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超Q探偵  作者: XI
66/204

16-3

 翌日の昼過ぎ、警察署を訪ね、窓口でミン刑事を呼び出してもらった。彼はいつも通り、寝ぐせのついた頭を掻きながら、木製の螺旋階段をおりてきた。


「よぅ」ミン刑事が右手を小さく上げて見せた。「さて、それじゃあ『答え』を聞かせてもらおうか」

「ロウ氏はすべて白状してらっしゃるのですね?」

「無論、そうだ」

「では、この場でお話ししてしまいましょう」


 傷害、窃盗等をはじめとする細かな事件の処理をしているせいで、警察署の一階はヒトがいっぱいで雑然としている。そんなごったがえしになっている中にあって、私は『ことの真相』と思われることを話すことにした。


「まず被害者の女性の名は?」

「シュンレイだ」

「シュンレイ氏は死にたがっていた。だが、どうしても自分一人では死にきれなかった」

「ああ、それで?」

「シュンレイ氏は自分の首に縄を巻きつけた上で、それをロウ氏に手渡した。ロウ氏は縄を受けとり、その縄を玄関ドアの下部にある『郵便受け』に通した上で外に出た。それから、シュンレイ氏は玄関の鍵を閉めた。そうすることで、部屋は完全に密室となる」

「そうなるな」

「そして、ロウ氏は『郵便受け』越しに縄を強く引っ張ったんですよ。シュンレイ氏を窒息死させるために」

「どうしてシュンレイはそんなことを企てて、ロウに殺してもらおうと考えたんだ?」

「シュンレイ氏は恋人にフラれでもしたんでしょう。だから投げやりになり、死のうとした」

「ロウがその計画を請け負ったのはどうしてだ?」

「ロウ氏がシュンレイ氏に想いを寄せていたからだと考えます。片想いだったということです」

「違いない。だから、シュンレイは自分を殺してくれる相手にロウを選んだんだ」

「ロウ氏は説得を試みたことでしょうね」

「ああ。だが、シュンレイは聞く耳を持たなかった」

「殺すことこそが『愛』だと考えたのでしょう」

「そうだよ。ロウからすれば、シュンレイを殺すことこそが『愛』だった」

「わざわざ密室を演出したわけですから、シュンレイ氏がロウ氏を犯人にしようと考えていなかったのは明らかです。実際、殺害ののち、『郵便受け』から縄を回収しさえすれば、誰が犯人なのかわからないわけですから」

「そういうこった。シュンレイが玄関を施錠した上で『郵便受け』越しにロウが縄を引っ張る。それだけで、密室殺人の完成だ。そして、玄関の戸に背を預けていたシュンレイは、誰かが部屋を訪れた際に上半身だけを仰向けに廊下に投げ出す格好になる。そういう寸法だよ」

「だが、ロウ氏は自首した」

「いいヤツだってことなんだろ」


 ミン刑事が懐から取り出した長財布から、いくらか紙幣を寄越してきた。


「合格だ、探偵サンよ。これからも仲良くやっていこうぜ?」

「そうさせていただけると幸いです」


 私はミン刑事から受け取った紙幣をコートの内ポケットにおさめた。


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