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超Q探偵  作者: XI
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17.『ある少年の話』 17-1

 事務所があるほのぐらい『フートン』に入る直前で足を止め、夕焼け空を眺めた。気づけばただなんとなく、眺めていた。


「マオさん、どうしたのですか?」隣からメイヤ君が尋ねてきた。「いきなりセンチな顔になっちゃってますよ?」

「たまには夕焼けもいいものだと思ってね」

「あー、またそんなことを言いつつ、かつての恋人さんのことを思い出しちゃったりしているのでしょう? わたしという美少女がそばにいるというのにっ」

「そういうわけじゃないんだ」

「だったらどういうわけなのですか?」


 メイヤ君のほうに目をやると、彼女は茶色いボルサリーノのふちをつまんで私を見上げていた。


「やっぱりセンチな顔になってますよぅ」

「ポーカーフェイスがモットーなんだけれど」

「何かあるなら聞かせてください」

「救えなかった男のコがいてね」

「救えなかった男のコ?」

「うん」

「どういうことですか?」

「まずは帰宅しよう」



 事務所に到着した。

 ソファにつき、待っていると、メイヤ君がコーヒーを出してくれた。

 そして、彼女が向かいのソファに座ったところで、私は口を開いた。


「急に思い出したんだ」

「だから、何をですか?」

「だから、救ってやれなかった男のコのことを、だよ」

「それってどういう話なのですか?」

「彼は十五にして、男娼だったんだ」

「男娼って、その……」

「ああ。男性の男に娼婦の娼で男娼だ。慰み者の少年、あるいは青年を指す言葉だよ」

「『そういう趣味』のヒトもいるってことですか?」

「この街においてはそういうやからは珍しくない」

「まさか、マオさんも買われたり……?」

「私にその趣味は一切ないよ」

「続きを聞かせてください」

「実はあまり話したくはないんだけれどね」

「でも、伺いたいです。マオさん、わたし達って、もうそういう間柄じゃないのですか? 少なくとも、わたしはそう思っていますよ? っていうか、なんでも話してもらえないと、助手としては悲しいのです」

「そうかい」

「そうですよ」

「それじゃあ話してあげようか。親に売られたあわれな少年のことを」私は窓のほうを見やった。「彼はね、天使という名前だったんだ。アンヘルという名前だった」


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