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超Q探偵  作者: XI
70/204

17-3

「それで?」と先を促しながら、メイヤ君はコーヒーをすすり、細い喉を小さくこくりと鳴らした。「結局のところ、その天使さんはどうなったんですか?」


 私はメイヤ君と同様にカップを傾け、それから「自殺した」と答えた。


「えっ」

「彼は死んでしまったんだよ。自らの頸動脈を小さなナイフで傷つけたんだ」

「そうなのですか……」

「うん」

「でも、話を総合すると、それってどうしようもないことだったのではありませんか?」

「ああ。どうしようもないことだった。いかんともしがたい事案だったよ」

「マオさんが二日前の安価な新聞にばかり目を通されているのも、そのあたりに理由があるんですか?」

「何が言いたいのかな?」

「何かの折には金銭が役に立つケースもある。そう考えて、日々、お金を大事にされているのかな、って」

「ケチくさいのは自覚しているよ。天使は無理でも、ニンゲンなら買えるかもしれないしね」

「でしたら、わたしも節約しないと」

「そうしてもらえると助かる。でも、極端に頑張る必要はない」

「そうなのですか?」

「うん。ニンゲンなら買えるかもしれないとは言ったけれど、冷たい言い方をするとね、私がクライアントに対してそこまでしてやる必要性を感じていないのも事実なんだ」

「確かにそれって冷たく聞こえます」

「割り切っていかないとね」

「天使さんが死ぬのはやっぱり運命だったと?」

「私はそう考えるようにしている」

「じゃあ、わたしが天使さんと同じ立場になったとしたら、その時、マオさんは助けてはくださらないってことですか?」

「君のことはなんとしても助けるし、守るよ」

「どうしてですか?」

「どうしてだろうね。でも、君のことはそばに置いておきたいと思うんだ」

「それって『愛情』なのではありませんか?」

「そうだね。『愛情』なのかもしれない」

「そうお答えいただけると、ちょっとほっとします」

「私は何をしているんだろう、私は何がしたいんだろう、また私は何をしてきたんだろう。時々だけれど、ふいにね、そんな思いに駆られることがあるんだ」

「いつもひょうひょうとしているマオさんにも悩みはあるってことですね」

「ポーカーフェイスは、やはりモットーだよ。しかし実際、ひょうひょうとなんてしているかな」

「していますよ」

「ちなみにだ」

「ちなみに?」

「その天使はその後、どうなったと思う?」

「亡くなったというだけじゃないんですか?」

「話したことがあるかな? この街には『剥製屋』という裏の仕事があるんだけれど」

「『剥製屋』さん、ですか」

「うん。その天使はね、死後、その『剥製屋』にホルマリン漬けにされて、コレクターに売られたんだ。最初から最後まで、彼は『商品』だったんだよ」

「そんな、ヒドい……」

「世の中には悲しいことがたくさんある。その中でも楽しいことを見つけていくのが人生なんだと思う」

「それって、ともすればキツい言葉であるように聞こえます」

「かもしれない。だけれどね、とことんまで思考を巡らせて、さらにそれを突き詰めた上でリアリストじゃなといけない。この街で生きていくには、それって重要なファクターだと思うんだよ」


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