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翌日の夜。
メイヤ君と共に娼館を訪れた。メイヤ君は赤いリボンが付いた黒い紙袋を抱えている。くだんの娼婦は、どうやら『人気者』というわけではないらしい。『空いている』とのことで、すぐに部屋に通してもらえた。
肉感的と言えばまだ聞こえはいいのかもしれないが、その娼婦は多少ならず横幅があった。この外見では確かに需要が見込めないだろうと思わざるを得なかった。
「おやまあ、ハンサムなお客さんだわね」ベッドに腰掛けている太った娼婦は、赤いショーツしか身に付けていない。「そっちのかわいらしいコはなんだい? 『ヤっているところ』をそのコに見せたい。アンタはそういう趣味の持ち主なのかい?」
「そういうわけではありませんよ。リャンヤン氏の使いで来ました」
「リャンヤン? ああ、あの坊やかい。それで、なんの用だい?」
「プレゼントを渡して欲しいという話でしてね」
「プレゼント?」
メイヤ君がリボンの付いた紙袋を「はい、どーぞぉ」と娼婦に手渡した。娼婦はメイヤ君をじっと見つめてから、リボンを取り払って紙袋を乱暴にちぎって開けた。取り出されたのは、紫色のショーツである。
「リャンヤン坊やが、これを私に?」と娼婦は問うてきた。
「ええ」とだけ、私は答えた。
「どうして本人が渡しに来ないんだい?」
「面と向かって下着をプレゼントするというのは恥ずかしかったようです」
「ふぅん」紫色の下着の端をつまんで、娼婦はそれをつまらなさそうな顔で眺めた。「あたしのことを散々抱いておいて、ショーツを贈るのは恥ずかしいってのかい」
「そうみたいですよ」
「良くわからないね」
「リャンヤン氏が貴女のことを想っていることだけは事実です」
「ふぅん」
娼婦の女性は立ち上がると、なんの恥じらいも見せることなく、おもむろにショーツをはきかえて見せた。
「似合うかい?」
「似合います」と笑顔で言ったのはメイヤ君だ。「とっても良く似合ってますよ。素敵です」
「Tバックなんてはいたのは生まれて初めてだ」太った娼婦は「あっはっは」と豪快に笑うと、こちらに向き直った。「で、あんた達は何者なんだい?」
「マオといいます。探偵をやっています。こちらの彼女は助手のメイヤ君です」
「じゃあ、探偵さん。リャンヤン坊やに伝えてもらえないかい?」
「なんとお伝えすればいいですか?」
「あたしには旦那も子供もいるってね」
「プレゼントのお礼は?」
「それもきちんと言ってやっておくれ。ありがとう、ってね」




