『蛾』が見えるようになるらしい。副作用ってヤツだよ」

「やっぱり、そういうことなのですね」

「その件について、メイヤは興味があるのか?」

「まったくないってわけではないです。だけど、調査するにあたってはリスクが伴うことは重々承知しています」

「賢明な見解だ。ドラッグの出所を洗うとなると、ヤクザの領域に足を踏み入れることになるからな。いたずらにやっこさんらを刺激する必要はないだろうさ」

「でも、警察は捜査をするんですよね?」

「ああ。しないわけにはいくまいよ」

「それは本当でしょうか」私は口を挟んだ。「ミン刑事、貴方は以前からたびたび口にしている。ヤクザの商売を咎めるようなことは極力避けたい、と。もっと言うと」

「ドラッグの流通には警察が一枚噛んでいるんじゃないか。要はそう疑っているってことだな?」

「ええ」

「仮に警察とヤクザがドラッグの売買に関して協力関係にあった場合、おまえはそこに首を突っ込みたいのか?」

「いいえ。あえて危険に身を投じるつもりはありませんよ」

「警察とヤクザは敵に回さないほうがいいってのは、この街の教訓みたいなもんだ」

「ミン刑事もヤクザと懇意なのですか?」メイヤ君が素朴な疑問を口にした。「そうは思いたくないのですけれど」

「どうだかな」とミン刑事は、はぐらかした。「ただ、俺と仲良くしといて、損をするようなことはないだろうさ」

「私はミン刑事を信じたいです」

「うれしいことを言ってくれるじゃねーか」

「ミン刑事はマオさんの仕事仲間っていうか、パートナーなのですよね?」

「ああ。そのつもりだ」

「だったら、裏切りなんて嫌なのです」

「裏切るなんて誰が言ったよ」

「わたし、本当にミン刑事のこと、信じてますからね?」

「わかったよ」ミン刑事は肩をすくめて見せた。「メイヤ、おまえとしゃべってると、どうしてもおまえにペースを持っていかれちまう。ま、それはそれで、気分は悪くはないんだが。なあ、マオ」

「なんでしょう」

「ドラッグの件は無視しろ。忠告だ」

「ですから、はなから関わるつもりはありませんよ」

「それでいい」


 ミン刑事はソファから腰を上げ、事務所から出ていった。


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